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すっぴん


わたしは化粧をする。

20歳の前くらいから、ちゃんと化粧をし始めた気がする。
18歳くらいから手は出していただろうか。あんまり覚えていない。

最初は、自分の隠したいところを隠すために化粧をしていた。
わたしの隠したいところは、主に鼻の毛穴だった。
最初の頃は、気にして鼻にだけ、肌の色の液体を塗っていたと思う。ファンデーションだったか、下地だったか、BBクリームだったか、CCクリームだったかは、わからない。
あのときそんなに気にして塗っていなかったら、今もう少し鼻が綺麗だったかな。まぁ気になっちゃったんだからしょうがない。
ニキビはよくできていたけれど、そこまで気にしなかった。

社会人になる頃には、お化粧も少し上達していたと思う。
隠したいところとか、嫌なところを無くするだけじゃなく、自分の魅力的なところを強調することもできるんだとわかって、楽しかった。
肌に陰影をつけるとか、キラキラをつけるとか、目を大きく見せるようにとか、まつげを長くするとか、眉毛をきれいな形にするとか、頬をかわいい色に染めるとか、唇の色とか、色々楽しんでやっていた。

社会人数年目、コロナ禍でニキビが大量発生した。
おそらくマスクのせい。それとちょうど引っ越しの時期で、住む土地が大きく変わったのも理由としてあると思う。
学生の頃からよくできていたニキビだけれど、比じゃないくらいの量だった。さすがに気にする量だった。

ニキビが落ち着くまで半年か1年くらいかかった。ようやく落ち着いたわたしの肌には真っ赤なニキビ跡が残った。頬全体が真っ赤な点々でいっぱいだった。

その頃のお化粧は、頬をかわいい色に染めることはできなかった。ピンクをのせても赤をのせてもオレンジをのせても、赤い点々が強調されるだけだった。

そのときの顔は、定期的に頬を自撮りして残していた。もちろん嫌だったけれど、治っていく様子を残したかったから。
皮膚科に行ったり、新しいスキンケアを試したり、ビタミン剤を飲んだり、最終手段の美容皮膚科にも手を出したりして、今はましになった。
まだ少し赤いけれど、これくらいならかわいいねと自分で思っている。


ここ数年、“外に出るときは化粧をする”という謎のルールがわたしの中にはあったと思う。別に、ルールです!!と決めたわけでもないけれど、暗黙の了解というか、なんとなくそうだよねと決まっていた。

最近、プールに通っている。プールは化粧して入れない。
わたしの謎のルールを適用させようとすると、外に出るときに化粧して、着いたら化粧を落としてプールに入って、また家に帰るために化粧をしなければならない。
さすがにそれをやるほどわたしは几帳面ではなかった。

すっぴんでプールに行って、すっぴんで家まで帰る。
最初は一応隠そうと思って、帽子をかぶった。

数ヶ月経った今、まったく気にならなくなった。
なんならプール以外もすっぴんで外に出るようになった。

何ものせていない肌って、なんて心地が良いんだろう。
誰も見ていないと思うようになったし、冬だから、頬赤くてもちょうどいいかと思っている。
少し短い眉毛も、まぁいいかと。
唇だけは薄く色をつけることもあるけれど。

わたしは自分のすっぴんが好きになってきたのかもしれない。
まつ毛パーマをしたくない理由は、すっぴんがすっぴんらしくなくなるからだ。
何も塗っていないお肌は、息が深くできている気がする。何も描かない目は、化粧しているときよりちょっと幼く見えて、こどものときみたい。

けれど化粧も好きだ。自分を魅力的に見せるために試行錯誤するのは楽しい。会う人、行く場所、その日の気分とかに合わせて、化粧をするのもとても楽しい。自分にしかわからない程度の変化でも良い。
その気分のひとつとして、“今日はすっぴん”も、あるのかもしれない。


今さら思うけれど、すっぴんっていい言葉ね。なんか、かわいい響き。

ちょっと赤い頬をさらけ出して、なんにも気にせずにすっぴんで近所を歩くわたしのこと、わたしはけっこう好きかもしれない。




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