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襟足と食洗機の音今朝の冬

ある休日の朝、寝ている夫を残し、ひとりふとんから出る。


カーテンを開けて、冬が近づく空を見た。
寒さにからだを縮こまらせながら、暖房をつけるのを我慢し、すぐさま靴下を履く。パジャマを脱がずそのまま上に、もこもこズボンともこもこ上着を着る。お恥ずかしい話だがこの姿のまま夜になることもよくある。


シンクにたまった食器を触り、食洗機をまわす。食洗機に入らないものたちは、手で洗う。

テレビを見たり本を読んだりしたのち、退屈になったわたしは、ふとんへ近づく。


泥のように眠る夫の顔に、自分の鼻を近づけてほっぺたのにおいを嗅ぐ。
寝ている夫は嫌がり、顔を背ける。

次は触れないかつ鼻息の当たらないギリギリの距離から、夫を観察する。

顔を背けられたので、襟足がよく見える。
短い髪の人の襟足は、どうしてこうも可愛いんだろうか。
恐竜のトゲトゲのように、きれいにギザギザとした形をしている。

触りたくなるが、触ると高確率で、不機嫌な反応をされる。いや、必ずと言っていい。
夫はとても優しい人だが、唯一機嫌が悪いのが眠たいときなのだ。

もしここで触ってしまうと、ふとんの中に潜り込まれ、見ることすらできなくなるのである。それは避けたい。

さらに、こちらはただただ愛おしい気持ちを抑えられずにしている行為だが、相手からしたらただただ迷惑行為なのである。重たく自分よがりな愛は、相手には迷惑なのだ。そのことをこの行為から学んだ。だがたまにしてしまうことがある。気をつけたい。


触りたい気持ちを抑えながら、襟足を見る。静かな部屋で、食洗機の音だけが響いていた。


襟足と食洗機の音今朝の冬
 





aoです。

以前も記事にしたのですが、完全に俳句にハマっています。

ハマったきっかけ、神野紗希さんの本に関しては以前も書きましたが、
その本を読み終わり、今度はくどうれいんさんの「わたしを空腹にしないほうがいい」という本を読み始めました。タイトルがわたしの心にズキュンで、近くに売っている本屋さんが見つけられなかったので、出版しているBOOKNERDさんからお取り寄せしました。
ひとつひとつのエッセイのタイトルが俳句になっています。エッセイ内容もとても好き…!!


ということでまた、わたしも俳句をタイトルに、今回のnoteを書いてみたというわけなのでした。けっこう楽しい。

ではまた!🐦️

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