生き物

ぼくたちは遊牧民のような生き方を選んだ。
自分が心地よく、楽しく暮らすためにはどうしたらいいのか、それを小さく実験し続けた結果、この都市でも田舎でもない街にたどり着いた。

大きななにかに影響は与えられなくても、小さな範囲で行動し続ければ、目の前の人の幸せくらい作れるのではないか。それが北海道に戻ってきて、より現場に近い所で活動し始めるときに考えたことだ。

すべてのことは目的を達成するための手段であり、社会の仕組みですら変えられるかもしれない対象だ。一億何千万の人口を支配するための仕組みは強固でも、たかだか一万人くらいの顔色うかがうための仕組みであれば変えられるのではないか。そう考えて行動に移してきた。

目の前の人が幸せに暮らせればそれでいいと考えて、仕事を選んできた。でも行動すればするほどに、人は想像以上に仕組みやお金に動かされる生き物だった。

自分がいくら物事を自分のモノサシで考えるように行動しても、他人のことは変えられなかった。元々、種が植わってる人に水を与えるくらいのことしかできなかった。

結局、仕組みを変えるしかない。過去は変えられないから、現在を生きてる人は諦めて、未来を生きる人に投資するしかないのだ。

自分はどんなルールの世界だって楽しもうとするし、嫌だったらドロップアウトできるから、別になんだっていい。でも、ひとりで生きるよりも誰かとなにかするほうが好きだから、目の前の人くらい心地よく生きられる場所をつくりたい。そのためには仕組みが必要なんだと気がついた。

なんでこんなにも面倒な世界なんだろうか。生物として生き残ろうとするために数を増やし、他を欺き、弱肉強食のルールに乗っ取って争うことを辞めないかぎり、このルールの下で過ごさなきゃならないのだろう。ああ、本当に人間ってめんどくさい生き物だ。

仕方がないことを受け入れて、人間として生きることを諦めず、虎視眈々と仕組みを変えるチャンスを狙っていく。大人として生きるために、次の世代へチャンスをたくさん渡せるような生き方がしたい。ぼくは黒子として生きていくのが楽しいのだ。