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文部科学省「大学入試のあり方に関する検討会議」(第8回)議事概要 6月5日(金)

1. 令和3年度大学入学者選抜について(文部科学省より説明)
・入試日程等の早期の公表が必要。令和3年度大学入学者選抜については高等学校等の臨時休業が長期化したことや今後の新型コロナウイルス感染症の収束の見通しが不透明であるため、文部科学省としては、高校大学関係者の声を踏まえて令和3年度大学入学者選抜の対応を決定すべきだと考えている。このため、全国の高校の事情、意向を把握するため、入試日程、出題範囲、受験機会の工夫などについて全国高等学校長協会にアンケート調査の実施を依頼した。
・アンケート調査の結果を踏まえ、感染者の専門家を含め国公私立大学関係者及び高等学校関係者等の審議を経て今後定める「令和3年度大学入学者選抜実施要項」を周知する予定。6月中できる限り早く公表したいと考えている。
・試験会場のガイドラインも同様に公表したい。受験機会の確保ができるように対応していきたい。

2. 外部有識者・団体からのヒアリング
【吉田先生(上智大学言語教育センター長)】
・大学入試を考えたときに、小中高の学習指導要領の中でどのような教育が行われているのか。どういう目標が設定されているのか。それを把握した上で、高校を出たときにどういう学力が身に付いているかをまず確認しないといけない。
・高等学校の学習指導要領には、「五つの領域別の言語活動及び複数の領域を結び付けた統合的な言語活動を通して、総合的に指導するもの」としている。
・英語4技能試験の導入は、国として 4 技能(5 領域)のテストを作成し実施できれば最も好ましい。
・課題はいくつか存在するが、今後、入試の形を考慮しなければならない。できれば、年に数回(例えば、季節ごとに1回計4回)は実施できる態勢が必要になるのではないか。果たして大学入試センターにそのようなテストが作れるのか。人手のことを考えると、CBT化する必要がある。
新しい時代の試験体制を考えると今のままでは難しい。そのような点を考慮した時に、民間の4技能試験の活用の話がでてくる。
・英検(特に2級まで)、G-TEC、ケンブリッジ英検などは学校で学んだレベルごとの英語力の測定を目的。学習指導要領が前提。診断的要素が含まれる。学習指導要領が定める高校卒業程度の英語力を測定するのに適している。→ 高校までで学ぶべき英語力がどこまで身についたかを測定できる
・当時はCEFRをそれぞれの団体に任せて判定してもらった。それが信頼できないのであれば第3者機関で実施する必要がある。
・入試の日程その他が変わるなら、9月入学を考えることも必要。補習できる期間を活用し、その後入試を行う。

≪意見交換≫
・今まで設定していた入試のルールをさらに大きく変えるような提案であり、受験生であれば不安に感じる。短期的に対処可能なやり方は今までの蓄積の中にしかない。ご提案は中長期的な試験の在り方か?(末富委員)
→緊急で今からでもやっていいと思っている。試験問題、受験日程、出題範囲はすでに変えられない。センター試験が中止されれば、4月入学は難しくなる。もし仮にセンター試験のスキームから外れたとしても教科・科目の作問の課題が生じる。(吉田先生)

【中村先生(東京大学大学院教育学研究科教授)】
・高大接続で考えるべきことの視点からの説明。高大接続の前提で2つ基本的なことを申し上げる。
1. 専門教育と普通教育の違い。高等学校までの基礎的な学力の部分と、高等教育の専門的な部分は質が違うのでそこをつないでいくということ。
2. 教育拡大と、大学入学者層の変化が起こっている。大学入学者は増えた。従来の入試とは違う形で対応せざるを得なくなっている。

・高大接続のつなぎ目を滑らかにしても難しいところがあり多様な学生層がいる。改革というより、教育や支援の側面を重視することが大事。
・高大接続システム改革会議「最終報告」において予見できない社会で、重要な能力を予見しているように読めるが、変化の激しい時代でも必要な能力は限られている。基礎学力、意欲、思考力など。今後は改革という強い言葉を使わずに制度設計を考えるべき。
・1990年代からあった受験競争批判・知識の詰め込み批判のときにすでに入試は「多様化」していた。ただ、その後すべての入試区分で学力の3要素を入れ始めた。これは入試多様化ではなく画一化。
・これからの入試制度を考えるため、入試で教育を変えようとしない。必ずゆがむ。共通テストへの記述式問題、英語民間試験の導入が見送りになったことにほっとしたという高校2年生が約8割。

≪意見交換≫
・2つお聴きしたい。3月に実施した高校生のアンケートは、どのような層に尋ねたのか。もう一点、専門教育と普通教育の違いを含め入試のゴタゴタについて意見を聴きたい。(両角委員)
→データについては、調査会社のモニターを使用。性別と全国都道府県の高校生の比率に応じて取ってもらった。歪みはそれほどないと考える。今回の入試で学力の3要素を高校から大学を通して串刺しのようにやったことが矛盾を生じさせた。学習指導要領の範囲内で何をやるのかは、ある程度大学の専門性等でチョイスされるのが本筋。(中村先生)
・多様な要素を考慮すればするほど「画一化」するのはその通り。高大接続でどのような要素が考慮されるのか。また、主体性や内申書などを考慮して行動してしまうことはある。それを打開できるビジョンがあるか。(末富委員)
 →どれぐらいの人に理解できるのか分からないが求めるのは「多様性」なのか。どういう多様性が必要なのかは、地域、状況で変わってくると考える。(中村先生)

【高宮氏(学校法人高宮学園(代々木ゼミナール)副理事長)】

・受験産業から見た大学入試改革。大学入試改革のメリットとコストに対する説明が必要かと考える。
・日本の入試におけるミスに対する許容度は低く、改革に伴い一定の事故が発生することに対するコンセンサスが重要。
・間接的なコストの観点から言えば、現在の受験生は変化(新テストへの移行)に対する心理的負担に加え決定事項が覆ることへの失望や決まらないこと(入試要項発表の遅延)への不安など多大なストレスに直面。
・学習の努力が相応に報われる入試が改革の前提である。

【永瀬氏(株式会社ナガセ(東進ハイスクール)社長】
・大学入試センターが英語4技能試験を作成・実施する、ことを提言する。至った経緯について、説明したい。
・共通一次・センター試験は大学入試について事実上の標準化を果たすことができたという大きな功績がある。共通テストは大きな影響力を持つことは事実。そして、センター試験はこれまでも改善を続けてきた。将来の子たちがどんな力をつけるべきか考えるべき。
・2025年1月から統一の英語4技能試験開始を目指し、特に実施の難しい英語のスピーキング試験はさらに4年後からの開始を目指すなど段階を経て4技能試験を実現する (最初から完璧な試験をつくるのではなく小さく生んで大きく育てる)
・“とにかくスタート”してから改善を重ね、より適した在り方に進化させていくことを目指してはどうか。課題は山積しているが、実現のための技術は日進月歩で進化している。→大学入試センターが英語4技能試験を作成・実施する、ことを提言する。
・「日本が将来世界でどのようなポジションを占めようと思うか」ということに繋がる。議論を深めて完璧でなくてもまず第一歩目を踏み出すことが大切。

【石井氏(株式会社旺文社 教育情報センター蛍雪情報グループ)】
・外部検定試験は、「出願資格」「加点」「得点換算」の3つに分けられる。中心はあくまで外部検定試験を利用しない入試。受験生にもメリットがあり、出願資格で英語検定試験が設定されていれば当日の英語は免除されていることがある。
外部検定試験を導入する大学が増えている理由として、受験生にメリットがある→志願者が集まる→実施大学は毎年増加する、という形になっているため。
・利用できるレベルは最低A2が必要だが、日本の高3生でA2レベル以上はわずか4割。外部検定試験の一般入試の利用は「得点換算」が最多。
・「共通テストでの全面的な4技能評価」は、経済格差、地域格差の克服等を踏まえると、非常に困難。
・成績提供システムの予算は経済的困窮者への受験支援や離島、へき地での会場設置の支援に活用してはどうか。→学外会場を設けようとする検定団体を後押しする方がよい。
・入試を変えずに高校教育を変えることができるのか。入試で教育を変えるのは理想的ではない。しかし、今までやってうまく行かなかったから入試を変えよう、という話ではないのか。

≪意見交換≫

・石井氏にご質問。記載のある事項についてはほとんど同意。英語4技能の箇所で、日本がグローバル化への対応から取り残される可能性、と記載されている。もう少し多面的な考え方ができないか。英語以外のタイ語やドイツ語などが話せることはグローバルな人材ではないのか。(芝井)
→ご指摘の通り。記載事項が英語のみの話であるということではない。記載されていた事項は文科省の実施方針に英語の4技能を導入する目的等に書かれていたと記憶している。(石井)
・石井氏にご質問。国立大学は英語の4技能は重要と考えている。国大協の中でも様々な議論を行ってきた。どのような点が問題と映っているのかお聴きしたい。(岡)
→全学的にやるかやらないかの2択である必要はない。外部検定試験を利用しない枠を残すことは大事。今回は民間試験を出願資格とする大学が続出した。これが強いAPで裏付けられた一部の大学であればよいと考える。(石井)
←国立大学では、入学後も英語4技能の教育をしている。他の方法で英語4技能を測る方法があったのか、というときに良い解が見つけられなかった。共通テストで英語の科目を残したのは様々な意見を聴いてから判断したもの。(岡)


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