<ペアリング研究会vol.3 レバノン料理>
大統領選挙も終わり、いよいよ落ち着いてきたかなと思っていたニューヨークですが、連日のコロナ感染者の拡大に伴い、飲食店に行くことも友人たちと気軽に会うこともできない日常が続いています。飲食店も夜は10時までにお店を閉めなければいけない条例が出て、変わらず厳しい状況が続いています。
そんな中、同じアパートの住人からディナーのお誘いをもらい行ってきました。このアパートに住み約1年、お互い携帯番号は交換していたものの初めてのお誘いだったので、少し緊張しながら言われた通りスリッパのまま訪問することに。(笑)
訪れたご夫婦は、女性はレバノン出身、男性はアメリカのカンザス出身で、約6年前にニューヨークで出会い結婚したという彼ら。その日は、誘ってくれた彼女の故郷、レバノン料理を用意してくれていました。
事前にラム料理をすると聞いていたので、ラムに合いそうなレバノンのワインを持っていこうと思い、前日ワインショップに行きレバノンの赤ワインを持っていきました。彼女曰く、レバノンには50のワイナリーがあるそうですが、いとも簡単にレバノンワインを購入できるのは、さすがニューヨーク。
購入したワインは、Ch.Musarという、後々調べると日本にも輸入されているワインでした。
生産者:Ch.Musar
生産地:レバノン
品種:サンソ―、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー等
正直、レバノンワインは全く分からないし、飲んだこともほぼありません。なんとなく見た目で選びましたが、「Ch.Musar! 良い生産者だよ。」と言われ一安心。なぜなら、彼女の夫はニューヨークの近代美術館、MOMAに併設されている星付きレストラン、The Modernのビバレッジ専門のスタッフ。(残念ながら現在はクローズ中)以前はクラフトビールの会社で10年以上働いていたということでお酒のプロフェッショナルでした。(全く知りませんでしたが・・・)同じWSET試験の経験者で、まさか同じアパート内でワインの試験話で盛り上がるとは!世間の狭さを感じて前職への恋しさが一層増すことに・・・。
そして彼女が用意してくれていたのは、レバノンの家庭料理というキャベツのガーリックサラダとラムの煮込み。レストラン料理ではなく、いわゆるお袋の味だそうです。
(キャベツのガーリックサラダ。混ぜている段階からガーリックの強烈な香りが!)
(ラムと豆の煮込み)
お米はジャスミン米の様な細長い形でバスマティというインド米だそう。トッピングにシナモンなどのスパイスがかかっていて、それだけ食べても香ばしくて美味しい。煮込みは、数時間煮込んだというラムがホロホロと柔らかくたっぷりのグリーンピースと頂きました。想像以上に味はマイルドで、日本のビーフシチューにスパイスを足したような味でした。とても美味しかったです!
肝心のワインとの相性ですが、持参したワインが予想以上に軽めで、残念ながらラムと香辛料の強さに少し負けてしまっていました。もう少しクセがあってフルボディなタイプが良かったなと反省しつつ、お皿にたっぷりよそってもらった煮込みをペロリと頂きました。
日本では珍しい中東料理ですが、ニューヨークには街のあちこちに中東料理店があります。初めてニューヨークで外食をしたのも中東料理レストランだったし、フムス(ヒヨコ豆にレモン、オリーブオイル、ニンニク等を混ぜてペースト状にしたもの)など、大のお気に入りになった料理も多いです。スパイス好きなら絶対に試してほしいレバノン料理。先月訪れたレバノン料理レストランililiもとても美味しかったです。
(マンハッタンのレバノンレストランilli。東京の広尾にあるイスラエル料理店Taimを思い出す美味しいファラフェルでした)
そして何より、まだまだ人と積極的に交流できない寂しさ一杯の日常で、こうやって階段を登るだけで知らない新しい世界があることにニューヨークに住む面白さを改めて感じた夜になりました。ワインや食の話が国境やバックグラウンドを超えて人と人とを近づけるものになることに、ワインの仕事をしていて良かったなと思える瞬間でもあります。
さて、次回はどうやら私が日本食を作ることになりそうです。少しのプレッシャーと共に、でもやっぱりワインと料理のペアリングを考えるのが楽しい、そんな日常の些細な喜びに気付けた夜となりました。