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愛してやまない、YeYe

 「うんざりですよ」のミュージックビデオがYouTubeに流れてきて、16mmのフィルムで写したような映像、心地よく柔らかい声、くすぐったいアコースティックギターのフィンガーピッキング。一瞬で聞き入った。このギターの音は、スリーフィンガー奏法といい、僕が得意とする奏法のひとつでもある。右手の親指・人差し指・中指を機会的に動かして複数の弦を操ることで音を重ねてゆく奏法だ。これを多用するアーティストでよく知られているのは長渕剛であり、「夏祭り」は長渕剛フィンガーピッキングの代名詞とも言われるほど、ファンは習得したがる。実際に長渕はライブで「ギター小僧はこの曲をこぞって練習します」と言っているし、僕も夏祭りでスリーフィンガー奏法を会得した。

 話をYeYeに戻す。なぜYeYeの話の途中に、単位円で日本のアーティストを分類すると対極に位置するような長渕剛の話をしなければならないのか。
 それで僕は「うんざりですよ」という曲から、YeYeの曲を聞き、インスタライブに頻繁にお邪魔して、約2年間、その音楽活動を見守ってきた。僕が敬愛するTENDREやLucky Tapesと同じレーベルに所属しているというのも、好きだなぁって思うポイントのひとつである。

 2年間、スマホの中でしかYeYeの音楽に触れることのできなかった僕だが、昨夏、8月25日、堀川会議室にてYeYeバンドのライブがあることを知る。が、それは緊急事態宣言によって延期になった。そして数ヶ月が経ち、昨年末の12月22日、その時はやってきた。
 僕は自動車学校の卒業式をパパッと終え、その足で堀川会議室へ向かった。少し早く着きすぎたので、近くの居酒屋で時間を潰して開場の時間に到着すると、メンバーが石油ストーブで暖をとっていた。僕はそこに入れてもらい、緊張のせいか、「演奏、楽しみにしています」くらいのことしか言えず、それでもYeYeバンドは楽しそうに談笑して、僕もなんだか楽しかった。たばこを吸おうと喫煙エリアに向かうも、ライターを忘れたことに気がつき、居合わせたYeYeバンドでドラムを叩くリッキーさんにいただいたライターは今もまだ大切にとってある。堀川会議室は演者との距離の近さがとても素敵だ。当日の日記には、ライブの様子をこんなふうに書いていた。
 「YeYe Bandのライブは最前列に席を取って、間近で音楽を堪能した。4人が縦に並んで、前のメンバーの方を両手で持って歩いてくる入場や、曲の合間に突如始まるカードを用いたゲーム、メンバーのいじり合い、クリスマスソングを盛り込んだセットリスト、曲の合間にちょっと背伸びをするYeYeさん、みんな仲良しで、可愛くて、やさしい空間に身をおいた1時間だった。」

 そしてそれから2ヶ月が経ち、再び堀川会議室にてYeYeと再会。対バン相手のKent Valleyの演奏が終わると、今回はバンドセットではなく弾き語りセット。山内弘太さんというギタリストを迎えた2人の、2本のエレキギターによる弾き語りセット。前回のように仲の良いバンドでわちゃわちゃしながらズンズンと演奏していくライブとは違い、しっとりと、ゆっくりと、穏やかに、それでも強い歌声でひとつひとつの歌詞が歌われる。曲が終わった後は小さな声で「ありがとうございます」。背伸びをしながら勢いよくギターを弾いて歌い上げるYeYeも素敵なのだけれど、丁寧なYeYeもこれはこれでいいなって思ったりする。


 大阪で活動するミュージシャンであると同時に、一児のママでもあるYeYe。音楽だけでなく、Instagramの投稿の日常的な文章、たまに始まる「顔の見えるラジオ」という配信、全てが愛おしい。

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