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つい、紅天女を探してしまいますよね

2月中がっつり取り組んでいたお仕事案件が終了したので、リフレッシュのため、お出かけしてきました。梅シーズンが始まった奈良・月ヶ瀬までドライブ。

梅の名所は近場にもたくさんありますが、月ヶ瀬は一般の公園とはまるで格が違いました。まず、観光名所として最古参。そして集落ひとつが梅に埋もれるほどのスケール感。観光地としてきちんと植えられた場所は限られていて、一般の民家の庭や畑に無造作と言って良いくらいわんさか植わっているのです。

梅の谷間に埋もれるようにして民家があります

言い伝えによると、後醍醐天皇が落ち延びたときに付き従っていた女官が月ヶ瀬で行き倒れになり、村人が助けたところ、お礼に梅の実を使った「烏梅(うばい・紅花染の媒染剤)」の作り方を村に教え、それ以来貴重な換金作物として月ヶ瀬で梅がさかんに栽培されるようになったとか。そう、元々は農作物として栽培され、それが後に観光資源としても活用されるようになったわけです。

月ヶ瀬は急峻な谷あいの土地で、古い家々が梅とともに斜面に張り付くように建てられています。崖を縫う細い道沿いには観光客用の茶屋が立ち並び、見晴らしの良い場所に席を誂え、食事や甘味、お土産を出してます。その雰囲気はなんというか、昭和どころか江戸時代から変わってなくない? というくらい味わい深い佇まいを見せてまして、これも恐らく他の観光地では見られない風景だと思うのです。

そんな茶屋のひとつで、ふわっふわの焼き草餅を頂いたあと、さらにひと足延ばして本日のハイライトへ。梅林の対岸にもまた、崖に張り付くような集落があるのですが、そこに磨崖仏があるという情報をダンナ氏が仕入れていまして、見に行くことになりました。

石垣の上に作られた古くて由緒ありそうな家々を眺めつつ、車一台通るのがやっと、という細い道をくねくね上り下りしてゆくと、ありました。巨大な岩とその表面に掘られた小さな仏様の列。長いこと風雨にさらされて、目を凝らさないとわからないくらいにすり減っていましたが、お地蔵さんのような素朴な仏像がずらりと並んでいるのが見て取れました。

写真ではほとんど見えませんが、
石の表面に仏像のレリーフが彫られています

近くに説明看板があり、それによると、昔(1500年代中ごろ)に、谷で一番高い城郭の一部が崩れて甚大な被害があり、村人たちがその後の安泰と供養を兼ねて残った大岩に仏像を刻んだのでないかと推測されるものの、詳細は謎のままだということです。あちこちに点在する岩の側面に、多いものは100体近く彫られていて、合計約430体というので、これはもうただ事ではない力が働いたのだなあと、そしてダンナ氏がぽつりと漏らした「この辺はまだ土葬なんだな」の一言にゾクゾクしました。

険しい土地ゆえに農業には不向きで、だからこそ梅の栽培で成り立っていた集落。そして城郭の崩落事故も土地の急峻さを物語っています。梅と磨崖仏、妙な取り合わせに見えてどちらも土地の形状と絡んでいるのですね。

おや? 梅見の話がどうしてこんなディープな話題に?

月ヶ瀬はお茶の産地としても有名ですが、
実は京都の宇治茶の産地と隣り合っていること、
この旅で始めて気が付きました。

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Naomi Iwata (O-bake)
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