カネコフレシノ【後攻:カネコアヤノ】
キッドフレシノバンドの演奏が終わり、ステージの上手にはけていけば、あまたのスタッフがゾロゾロと舞台袖から出てきてはフレシノのセットを解体してゆき、それが落ち着いた頃にはカネコアヤノのバンドセットが出来上がる。あらかじめそれぞれが運ぶ楽器などを決めていたのだろう、なんとも手際の良いお仕事ぶりである。やはりプロの動きには無駄というものがなく、それぞれが目標物を抱えて目標点までなるべく最短距離を通るように動いていく。この動きをステージの真上から録画でもしてモニターで見ているのはさぞかし気分の良いことだろうと思う。
そのようにしてステージが出来上がれば、あとはもうカネコアヤノと他3人のバンドメンバーが出てくるだけでカネコアヤノに会うことができる。僕は昨年の6月に行われたカネコアヤノよすがツアーでバンドセットと弾き語りを観て以来の再会であり、およそ1年ぶりの再会ということになる。この1年でカネコアヤノには色々なことがあった。と思う。武道館のワンマンショーをやった。アルバムは出ていないが、「私たちへ」という曲を出した。そして何より、ドラムのボブさんがカネコアヤノバンドを脱退してしまった。このような変化がカネコアヤノにあったように、僕は2つの場所で働き始めてひとつのバイトをやめた。『逆光』という映画の宣伝も手伝ったし、そのおかげで多くの人と知り合い、そうして仲良くなった人たちとこのライブを見ている。まあこの記事はカネコアヤノについての記事なので、僕に起こった出来事については僕のnoteの他の記事を読んでいただくとして、そうしているうちにカネコアヤノが舞台袖から登場した。
カネコアヤノバンドはコンパクトだ。ドラム・ベース・ギター・ギターボーカルの4人からなるカネコアヤノバンドは、これでもかというくらいそれぞれの距離を近づける。Zeppの大きなステージの真ん中に4人が凝縮し、その場で最大限に体を動かしながら必死に演奏している様子が良い。特にベースのファンキーなお兄ちゃんはよく飛び跳ねているし、モヒカンだった頭がいつの間にかアフロになり、気がつけば坊主になっている。頭の毛が移動したのか、顎髭がものすごくボリューミーになっていた。ギターのロン毛・林さんは常に気持ちの良さそうな顔をしてギターを弾いているし、ドラムは椅子に座っているから歩き回ったりはできないけれど演奏のために体を動かしているし、カネコアヤノはカネコアヤノでよく動く。そして声がでかい。
カネコアヤノは1年前に会った時よりもなんだか貫禄があった。以前からよく動いて声はデカかったのだけれど、動きはなんだか歌舞伎役者のように大きく、感情が高まった時に見られる足踏みは勇ましく、ギターをかき鳴らす腕はなんだかしなやかだ。そしてドラムが変わったせいか、曲のテンポに安定が感じられるようになった。落ち着く部分は落ち着き、勢いで押し通す部分は勢いで押し通す。ボブさんがいた頃のみんなの可愛らしさが少し削ぎ落とされ、たくましく思えるようになったような気がする。サポートのドラムが変わったからと言ってカネコアヤノバンドがここまで変わるのかと不思議だが、デビュー前から何年も演奏を重ねてきたカネコアヤノバンドだからこそ、1人入れ替わるだけで雰囲気も変わるのである。これからカネコアヤノバンドはどのように変化してゆくのか、あるいはいつかカネコアヤノの全てが出し尽くされてしまって音楽をやめてしまうのか、どうなるかはわからないが、カネコアヤノが音楽をやり続けて僕が元気でいる限りはカネコアヤノにさらなる元気をもらう所存である。
ついでにいうと、フレシノと2人でのアンコール「cats&dogs」はよかった。
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