#002 特許法 (更新中)
「特許法については,『総則』(目的,定義,補正関係),『特許及び特許出願』(特許の要件,発明の新規性の喪失の例外,特許を受ける権利,職務発明,特許出願,共同出願,先願),『審査』(拒絶の査定,拒絶理由の通知),『出願公開』(出願公開の効果等),『特許権』(特許権の効力,特許権の効力が及ばない範囲,特許発明の技術的範囲,他人の特許発明等との関係,共有に係る特許権,専用実施権,通常実施権,先使用による通常実施権,登録の効果),『権利侵害』,『審判』(拒絶査定不服審判,特許無効審判,訂正審判,共同審判,訂正の請求関係,職権による審理,審決の効力,訴訟との関係)及び『訴訟』を中心として出題する」(『平成18年から実施される司法試験(選択科目)における具体的な出題のイメージ(サンプル問題)』)
【§2(定義)】
「発明」:「〔①〕自然法則を利用した〔②〕技術的思想の〔③〕創作のうち〔④〕高度のもの」(§2 I)
①自然法則 [R2司]
「当業者がそれを反復実施することにより同一結果を得られること,すなわち,反復可能性のあることが必要」
(最判H12.2.29.民集54-2-709、桜桃の育種増殖法事件【53】)
②技術的思想
「その技術分野における通常の知識・経験をもつ者であれば何人でもこれを〔a〕反覆実施してその目的とする技術効果をあげることができる程度にまで〔b〕具体化され,〔c〕客観化されたものでなければならない」
(最判S44.1.28.判時555-31、原子力エネルギー発生装置事件【51】)
「物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等…、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出…をする行為」(§2 III ①)
「方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為」(§2 III ②)
「物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(§2 III ③)
cf. 「方法の発明」と差止請求
「方法の発明と物を生産する方法の発明とは、明文上判然と区別され、与えられる特許権の効力も明確に異なっているのであるから、方法の発明と物を生産する方法の発明とを同視することはできないし、方法の発明に関する特許権に物を生産する方法の発明に関する特許権と同様の効力を認めることもできない。そして、当該発明がいずれの発明に該当するかは、まず、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて判定すべきものである(同法七〇条一項参照)。
これを本件について見るに、本件明細書の特許請求の範囲第1項には、カリクレイン生成阻害能の測定法が記載されているのであるから、本件発明が物を生産する方法の発明ではなく、方法の発明であることは明らかである。本件方法が上告人医薬品の製造工程に組み込まれているとしても、本件発明を物を生産する方法の発明ということはできないし、本件特許権に物を生産する方法の発明と同様の効力を認める根拠も見いだし難い。
本件方法は本件発明の技術的範囲に属するものであるから、上告人が上告人医薬品の製造工程において本件方法を使用することは、本件特許権を侵害する行為に当たる。したがって、被上告人は、上告人に対し、特許法一〇〇条一項により、本件方法の使用の差止めを請求することができる。しかし、本件発明は物を生産する方法の発明ではないから、上告人が、上告人医薬品の製造工程において、本件方法を使用して品質規格の検定のための確認試験をしているとしても、その製造及びその後の販売を、本件特許権を侵害する行為に当たるということはできない」
(最判H11.7.16.民集53-6-957、生活活性物質測定法事件【1, 2】)
【§29(特許の要件)】
「〔❶〕産業上利用することができる〔❷〕発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる」(§29 I 柱書)
cf. 医療行為 [R2司]
「『産業』に何が含まれるかについては、何らの定義も与えていない。また、医療行為一般を不特許事由とする具体的な規定も設けていない」
(東京高判H14.4.11.判時1828-99、「外科手術を再生可能に光学的に表示するための方法及び装置」事件【57】)
❸ 〈新規性〉
(a)「公然知られた」(公知、§29 I ①)
(b)「公然実施」(公用、§29 I ②)
(c)「頒布された刊行物に記載された」(公刊物記載、§29 I ③)
a 公知
b 公用 [H27, R4司] ★
「発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいうものである。本件のような物の発明の場合には,〔α〕商品が不特定多数の者に販売され,かつ,〔β-1〕当業者がその商品を外部から観察しただけで発明の内容を知り得る場合はもちろん,〔β-2〕外部からはわからなくても,当業者がその商品を通常の方法で分解,分析することによって知ることができる場合も公然実施となる」
(知財高判H28.1.14.判時2310-134、棒状ライト事件【59】)
cf. §30(発明の新規性の喪失の例外)
「特許を受ける権利を有する者の意に反して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から一年以内にその者がした特許出願に係る発明についての同項及び同条第二項の規定の適用については、同条第一項各号のいずれかに該当するに至らなかつたものとみなす」(§30 I)
❹ 〈進歩性〉
「特許出願前に〔a〕その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて〔b〕容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」(§29 II)
「本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということから直ちに,当業者が本件各発明の効果の程度を予測することができたということはできず,また,本件各発明の効果が化合物の医薬用途に係るものであることをも考慮すると,本件化合物と同等の効果を有する化合物ではあるが構造を異にする本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみをもって,本件各発明の効果の程度が,本件各発明の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであることを否定することもできないというべきである」
(最判R1.8.27.裁時1730-1、「アレルギー性眼疾患を処置するための点眼剤」)
❺ 〈先願〉
「同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる」(§39 I)
cf. §29の2〈拡大先願〉
「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面…に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」
同一 [R4司]
❻ 〈公序良俗〉
「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない」(§32)
cf. 公序良俗:×
「右器具が本来之を純然たる娯楽の用に供することを目的としたものであつて、前記のような賭博行為その他の不正行為の用に供することを目的としたものでないことは前記の発明の明細書の記載内容上明らかであり、且右発明の内容に照らし、右装置を右のような純然たる娯楽用に供し、右の不正行為の用に供さないことも可能と認められる…」
(東京高判S31.12.15.行集7-12-3133、ビンゴゲーム装置事件【73】)
❼ 〈出願書類〉 [H28司]
「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること」((a)実施可能要件、§36 IV ①)
「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」((b)サポート要件、§36 VI ①)
「特許を受けようとする発明が明確であること」((c)明確性要件、§36 VI ②)
b サポート要件
「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、〔a〕特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、〔b〕また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、〔c〕明細書のサポート要件の存在は、特許出願人…又は特許権者…が証明責任を負うと解するのが相当である」
(知財高判H17.11.11.判時1911-48、パラメータ特許事件【70】)
c 明確性要件 (PBPクレーム)
「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが〔α〕不可能であるか,又はおよそ〔β〕実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。」
(最判H27.6.5.民集69-4-700、プラバスタチンナトリウム事件【4 ①】)
cf. [R4司]
「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると判示した趣旨は,特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるが,そのような特許請求の範囲の記載は,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが不明であり,権利範囲についての予測可能性を奪う結果となることから,これを無制約に許すのではなく,前記事情が存するときに限って認めるとした点にある。そうすると,特許請求の範囲に物の製造方法が記載されている場合であっても,上記一般的な場合と異なり,当該製造方法が当該物のどのような構造又は特性を表しているのかが,特許請求の範囲,明細書,図面の記載や技術常識から一義的に明らかな場合には,第三者の利益が不当に害されることはないから,明確性要件違反には当たらない」
(知財高判H29.12.21.裁判所Web、「旨み成分と栄養成分を保持した無洗米」)
【§33(特許を受ける権利)】
「特許を受ける権利は、移転することができる」(§33 I)
cf. 〈対抗要件〉
「特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない」(§34 I)
cf. 〈効力発生要件〉
「特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない」(§34 IV)
【§35(職務発明)】
①「従業者等」がした発明であること、②「その性質上当該使用者等の業務範囲に属」すること、③「その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」(§35 I)
③職務 [H21, R1司] ★
cf. [R1司]
「被告会社の小川英治社長が、青色発光ダイオード開発のためにはセレン化亜鉛が成功の見込みが高く、窒化ガリウムでは成功の見込みが少ないとの外部からの情報に従って、原告に対して、青色発光ダイオードの研究を中止して高電子移動度トランジスタの研究をするようにとの業務命令を発したとの記載がある。しかしながら、原告は、原告の被告会社における勤務時間中に、被告会社の施設内において、被告会社の設備を用い、また、被告会社従業員である補助者の労力等をも用いて、本件発明を発明したのであるから、原告主張のような事情が存在するとしても、本件発明を職務発明に該当するものと認定する妨げとなるものではない。」
(東京地判H14.9.19.判タ1109-94、青色発光ダイオード事件中間判決)
cf. 「相当の利益」(§35 IV)請求権の消滅時効
「勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは、勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は、相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして、その支払を求めることができないというべきである。そうすると、勤務規則等に、使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には、その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。」
→短期消滅時効(民§166 I ①)
(最判H15.4.22.民集57-4-22、オリンパス事件【98】)
【§36(特許出願)】
「願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない」(§36 II)
【§38(共同出願)】
「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、特許出願をすることができない」
cf. §33 III
「特許を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することができない」
【§49(拒絶の査定)】
「その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。」(§49 ②)
【§50(拒絶理由の通知)】
「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない」
cf. 補正
「特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる」(§17の2 I 柱書)
「第五十条…の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき」(§17の2 I ①)
「第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内においてしなければならない」(§17の2 III)
最後の拒絶理由通知に対する「特許請求の範囲についてする補正」(§17の2 V 柱書)は、「請求項の削除」(同項 ①)・「特許請求の範囲の減縮」(同項 ②)・「誤記の訂正」(同項 ③)・「明りようでない記載の釈明」(同項 ④)に「限」られる
【§64(出願公開)】
「特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。」
【§65(出願公開の効果等)】
「特許出願人は、〔①〕出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、〔②〕出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする」(§65 I)
「前項の規定による請求権は、特許権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない」(§65 II)
「第百一条、第百四条から第百四条の三まで、第百五条から第百五条の二の十二まで、第百五条の四から第百五条の七まで及び第百六十八条第三項から第六項まで並びに民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条及び第七百二十四条(不法行為)の規定は、第一項の規定による請求権を行使する場合に準用する。この場合において、当該請求権を有する者が特許権の設定の登録前に当該特許出願に係る発明の実施の事実及びその実施をした者を知つたときは、同条第一号中「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」とあるのは、「特許権の設定の登録の日」と読み替えるものとする」(§65 VI)
cf. 補正後の再度の警告 [R1司]
「…補正が、願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において補正前の登録請求の範囲を減縮するものであって、第三者の実施している物品が補正の前後を通じて考案の技術的範囲に属するときは、右補正の後に再度の警告等により第三者が補正後の登録請求の範囲の内容を知ることを要しないと解するのが相当である。第三者に対して突然の補償金請求という不意打ちを与えることを防止するために右警告ないし悪意を要件とした同条の立法趣旨に照らせば、…改めて警告ないし悪意を要求しなくても、第三者に対して不意打ちを与えることにはならないからである」
(最判S63.7.19.民集42-6-489、自動車設置具事件(アースベルト事件)【76】)
cf. 補償金支払請求権の時効消滅 [H27司]
「特許権の設定の登録の日」「から三年間」(§65 VI・民§724 ①)
【§66(特許権の設定の登録)】
「特許権は、設定の登録により発生する」(§66 I)
【§67(存続期間)】
「特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する」(§67 I)
cf. 消滅事由
「特許権者は、専用実施権者又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる」(§97 I)
「特許権者が第一項の規定により特許料を追納することができる期間内に、第百八条第二項本文に規定する期間内に納付すべきであつた特許料及び第二項の規定により納付すべき割増特許料を納付しないときは、その特許権は、同条第二項本文に規定する期間の経過の時に遡つて消滅したものとみなす」(§112 IV)
【§68(特許権の効力)】
「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」
cf. (国内)消尽:○ [H23, H24, H26司]★
「…〔a〕都度特許権者の許諾を要するとすると,市場における特許製品の円滑な流通が妨げられ,かえって特許権者自身の利益を害し,ひいては特許法1条所定の特許法の目的にも反することになる一方,〔b〕特許権者は,特許発明の公開の代償を確保する機会が既に保障されているものということができ,特許権者等から譲渡された特許製品について,特許権者がその流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである…
しかしながら,特許権の消尽により特許権の行使が制限される対象となるのは,飽くまで特許権者等が我が国において譲渡した特許製品そのものに限られるものであるから,特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許されるというべきである。そして,上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては,〔α〕当該特許製品の属性,〔β〕特許発明の内容,〔γ〕加工及び部材の交換の態様のほか,〔δ〕取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であり,当該特許製品の属性としては,製品の機能,構造及び材質,用途,耐用期間,使用態様が,加工及び部材の交換の態様としては,加工等がされた際の当該特許製品の状態,加工の内容及び程度,交換された部材の耐用期間,当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである」
(最判H19.11.8.民集61-8-2989、キャノンインクタンク事件上告審【22】)
cf. 国際消尽:× [H23司]★
「我が国において有する特許権と譲渡地の所在する国において有する対応特許権とは別個の権利であることに照らせば、特許権者が対応特許権に係る製品につき我が国において特許権に基づく権利を行使したとしても、これをもって直ちに二重の利得を得たものということはできないからである。
現代社会において国際経済取引が極めて広範囲、かつ、高度に進展しつつある状況に照らせば、我が国の取引者が、国外で販売された製品を我が国に輸入して市場における流通に置く場合においても、輸入を含めた商品の流通の自由は最大限尊重することが要請されているものというべきである。…
右のような点を勘案すると、我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合においては、特許権者は、〔①〕譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、〔②〕譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間で右の旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について我が国において特許権を行使することは許されないものと解するのが相当である。…(4) 特許製品の譲受人の自由な流通への信頼を保護すべきことは、特許製品が最初に譲渡された地において特許権者が対応特許権を有するかどうかにより異なるものではない」
(最判H9.7.1.民集51-6-2299、ベーベーエス事件【26】)
【§69(特許権の効力が及ばない範囲)】
「特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない」(§69 I)
cf. 治験
「本件治験が同項にいう「試験又は研究のためにする特許発明の実施」に当たるかどうかは,〔a〕特許法1条の目的,〔b〕同法69条1項の上記立法趣旨,〔c〕医薬品医療機器等法上の目的及び規律,〔d〕本件治験の目的・内容,〔e〕治験に係る医薬品等の性質,〔f〕特許権の存続期間の延長制度との整合性なども考慮しつつ,保護すべき特許権者の利益と一般公共の利益との調整を図るという観点から決することが相当である」
(東京地判R2.7.22.裁判所Web (知財高判R3.2.9.裁判所Web、第一審))
【§70(特許発明の技術的範囲)】
「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない」(§70 I)
「前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする」(§70 II)
cf. プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム)
「特許が物の発明についてされている場合には,その特許権の効力は,当該物と構造,特性等が同一である物であれば,その製造方法にかかわらず及ぶこととなる。
したがって,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。…」〔物同一説〕
(最判H27.6.5.民集69-4-700、パラバスタチンナトリウム事件【4 ①】)
cf. 均等侵害 ★★
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1) 右部分が特許発明の本質的部分ではなく〔非本質的部分〕、(2) 右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって〔置換可能性〕、(3) 右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下『当業者』という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり〔置換容易性〕、(4) 対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく〔対象方法の容易推考性〕、かつ、(5) 対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき〔特段の事情〕は、右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である」
(最判H10.2.24.民集52-1-113、ボールスプライン事件【8】)
① 非本質的部分
「特許発明における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきである」
(知財高判H28.3.25.判時2306-87、マキサカルシトール事件大合議【9】)
⑤ 特段の事情
「出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合であっても,それだけでは,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえないというべきである。…
出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである」
(最判H29.3.24.民集71-3-359、マキサカルシトール事件上告審【10】)
【§72(他人の特許発明等との関係)】
「特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない」
cf. §92 I
「特許権者又は専用実施権者は、その特許発明が第七十二条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権又は実用新案権若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる」
【§73(共有に係る特許権)】
「特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない」(§73 I)
「特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる」(§73 II)
「特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない」(§73 III)
【§74(特許権の移転の特例)】
「特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる」(§74 I)
「前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。当該特許権に係る発明についての第六十五条第一項又は第百八十四条の十第一項の規定による請求権についても、同様とする」(§74 II)
「共有に係る特許権について第一項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、前条第一項の規定は、適用しない」(§74 III)
【§77(専用実施権)】
「専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する」(§77 II)
cf. §100 I
排他性
cf. (専用実施権を設定した)特許権者による差止請求の可否
「この場合に特許権者は差止請求権をも失うかが問題となる。〔①〕特許法100条1項の文言上、専用実施権を設定した特許権者による差止請求権の行使が制限されると解すべき根拠はない。また、〔②〕実質的にみても、専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上げに基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には、特許権者には、実施料収入の確保という観点から、特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があることは明らかである上、〔③〕一般に、特許権の侵害を放置していると、専用実施権が何らかの理由により消滅し、特許権者が自ら特許発明を実施しようとする際に不利益を被る可能性があること等を考えると、特許権者にも差止請求権の行使を認める必要があると解される。これらのことを考えると、特許権者は、専用実施権を設定したときであっても、差止請求権を失わないものと解すべきである」
(最判H17.6.17.民集59-5-1074、生体高分子ーリガンド分子の安定複合体構造の探索方法事件【103】)
【§78(通常実施権)】
「通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を有する。」(§78 II)
cf. 当然対抗制度 (§99)
百選100
cf. 〈完全独占的通常実施権…に基づく差止・損害賠償〉:×/ ○ [H29司]
「通常実施権の許諾者(権利者)は、…実施権者に対し右実施による差止損害賠償請求権を行使しないという不作為義務を負うに止まり、それ以上に許諾者は当然には実施権者に対し、他の無承諾実施権者の行為を排除し通常実施権者の損害を避止する義務までも負うものではない。…そして、完全独占的通常実施権といえども本来通常実施権であり、これに権利者が自己実施及び第三者に対し実施許諾をしない旨の不作為義務を負うという特約が付随するにすぎず、そのほかに右通常実施権の性質が変わるものではない。
…また条文の上からも意匠法三七条には差止請求権を行使できる者として意匠権者又は専用実施権者についてのみ規程していること(しかも、本件において原告は専用実施権の登録をなすことにより容易に差止請求権を有することができること)を考慮すると、通常実施権者である限りは、それが前記完全独占的通常実施権者であつてもこれに差止請求権を認めることは困難であり、許されないものといわざるをえない」
(大阪地判S59.12.20.無体裁集16-3-803、ヘアーブラシ意匠事件【102】)
「条文上…完全独占的通常実施権者に損害賠償請求権を否定する趣旨とは認められず…結局完全独占的通常実施権者の損害賠償請求権については民法の一般原則にゆだねているものと解される。
通常実施権の性質は前記判示のとおりであるが、完全独占的通常実施権においては、権利者は実施権者に対し、実施権者以外の第三者に実施権を許諾しない義務を負うばかりか、権利者自身も実施しない義務を負つており、その結果実施権者は権利の実施品の製造販売にかかる市場及び利益を独占できる地位、期待をえているのであり、そのためにそれに見合う実施料を権利者に支払つているのであるから、無権限の第三者が当該意匠を実施することは実施権者の右地位を害し、その期待利益を奪うものであり、これによつて損害が生じた場合には、完全独占的通常実施権者は固有の権利として(債権者代位によらず)直接侵害者に対して損害賠償請求をなし得るものと解するのが相当である」
(大阪地判S59.12.20.無体裁集16-3-803、ヘアーブラシ意匠事件【102】)
【§79(先使用による通常実施権)】
「〔①-a〕特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、〔①-b〕又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、〔②〕特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、〔③〕その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する」
②事業の準備
「同法七九条にいう発明の実施である『事業の準備』とは、特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が、その発明につき、いまだ事業の実施の段階には至らないものの、即時実施の意図を有しており、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である」
(最判S61.10.3.民集40-6-1068、ウォーキングビーム式加熱炉事件【27】)
③実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内
「…先使用権者は、『その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において』特許権につき通常実施権を有するものとされるが、ここにいう『実施又は準備をしている発明の範囲』とは、特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく、その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり、したがつて、先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である」
(最判S61.10.3.民集40-6-1068、ウォーキングビーム式加熱炉事件【27】)
百選28
cf.
「先使用権制度の趣旨が、主として特許権者と先使用権者との公平を図ることにあることに照らせば、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式以外に変更することを一切認めないのは、先使用権者にとつて酷であつて、相当ではなく、先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲において先使用権を認めることが、同条の文理にもそうからである。そして、その実施形式に具現された発明が特許発明の一部にしか相当しないときは、先使用権の効力は当該特許発明の当該一部にしか及ばないのはもちろんであるが、右発明の範囲が特許発明の範囲と一致するときは、先使用権の効力は当該特許発明の全範囲に及ぶものというべきである」
(最判S61.10.3.民集40-6-1068、ウォーキングビーム式加熱炉事件【27】)
【§100(差止請求権)】
「特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる」(§100 I)
「特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第百二条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる」(§100 II)
【§101(侵害とみなす行為)】
「特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(§101 ①)
「特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物…であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(§101 ②)
百選12
「特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為」(§101 ③)
「特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(§102 ④)
百選11
「特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(§102 ⑤)
「特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為」(§101 ⑥)
百選16
【§102(損害の額の推定等)】
「特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。」(§102 I 柱書)
「特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額に、自己の特許権又は専用実施権を侵害した者が譲渡した物の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた数量(同号において「実施相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額」(§102 I ①)
百選36
単位数量当たりの利益の額
「『単位数量当たりの利益の額』は,特許権者等の製品の売上高から特許権者等において上記製品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した額(限界利益の額)であり,その主張立証責任は,特許権者等の実施の能力を含め特許権者側にあるものと解すべきである」
(知財高判R2.2.28.裁判所Web、「美容器」)
実施の能力
「『実施の能力』は,潜在的な能力で足り,生産委託等の方法により,侵害品の販売数量に対応する数量の製品を供給することが可能な場合も実施の能力があるものと解すべきであり,その主張立証責任は特許権者側にある」
(知財高判R2.2.28.裁判所Web、「美容器」)
特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情
「『販売することができないとする事情』は,侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい,例えば,①特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当するというべき」
(知財高判R2.2.28.裁判所Web、「美容器」)
cf. 寄与度
「本件発明2が被告製品の販売に寄与した割合を考慮して損害額を減額すべきであるとの趣旨であるとしても,これを認める規定はなく,また,これを認める根拠はないから,そのような寄与度の考慮による減額を認めることはできない」
(知財高判R2.2.28.裁判所Web、「美容器」)
「特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。」(§102 II)
cf.
「特許権者が、〔①〕侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、〔②〕市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品(以下「競合品」という場合がある。)を輸出又は販売していた場合には、当該侵害行為により特許権者の競合品の売上げが減少したものと評価できる」
(知財高判R4.10.20.裁判所Web、「椅子式施療装置」)
cf.
「①特許発明が被告製品1の部分のみに実施されていること、②市場における競合品の存在、③市場の非同一性、④被控訴人の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、⑤被告製品1の性能(機能、デザイン等)は、本件推定の覆滅事由に該当する旨主張するところ、①及び③は、覆滅事由に該当するものと認められるが、②、④及び⑤は、覆滅事由に該当するものと認めることはできない」
(知財高判R4.10.20.裁判所Web、「椅子式施療装置」)
「特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」(§102 III)
cf.
「特許法102条3項は、特許権者が、侵害者に対し、 自ら特許発明を実施しているか否か又はその実施の能力にかかわりなく、特許発明の実施料相当額を自己が受けた損害の額の最低限度としてその賠償を請求できることを規定したもの」
(知財高判R4.10.20.裁判所Web、「椅子式施療装置」)
【§103(過失の推定)】
【§104(生産方法の推定)】 [R4司] ☆
「物を生産する方法の発明について特許がされている場合において、その物が特許出願前に日本国内において公然知られた物でないときは、その物と同一の物は、その方法により生産したものと推定する。」
【§104の2(具体的態様の明示義務)】 [R4司]☆
「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、特許権者又は専用実施権者が侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様を否認するときは、相手方〔Y〕は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならない。ただし、相手方〔Y〕において明らかにすることができない相当の理由があるときは、この限りでない。」
【§104の3(特許権者等の権利行使の制限)】
「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない」(§104の3 I)
「前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる」(§104の3 II)
百選20
「第百二十三条第二項の規定は、当該特許に係る発明について特許無効審判を請求することができる者以外の者が第一項の規定による攻撃又は防御の方法を提出することを妨げない」(§104の3 III)
#メモ
新規性要件 (§123 I ②・§29 I)
進歩性要件 (§123 I ②・§29 II)
実施可能要件 (§123 I ④・§36 IV ①)
サポート要件/ 明確性要件 (§123 I ④・§36 VI ①/ ②)
【§104の4(主張の制限)】
再審
【§105(書類の提出等)】
「裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、〔①〕当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、〔②〕その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない」(§105 I)
cf. 査証制度 (§105の2〜§105の2の10)
cf. 第三者意見募集制度 (§105の2の11)
【§105の4(秘密保持命令)】
【§106(信用回復の措置)】
「〔①〕故意又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したこと〔②〕により〔③〕特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、特許権者又は専用実施権者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。」
【§113(特許異議の申立て)】
「何人も、特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、特許庁長官に、特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の請求項に係る特許については、請求項ごとに特許異議の申立てをすることができる。」(§113 I)
「その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたこと。」(§113 I ②)
「その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたこと。」(§113 I ④)
【§121(拒絶査定不服審判)】
「拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。」(§121 I)
cf. §132 II
「共有に係る特許権について特許権者に対し審判を請求するときは、共有者の全員を被請求人として請求しなければならない。」
cf. §178〈審決取消訴訟〉
「取消決定又は審決に対する訴え及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。」(§178 I)
cf.
「特許無効の抗告審判の審決に対する取消の訴においてその判断の違法が争われる場合には、専ら当該審判手続において現実に争われ、かつ、審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされるべきものであり、それ以外の無効原因については、右訴訟においてこれを審決の違法事由として主張し、裁判所の判断を求めることは許さないとするのが法の趣旨であると解すべきである」
(最大判S51.3.10.民集30-2-79、メリヤス編機事件【82】)
cf.
「…取消訴訟の提起は、商標権の消滅を防ぐ保存行為に当たるから、商標権の共有者の1人が単独でもすることができるものと解される。そして、商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起することができるとしても、訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。」
(最判H14.2.22.民集56-2-348、ETNIES商標事件【83】)
cf.
「実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権利を目的とする実用新案登録出願について共同して拒絶査定不服の審判を請求しこれにつき請求が成り立たない旨の審決を受けたときに訴を提起して右審決の取消を求める……訴において審決を取り消すか否かは右権利を共有する者全員につき合一にのみ確定すべきものであって、その訴は、共有者が全員で提起することを要する必要的共同訴訟である』と明確に判示しているところである。」
→固有必要的共同訴訟
(最判H7.3.7.民集49-3-944、磁気治療器事件【84】)
cf. §181 I
「裁判所は、第百七十八条第一項の訴えの提起があつた場合において、当該請求を理由があると認めるときは、当該審決又は決定を取り消さなければならない」
→取消判決の拘束力 (行訴§33 I)
【§123(特許無効審判)】
「特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。」(§123 I 柱書)
「その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされた場合にあつては、第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。」(§123 I ②)
「その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。」(§123 I ⑥)
「特許無効審判は、利害関係人(前項第二号(特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由として特許無効審判を請求する場合にあつては、特許を受ける権利を有する者)に限り請求することができる。」(§123 II)
「特許無効審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。」(§123 III)
cf.
「特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り,そのような問題を提起されるおそれのある者は,当該特許を無効にすることについて私的な利害関係を有し,特許無効審判請求を行う利益(したがって,特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益)を有することは明らかであるから,訴えの利益が消滅したというためには,客観的に見て,原告に対し特許権侵害を問題にされる可能性が全くなくなったと認められることが必要であり,〔①〕特許権の存続期間が満了し,かつ,〔②〕特許権の存続期間中にされた行為について,原告に対し,損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり,刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要であると解すべきである。」
(知財高判H30.4.13.判タ1460-125、ピリミジン誘導体事件【81】)
cf. §125
「特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす。ただし、特許が第百二十三条第一項第七号に該当する場合において、その特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、その特許が同号に該当するに至つた時から存在しなかつたものとみなす。」
cf. §167
「特許無効審判又は延長登録無効審判の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない。」
【§126(訂正審判)】
「訂正審判」の「請求」(§126 I 柱書)は、「特許請求の範囲の減縮」(§126 I ①)・「誤記又は誤訳の訂正」(§126 I ②)・「明瞭でない記載の釈明」(§126 I ③)・「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」(§126 I ④)に「限」られる。
「訂正審判は、特許異議の申立て又は特許無効審判が特許庁に係属した時からその決定又は審決(請求項ごとに申立て又は請求がされた場合にあつては、その全ての決定又は審決)が確定するまでの間は、請求することができない。」(§126 II)
「二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに第一項の規定による請求をすることができる。この場合において、当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項ごとに当該請求をしなければならない。」(§126 III)
【民§1(基本原則)】
【民§1 III(基本原則)】
「権利の濫用は、これを許さない。」
cf. FRAND宣言がされた場合の差止請求権の行使 [R2司]
「相手方において,抗告人が本件FRAND宣言をしたことに加えて,相手方がFRAND条件によるライセンスを受ける意思を有する者であることの主張立証に成功した場合には,権利の濫用(民法1条3項)に当たり許されないと解される。」
(知財高判H26.5.16.判時2224-146①、アップル対サムスン(差止請求)事件【30 ①】)