雨の中のGroovingなJam、大阪野音にて。
ある晴れた秋口の日の午後、風に、あるいは音楽に揺られる。手には酒を持ち、目の前ではバンドが音を奏で、それを聞きながら多くの人が悦にいっている。ぼくが思い描く音楽フェスはこんな感じだ。間違っても、ロッキン・オン・ジャパンのようなモッシュだのダイブだのと野蛮なフェスになんて行ったりしない。これはぼく個人の極私的な思いである。
昨年の9月25日〜26日にかけ、このようなナイスなフェスに行けるはずだった。大阪で開催されるはずだったGreen Room Beachだ。これはコロナによる緊急事態宣言か蔓延防止措置か何かのせいで中止になり、時期よし、演者よし、アクセスやや悪しのフェスは断念させられた。
それから約半年後、すなわち2022年3月26日、大阪城の野外音楽堂にて、Ryohu、kiki vivi lily、TENDRE、Kan Sano、SIRUPというおせちみたいに豪華絢爛なメンツでフェスが開催されることを知った。その名もGrooving Jam。さぞかしGroovingであることが、フェスの名前と演者たちからひしひしと伝わってくる。春先の野外音楽堂。時期よし、場所よし、演者よし。
当日、雨が降った。あいにくだ。春らしい晴れの日が続く3月後半の中で、狙いを定めたように、ピンポイントで雨が降った。天気というのは、時として意地が悪いのだ。
誘い合わせた恋人と一緒に大阪へ向かう。昼飯を食い、たらふく酒を飲み、へべれけになり損なったような酔い具合で会場に入る。アルコールの販売はなかったので、オレンジジュースを500円で買った。良い天気の中、酒を片手に音楽を聴く。冒頭で述べたぼくの夢はついに実現しなかった。
会場に入ると、オープニングアクトの誰か知らない人が歌っていた。誰か知らないので、特に興味を持って観たり聴いたりはせず、自分の指定された席に向かったので、結局誰かよくわからなかった。そしてステージにRyohuが出てくる。歌い始める頃には僕たちも少し落ち着いてステージをゆっくり見れるようになる。ぼくはRyohu自体には興味がないが、RyohuのコーラスをするAAAMYYYとキーボードやベースを弾くTENDREが大好きなので、この2人ばかりを見ていた。とはいえ、ぼくは会場の右の方(三島由紀夫の思想くらい右)に席を与えられていたため、ステージ上に置かれていた観葉植物が邪魔でTENDREがよく見えなかった…。
kiki viviについても少し知っているくらいで熱狂的なファンではないので、曲によって座ってみたり、立って見たり。ぼくにとってはここまでがオープニングアクトである。
TENDREが出てきた。さっきまでいたのだけれど、また出てきた。まぁセットリストはフェス向けという感じで、どの曲も聞くのは3回目であった(TENDREライブには2回ほど行ったことがある)。しかし、演者の並びから予め予測していた通り、SIRUPが登場し、「ENDLESS」を歌って帰った。
Kan Sanoが出てきた。今日のドラムはBREIMENのKanno Soではない。「My Girl」について、「これは本来、夜の歌なんだけど、夜空のしたで歌うことがないから…」とKan Sano。ぼくは朝の歌だと思っていた。アップテンポだし、MVは朝から始まるし、ぼくは毎朝、目覚めてから起き上がるまでの間にこのMVを聴いていた時期があった。それゆえに、夜空の下で聴く生の「My Girl」は新鮮であったのだ。
SIRUPが出てきた。いつでもどこでもあの水色のネオン管はついてくるのだ。新曲から始まり、こちらのステージにもTENDREが出てきて「play」を歌ったり、最後はDo WellでSIRUPらしく終わったり、実は初めましてSIRUPのぼくにふさわしいステージであったと思う。
雨に濡れ、レインコートの中のポケットにスマホをうまく収められず落としたり、出店のスイーツやらハラミ丼やらを食べたり、右寄りの席からは見えにくいので、人が来そうにない後方真ん中に移動したり、またスマホを落としたりしていると、気がつけばもう20時を過ぎていた。
いろいろな好きなアーティストを少しずつ見られるフェスは良いけれど、やはり好きであればあるほど、ワンマンライブに行って、深くどっぷりと聞きたいものだ。