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【名作迷作ザックザク㉒】~"初4Kリマスター放送"その5~ 常に礼節を重んじ、優しく時に厳しく、茶目っ気も見せる隊長の姿は"理想の父親"への憧憬か... 大戦末期の敗色濃厚状況下で戦果を挙げ続けた孤高の部隊の日々の物語『加藤隼戦闘隊』(1944)

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。( ´ー`)⊃⊂(´ー` )
 中学生の頃、毎年この時期は通常のドリル系の夏休み課題はとっくに終わらせてたものの、大の苦手の美術の写生課題だけ残ってて脂汗流しながらイヤイヤ描いてたことを思い出す、O次郎です。

小学生の時は交通安全ポスターか貯金箱か選択できる。
高校生の時は授業自体が音楽 or 書道 or 美術の選択式。
よって美術が強制される中学が個人的には最悪でした・・・。

 この5月から『シン・ウルトラマン』の公開を記念してということで、CSの日本映画専門チャンネルで円谷特撮映画が4か月連続リマスター放送されてます。
 5月は『モスラ(1961)』、6月は『フランケンシュタイン対地底怪獣(1965)』、7月は『マタンゴ(1963)』と来て、今月はハワイ・マレー沖海戦(1942)でした。
 それに加えてお盆に際しての戦争特番の一作品として放映されたのが今回の『加藤隼戦闘隊(1944)』です。
※これまでの放送の4作品の記事は以下の通りです。よかったらついでに読んでちょ。

 そのスケール感に於いては前々年の『ハワイ・マレー沖海戦』に劣るかもしれませんが、空中撮影用の実機を用いた迫力のドッグファイトシーンや英空軍飛行場への絨毯爆撃の秀逸な合成シーン等、一極集中の特撮技術は明らかに向上しており、国策映画ながらドラマ面では隊内の日々を主軸に加藤隊長の人格者ぶりとその豪放磊落な人となりのエピソードをちりばめることで、本土各地も戦火に見舞われる厳しい時勢の中でも娯楽性を存立させています。
 戦前の、それも戦争翼賛映画ということで忌避感を感じてしまう方もいらっしゃるでしょうが、そうした側面よりも一映画としての出来と感想を述べてみたいと思いますので読んでいっていただければ之幸いでございます。
 それでは・・・・・・・・・・"あのひと 絵~描いてる~~~ぅぅ!!"

中学三年生の時、"ひょっとしたら写生は生涯でこれが最後になるかもしれんから、
今年はヘタなりにも気合入れて描くか…"と思って
8月下旬の昼間は近所の山に絵筆と椅子を持参しての連日の悪戦苦闘。
そんなとある日、人気が無い場所なのに若いお母さんと小さな娘さんが横切っての
娘さんの「あのひと 絵~描いてる~~~ぅぅ!!」の一言……。
めちゃんこ恥ずかしくなって直後に対象の風景をカメラに撮ってその後は自宅で描きましたとさ。
いっそのこと、絵の巧い兄姉や友人に報酬提示して代筆してもらえばよかったような気もするけど
当時はそういう機転も効かずで・・・。(。・ω・)



Ⅰ. 作品概要と見どころ諸々

 実在の大日本帝国陸軍の中佐加藤建夫率いる第64戦隊、通称加藤隼戦闘隊を主軸にしたセミ・ドキュメンタリー映画。
 "家族の中で戦争体験者は祖父母の世代"という、戦争を体験した方と直接相対した時間が乏しい身としては、どうしても”上官”というのは"鉄拳制裁上等の厳然たる階級制度の申し子"のようなイメージが先行してしまい、実際文献や作品でもそうした描写が殆どですが、本作に於ける加藤中佐は驚くほどの対照的な人格者ぶりで、

〇常に自身が最前線に立ち、一番困難な役回りを引き受ける
〇"全体のための個人"を旨とし、部下のスタンドプレーを戒める一方で自身も自重する
〇他所の部隊には自隊の戦果の喧伝よりも、至らない点を謙虚に詫びる
〇嗜好品や娯楽は部下に優先的に提供する
〇趣味のカメラで部下の休息の一時を隠し撮りし、また隠し撮りされてじゃれ合う

という具合で、コミュニケーションと目標達成の達人ぶりがまるで現代に於いても通用する敏腕ビジネスマンのようです。

美丈夫ではなく、まさに"快男児"という言葉がピッタリ。
敗色が濃くなっていく大戦末期に於いて、若年層の儚い青春と勇猛を吹聴するのではなく、
熟年の包み込むような父性と朗らかさを称える本作のトーンが体制側に容認されて
それが多くに支持された
、ということは特筆すべきことかと思います。

 個人的に特に印象的だったのは要所に食事シーンが挟まれており、秘蔵のコーヒーメーカーで豆を挽いて部下にコーヒーを振舞い、手を廻して手に入れた果物を部下に自ら切り分けて食べさせるシーンです。
 本来の位階などさて置き、自分から先には決して食べず、部下に食べさせて「どうだ?美味いだろ?!」とほほ笑む様はまさに子を優先する父、あるいは年下の兄弟を気遣う兄のような慈愛に満ちています。終盤に部下からのタバコの差し入れに満面の笑みで喜ぶ件でもその場では喫せず、大切に頂戴しています。
 また、上述のようにカメラを使って部下とじゃれ合ったり、"敵性語を使いましたね?"と部下から指摘されて破顔したりと、こと休暇時間には努めて隊内の部下との対等な関係を企図しています。

 これらの描写から鑑みるに、これが過酷な現実に対する理想の軍隊環境に合致していたのでしょうか。
 即ち、劣悪な食糧事情に、常に上官が優先されてそれが余暇時間であろうと遍く徹底され、冗談も哄笑することすら憚られる……そうした理不尽が当たり前の状況下でのいわばガラパゴスのようなエリート部隊での民主的な隊内風紀は、前々年の『ハワイ・マレー沖海戦』で描かれた海軍航空部隊の青春群像劇とはまた違った当時の人々の理想の具現化だったのかもしれません。

 
 一方で主力戦闘機"隼"での航空戦描写ですが、航空母艦からの機の発着やミニチュアによる敵母艦への爆撃シーンがメインだった『ハワイ・マレー沖海戦』と比べ、本作では実際の飛行シーンの迫力がまずもっての白眉です。

敵方とのドッグファイトのみならず、隊機揃っての編隊飛行の様子
要所で収められており、画としての貴重さは勿論として、
個のスタンドプレーを嫌う加藤隊長のスタイルがそのまま演出にも反映されているのが見事です。

 また、本作ではWikiにも記載のある通り、実際に戦中に鹵獲された敵方の連合軍機が登場し、それが不時着して敵兵が投降するシーンまで再現されているのが驚愕です。現実の加藤中佐も敵方の機体の研究に意欲的で、作中では友軍であったドイツ軍の視察時に独軍戦闘機を操縦したエピソードが披露されていましたが、ここでもその隊長の意向が演出に生かされていたように思います。
 そして特撮的には重爆隊によるラングーンのイギリス空軍飛行場と港湾の空爆描写ですが、世評の通り、爆撃で爆発倒壊する建物と逃げ惑う将兵との合成が本当に見事で、戦後の特撮作品の群衆避難場面の合成と比べてもむしろこちらのほうがよりリアルに見える面も有るぐらいの迫力です。残念ながら画像検索で出て来なかったので興味のある方は是非ソフト等でご確認を・・・。

 本作のクライマックスはアキャブ飛行場への英軍機来襲に対する応戦戦闘での加藤中佐の戦死ですが、驚くべきはその隊長の戦死後も隊が存続してエリート部隊として敗戦まで連合軍機と互角の戦果を挙げ続けた、という史実です。
 元巨人軍桑田真澄さんの名言に「殴られて覚えた奴は自分が教える時にも殴る」というものがありましたが、それとは真逆の包容力のある指導で各人の技量と人間性を錬成し、隊員が連綿と重ねた戦果を軍上層部が認めたことで特攻要員の対象とならず技量が受け継がれ、隊内指揮も保たれた、ということでしょうか。
 鴻上尚史さんの作品で漫画化もされている『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』もそうでしたが、たとえ組織全体としては硬直化していても、直属の上官が理性的であれば優れたユニットとして機能し得る、という典型例なのかもしれません。



Ⅱ. まとめに

 というわけで今回は第二次大戦末期の国策映画『加藤隼戦闘隊』について書きました。
 上記のような感想を抱いた一方でつとに感じるのは、この部隊はあくまでほんの一握りのエリートだったであろうということです。
 当時本作を鑑賞した人々の航空戦闘とそれを担う栄えある部隊への憧れと、現実の入隊後の懸命の訓練を否定するような特攻を一方的に下命された数多の兵とそのご家族の状況との乖離を鑑みると胸が詰まります。

本作は爆撃だけでなく機関砲での砲撃戦も迫力の一翼を担う。

 
 この5月からの特撮映画特集4Kリマスター企画はひとまずこれにて終了のようですが、恐らくまたいろいろ最新公開作にかこつけてリマスター企画は出てくるでしょうから都度レビューしてみる所存です。
 
 今回はこのへんにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




実際の加藤隼戦闘隊の従来のマークにして、映画冒頭に出てくるロゴ。
・・・・・・特撮ファンとしてはやはり後年のあのヒーローのあの組織のマークを思い出すか。





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O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)
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