手袋

東京育ち23歳大学院生

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最近の記事

まちを歩く

信号待ち、つま先でリズムを取る。 ヘッドホンから漏れたバスドラムが空を波打たせている。 帰りを急ぐサラリーマンだけがそれに気づいているが、何を思うわけでもない。 ピンクのコートに身を包んだ背の高い女性は、小さなバッグを丁寧に提げている。 金持ちのおじさんを乗せたタクシーが前を横切って左折する。 信号は青に変わり、早歩きで渡る。 渡り切ったところでサラリーマンに抜かされ、何も急ぐことはないのだと歩調を緩める。 何の気なしに細い路地に入る。 トマトを煮込んだいい匂いがすること

    • 過去という程遠くもない過去の記憶#2 五歳頃,y君

      彼は蟻を踏みつぶしていない 今回もまた4,5歳の保育園の記憶だ.なるべく古い記憶から取り出してみようと思っている. 保育園の同級生であるy君は,周りからうっすら嫌われていた.なぜだかは憶えていないが,僕も彼のことを好いてはいなかった.周りが彼に暴力をふるったり,仲間外れにしたりはしていなかったと思う.ただ,一度彼にみんなでのしかかり肋骨を折ってしまったらしく,母親にその話をされたが全く憶えていなかった.じゃれあいの中でそうなったのだろうが,みんな多少の悪意はあったのだろう

      • 過去という程遠くもない過去の記憶#1 五歳頃,k君

        僕は,千葉生まれ東京育ち,2024年10月現在,23歳大学院1年生の男である. 音楽(丁度今は寺尾紗恵のしゅー・しゃいんを聞いている)と読書(川端康成の眠れる美女を読み終わったところ)が趣味で,普段は研究ばっかしている.研究は楽しい. さて,このnoteでは題の通り過去の記憶について書いていく.人間ふとしたタイミングで過去の記憶が蘇ることはよくあるだろう.ただそんな些細な記憶はすぐに忘れてしまう.そういう記憶を都度書き起こし,残しておきたいと,最近なんとなく考えていた.そし