神経伝導検査って何?基礎から学ぶNCSの重要性
神経伝導検査(NCS)と聞くと、
なんだか難しそうな印象ですが、
これは手足の神経がうまく働いているかを
確認するための電気検査です。
例えば、手がしびれるとか、
指が動かしにくいとか、
そんな症状があるときに「本当に神経の問題?」
って確認するのがNCSの役割。
簡単に言うと、神経に電気を流して、
信号がどれくらい速く・うまく伝わるかをチェックするわけです。
この論文では、その神経伝導検査を使って、
どうやって診断や治療に役立てているのかを解説しています。
1. NCSの目的とは?症状の原因を正確に特定
まず、NCSの目的は、手や足のしびれ、筋力低下といった
症状が本当に神経障害から来ているのかを見極めることです。
どんなに経験豊富な医師でも、
目で見てわかるわけじゃない。
だからこそ、NCSで神経が正常に動いているか、
伝達が遅れていないかを確認するわけです。
NCSの役割は主に以下の3つに分けられます:
疾患や障害の確認: 例えば手根管症候群や肘部尺骨神経障害など、神経が圧迫されていることで起こる障害が疑われる場合、その可能性を確かめるのにNCSは非常に有効です。
症状の裏付け: 患者さんが感じている症状が、神経に原因があるかどうかを確認し、「その症状の説明がつく」かどうかの裏付けを取ります。
検査の信頼性確保: 検査結果が信頼できるものかを確認するために、テクニカルな要因も考慮して検査します。電気刺激が他の神経に伝わらないよう注意を払うのも大事なポイント。
2. NCSの方法とは?局在性と限局性を見極める技術
続いて、この論文で詳述されているNCSの方法についてです。
症状によっては神経の特定の部分だけに
問題が起きている場合もあるし、
神経の伝達スピードが全体的に遅くなっている場合もあります。
それぞれのケースに合った方法が選ばれるわけです。
局在性の確認
神経のどの場所に問題があるか、つまり「どこで詰まっているのか?」を確認するのがこの方法です。例えば、手根管症候群(CTS)は、手首の正中神経が圧迫されることによって起こります。ここで正中神経に電気刺激を与え、伝わりが遅れていれば、手根管での障害が疑われるわけです。
手根管症候群(CTS): 手首の正中神経を刺激し、その伝導スピードを確認します。遅れているならCTSが原因かも。
肘部尺骨神経障害(UNE): 尺骨神経が肘のあたりで圧迫されることで起こります。肘の部分に電気刺激を当て、神経の伝わりが悪いかをチェック。必要に応じて「インチング法」という、少しずつ位置を変えての測定方法も使います。
限局性の確認
これは神経の一部だけに障害があるかどうかを確認する方法です。
いくつかの神経や筋肉を同時に調べて、
それぞれの反応を比較することで、
神経の一部がうまく働いていないかどうかを判断します。
虫様筋-骨間筋法(2L-INT法): 手根管症候群のチェックで使う方法。正中神経と尺骨神経の伝導スピードを比較して、正中神経にのみ障害があるかどうかを確認します。
環指法: 環指(薬指)に電気刺激を与え、正中神経と尺骨神経の両方の反応を確認する方法。神経が二重支配している環指を使うことで、どちらの神経に問題があるかがわかりやすくなります。
3. 検査の信頼性を確保するための技術的工夫
さて、ここからが実際の検査での
「技術的な工夫」の話です。
検査結果がどれだけ信頼できるかは、
神経伝導検査を実施する技術の精度にかかっています。
たとえば、神経に電気刺激を与えたときに、
本来の神経ではない別の神経に伝わってしまうと、
本来の伝導結果がわかりません。
こうした「刺激の波及」という現象が起きると、
測定したい神経の結果が不正確になってしまいます。
刺激の波及を防ぐ方法
電気刺激が別の神経に伝わらないようにするためには、
複数の神経を同時に測定する
「マルチチャンネル導出」が効果的です。
例えば、正中神経を調べるとき、
尺骨神経も同時に確認しておくことで、
刺激が意図しないところに伝わっていないかを確認できます。
衝突法
これは、神経に電気刺激を与えたとき、
別の神経に刺激が広がらないようにする方法です。
神経伝導検査では、この「衝突法」を使って、
神経の伝導ブロックや遅延などを確認します。
衝突法により、伝導スピードのブロックがある場所が明確になり、
精度の高い診断が可能になります。
結論:NCSの重要性と効果的な検査のために必要なこと
この論文で伝えたいのは、
NCSが神経障害の診断や治療のために
非常に重要な役割を果たすということ。
特に次の3つのポイントが強調されています。
早期発見に役立つ: 手や足がしびれる、痛みがあるなどの症状が神経障害から来ている場合、NCSによって早期発見が可能です。これにより、早めの治療が期待でき、症状の悪化を防ぐことができます。
技術的な精度が重要: 検査の精度を高めるためには、電気刺激が他の神経に波及しないようにする技術が必要です。これには、複数のチャンネルでデータを取得したり、衝突法を用いるなどの工夫が求められます。
症状に応じた検査方法の選択: 患者さんの症状や状態に応じて適切な検査方法を選ぶことが不可欠です。手根管症候群が疑われるなら、2L-INT法や環指法といった検査方法を使うことで、より正確な診断が可能になります。
まとめ
神経伝導検査(NCS)は、
手足の神経の状態を知るための非常に有効な手段です。
特に、手根管症候群や肘部尺骨神経障害など、
神経の圧迫が原因で起こる障害の診断には欠かせない
ツールと言えます。
この論文は、NCSの基本からその技術的な工夫まで
幅広く解説しており、実践的な内容です。
患者さんの症状や状態に合わせて
最適な方法で検査を行うことで、
NCSは信頼できるデータを提供できます。
タイトル: 神経伝導検査―臨床検査技師はここまで行うべき!
著者: 山内孝治
発行: 臨床神経生理学 第52巻第2号