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美大生に学ぶ、ブレストのときに、あえて解釈が広い言葉を使うやりかた

こんな記事を読みました。東工大のEDPというデザイン・シンキングのプログラムに参加した藝大の方が感じた「美大生と理系学生」の考え方の違いについてまとめられています。

takramの田川さんが、イノベーションを生むにはBTC人材が必要と言われています。(B:Business, T:Technology, C:Creative)

その意味で、東工大が藝大の学生を招いたり、東大の生産技術研究所がRCA(Royal College of Art) [※イギリスの藝大みたいなとこ]を招くのは、非常に意味のある取り組みですよね。

ただ、そういった異なる専門性や言語をもつ人たちが共創するには、対話の方法であったり、コミュニケーションのとり方についてもコストが生まれるし、工夫が必要になってくる。


ブレストのときに、あえて抽象的な言葉を用いている

さきほど紹介した東工大のEDPプログラムに参加した藝大の学生がmediumでこんなことを書いていました。

美大生、東工大生のチームにいて私や他の美大生が最初に感じたのは「言葉が通じない」ということでした。なぜ通じなかったのか振り返ってみると、共通言語が少ないということと、美大生が抽象的な言葉をよく使うことによるすれ違いがあるのではと思いました。
私の大学では、よく擬音語や抽象的な言葉で会話することが多いです。

だそうです。東工大の学生が「具体的な」言語で話すのに対して、美大生は「抽象的な」言葉を操るとのこと。その結果、東工大の学生からは「具体的にどういうこと?」という問いが返ってきたといいます。

では、なぜ学内だとうまくいっていたのかというと、アイデア出しの雑談の段階で出てくる言葉はあくまで「種」であって、最終イメージまで持てていなくても問題ないと思っているからです。

彼女たちがやっているのは、いわゆるエスキースの概念というか、まず下絵を書いてみて、書きながら降りてくるインスピレーションをもとに徐々に具体的にしていく、いわゆる「手を動かしながら考える」という思考なのだと思いました。


抽象的な誤解で、"偶発的な誤解"を大事にしている

ここで「あー美大生はすごいねー」「さすが一人ですごいものを生み出すアーティストさんだなー」と終わってしまうのはとてももったいなくて、実は彼女たちが実はチームでの共創を大事にしていることが、次の文章からもわかります。

一見すると、何も考えず不用意に発言しているよう感じるかもしれませんが、抽象的なそれぞれ想像するものが違う言葉を使うことで、一つの種からチームの人数分アイデアが生まれることがあるのです。
もし抽象的な言葉が出てきたら、とりあえず相槌をうってみたり、どんなイメージ?と一緒に広げてみたりすると、お互いにうっかり新しいアイデアが出てくるかもしれません。また、時間を決めて抽象的な言葉だけで話してみても面白いのではないでしょうか。

この記事でもブレストにおける「誤解」の価値について書きましたが、

ブレストの段階では、まだ具体的に詰めなくてもいい。だからこそ、抽象的な言葉を用いることは、見た人の「誤解」を生み出し、まだ出会えぬ発想にたどり着ける可能性をわたしたちに与えてくれる。

ジャムセッションのように、出てきた言葉に対して自分が浮かんだイメージやアイデアを重ね合っていく。そういうジャムセッションみたいなやりとりがブレストに起きていると、良いアイデアがどんどん生まれていくと思います。


でも、一方で美大生は別に具体的に考えられないわけじゃない

みたいなことを書いていると美大生はあたかも具体的に考えられない、抽象的な人みたいな聞こえ方をしてしまうけど、そんなことはない。仕上げていくフェーズになれば、どんな道具を使って、どう仕上げていくかを超具体的に考えて詰めていく。

ただ、どこまでは具体的に考えなくてもよくて、どこからは具体的に考えないといけないかをわかっているだけである。ブレストの段階では別に具体的に考えなくてもいいと思っているからこその抽象的な言葉を使っているだけである。例えば絵でも具体的な完成のフェーズになれば、色についても、〇〇の色と〇〇の色と〇〇の色をそれぞれ1:3:2で混ぜて、のような思考をしているのだと思う。

もちろん、美大生とひとくくりにすることは難しいのだけれど、こうした思考をする傾向があるんじゃないかと思っている。


まとめ

さいきんはSTEM教育じゃなくて、STEAM教育だよね、みたいなことを言われているけれど、こうした美大生的な発想は僕らもぜひ学ぶべき内容だと思っている。幸いにも既存の学校教育には図工も美術もあるのに、それが学べていない(学ぶ側の問題もあるけど)のが悲しい。

STEAM教育(スティームきょういく)とは、 Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習する「STEM教育(ステムきょういく)」に、 Art(芸術)を加えて提唱された教育手法である。

本当なら武蔵野美術大学や多摩美術大学の夜間コースにでも通うのがいいんだろうけど、すべての人がそういうことをやるのは難しいよね、というところ。難しい人は、せめて美大を描いた漫画を読んでみるといいかもしれない。個人的にはブルーピリオドという漫画がおすすめなので、ぜひ読んでみてほしい。

もしあなたがお金に余裕があるなら、最近、多摩美大が社会人向けにスクールを開講したのでそこにいってみてもいいかもしれない。

とまあ、今回はこんな感じで。

こうした美大⇔非美大みたいな話に興味があるひとは以下の記事なんかもおすすめです。それではまた!


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