神経障害性疼痛に効く?TENSの真実を解き明かす!
今回は「経皮的電気神経刺激(TENS)」
っていう痛みを軽くするデバイスの話です。
これ、主に神経障害性疼痛という神経系の痛みに
使われるものなんですが、
「本当に効果あるの?」という疑問も多いようです。
なぜなら、神経障害性疼痛って
普通の鎮痛薬じゃ効きにくいもの。
例えば糖尿病とか、帯状疱疹とか脳卒中とか、
そんな原因で発生する神経障害性疼痛に悩んでいる人には、
聞き慣れないけどTENSが期待されているわけです。
TENSってなんぞ?
そもそも「経皮的電気神経刺激(TENS)」って何なの?
って話ですが、これは簡単に言えば
「皮膚から電気を流して神経を刺激して痛みを和らげる」
という治療法です。
肌に電極を貼って、そこから低い電流を流すことで、
痛みの信号が脳に届くのを邪魔する、
つまりブロックしようとする方法ですね。
体の外から「電気」で痛みを緩和するというわけです。
これ、別に新しい治療法じゃないんですけど、
痛みの治療って結構難しくて
薬じゃどうにもならない場合もあるから、
こういった非薬理的な治療が注目されています。
特に痛みの種類が神経からくるもの、
つまり「神経障害性疼痛」には使われやすいんですね。
Cochraneレビューで効果を調査!
さて、「経皮的電気神経刺激(TENS)」が
本当に効くのかを科学的に検証するため、
Cochraneという信頼性の高いレビューが行われました。
これが今回紹介する「Cochraneレビュー」でして、
要はTENSの効果を確認するために
過去のいろんな研究データを集めて分析したものです。
Cochraneレビューの方法としては
「無作為化対照試験(RCT)」を使っています。
RCTというのは、効果を確かめるために
患者さんをランダムにグループに分けて、
片方にはTENSを使い、もう片方には「偽のTENS」
みたいに電気を流さない機器を使うんですね。
この方法で「どっちが本当に効いているのか?」
ってことを科学的に確かめるわけです。
このレビューでは、2016年9月までに集まった
データベースから15件の研究、
724名の患者さんのデータが集められました。
これらをもとに、TENSの効果を痛みの軽減と
QOL(生活の質)という観点から評価しているわけですね。
TENS、果たして効果はあるのか?
さて、結果はどうだったのか。
結論から言うと、TENSには痛みを和らげる効果が
「あるかもしれない」という感じ。
ちょっと「かも」なのが引っかかるかもしれませんが、
効果はあったけど証拠の質があんまり高くないんですね。
具体的にいえば、痛みのスコア(0から10までのスケール)で
1.58ポイントほど軽減されているという結果が出ています。
ただし、バイアスというデータの偏りがあったり、
対象者数が少ないこともあり、
データの信頼性が「非常に低い」とされています。
また、健康関連の生活の質(QOL)に関するデータも少なく、
「TENSを使うことで生活がどれだけ良くなるのか?」
についてははっきりした結論が出ていません。
副作用としては、肌に電極を貼ることで
軽いかぶれが出ることがあるようですが、
大きな副作用は見られませんでした。
なぜ結論が出せないのか?方法論の限界
ここで「なんでTENSの効果がはっきりわからないのか?」
についてちょっと掘り下げてみましょう。
このCochraneレビューで使用された
「無作為化対照試験(RCT)」は、
効果を確認するための一番信頼できる方法の1つですが、
それでも限界があります。
まず、バイアス(偏り)のリスク。
レビュー対象になった研究はサンプルサイズ(参加者数)が
少ないものも多く、さらにTENSを「実際に使った人」と
「偽TENSを使った人」の間で、
本当に違いがあったかは疑問が残る部分もあります。
また、研究対象となった神経障害性疼痛の原因もバラバラで、
たとえば糖尿病の人もいれば脳卒中後の人もいたりと、
「同じ痛み」に対する効果を評価するのが難しい
という点も問題です。
さらに、TENSの機器ごとに電気の強さや周波数も違っていて、
統一した条件で評価されていないため、
どうしても結果にばらつきが出やすいのです。
結論:TENSは使うべきか?
現時点でTENSが神経障害性疼痛に確実に効果がある
とは言えないものの、「ある程度効くかもしれない」
というデータは出ています。
TENSは、薬みたいに副作用が大きくないのが
メリットですから、補完的な痛みケアとしての
可能性は否定できません。
ただし、「絶対に効く!」といえる証拠は不十分なので、
今後の課題としては「もっと多くの人に使った試験」や、
「標準化された条件での試験」が求められます。
特に周波数や電気の強度などの条件を一定にすることで、
どの痛みにどう効くかの傾向がわかってくるかもしれません。
まとめ:今後のTENSに期待すること
TENSが痛みの治療法としてより効果的になるには、
まず効果のエビデンスを高めることが必要です。
特に、患者さんのQOL(生活の質)が
どれだけ改善されるのか、
薬に頼らないで痛みがどの程度軽減されるのか、
これらのデータが今後の研究でさらに蓄積されていくことが重要です。
現状、神経障害性疼痛に悩んでいるなら
TENSを試してみる価値はありますが、
過度な期待は禁物。
治療法の1つとして選択肢に加えつつ、
医師に相談しながら進めることが推奨されます。
タイトル: 成人の神経障害性疼痛に対する経皮的電気神経刺激(TENS)
著者: William Gibson, Benedict M. Wand, Neil E. O'Connell
掲載誌: Cochrane Database of Systematic Reviews, 2017, Issue 9