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文部科学省「大学入試のあり方に関する検討会議」(第11回)議事概要7月7日(火)

1. 外部有識者・団体からのヒアリング
【佐藤誠 島根県教育センター教育企画部部長】

・進路指導であった立場から意見を述べたい。英語4技能の育成・評価等の理念は良い。しかし、共通テストを迎えるにあたり、スピードから取り残されているような不安や実施上の問題の不信が生じてきた。象徴的な点として、三位一体といいつつ、大学入試に焦点があたっていった。特に昨年6月の説明会の際には、「資格検定試験Aと資格検定試験Bではどちらが有利ですか」といった意見が寄せられた。高校教育の延長上に位置付けられていた入試が、英語資格・検定試験は別物であるという印象を持った。
・民間英語資格・検定試験活用を共通テストの枠組みに含めないことに賛成。昨年、離島・僻地の学生の移動負担や障害のある受験生の配慮が示されなかった。また、高校のスケジュールと資格検定試験のスケジュールが合わなかったことも課題。一番大きかったのは、高額な検定料。
・今まで通り民間英語資格・検定試験活用は各大学のアドミッション・ポリシーのもとで、共通テスト以外で利用されると良い。共通テストの枠組内で評価するのであれば、入試センターに作成願いたい。
・入試での記述式問題の出題は、記述式問題が各大学の個別学力検査で行われることに賛成。ぶれない採点が行われるのであればよいが、現時点で実現は難しい。
・共通テスト・個別学力検査においては、良質な問題が、生徒に到達すべき目標になり、教員の指導の改善につながっている。

≪意見交換≫
・昨年度、民間試験を受験する際に島根県の地理的要因を含めて課題はあったか。(末富委員)
→地理的要因が大きい。離島に住んでいる学生が島をでて受験する必要がある。経済的や体力的な負担があるのは事実。(佐藤氏)

・昨年、どういう傾向が強くなってきたのか。(渡辺委員)
→徐々に高校の質的保障を担うという話になってきて共通テストの役割が肥大してきた。(佐藤氏)

・高大接続の話がスタートした段階で、入試センターは英語4技能を測る試験は作れないため、民間試験を利用するという話であった。記述式についても、1点刻みから段階別評価の方向性を示した。しかし、いま再度やりなおしということになっている。入試センターは英語4技能の試験は本当に作れないのか。(吉田委員)
→共通テストの枠組内で英語4技能を評価する場合に入試センターに作成願いたいというのは現場からの願いであるが、即座に作ってほしいということではなく将来的に長いスパンでCBT等の開発など時間をかけながらできることを願っている。(佐藤氏)

【青山 智恵 ケンブリッジ大学英語検定機構 試験開発部門日本統括マネージャー】
・英語資格検定試験の活用のあり方等について話させていただく。CEFRはケンブリッジ大学とヨーロッパ評議会の優れた研究成果の一部であり、約40カ国語に翻訳され大きな影響を及ぼしている。ケンブリッジ英語検定はCEFRとともに開発され、CEFRにマッピングされていると主張できる唯一の試験。
・国が英語問題を作成するといわれていた2015年の段階で、調査研究事業として「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の問題作成に関わっていた。
・ケンブリッジでは、ケンブリッジ英語検定、Linguaskill、IELTSを作成しており、点数によって互いに比較可能。
・2018年に合計3000名の高校生を受けてもらったところ正規分布となった。測定精度が高いことが証明されている。
・2017-2018の2年間の日本の13-18歳の4技能スコアをみると、Speaking力があり、Listeningが弱い。
・他国の例で個別入試への国の支援の在り方として、イタリアは国が外部試験を認定し、10数年続いている。
・ケンブリッジ英語検定のCertificate(認定証)は生涯有効。神田外国語学院(Linguaskill)を導入。
・国が開発する場合は、アセスメントの改革の試験ではなく学習者を育てるためにテストを活用する視点が大事。ステークホルダーのための5年、10年の長いスパンでパイロットを経て構築してはどうか。

【安田智恵ブリティッシュカウンシル試験部】
・英語4技能評価導入について、以下の3点が重要。
① 英語4技能評価の教育システムへの導入は、英語教育改革の効果測定と学習者の英語力向上に不可欠。学習指導要領等(カリキュラム)で何を教えるのか、どのように教えるのか、評価として、どのように測るのか。
② 学習指導要領と指導/学習とともに教育課程の中で活用されることが効果的。
③ 英語教育改革と英語4技能の導入に携わっている中で、英語4技能測定を行わないという積極的な決定はどの国でもしていない。
・ブリティッシュカウンシルとして日本の入試では、IELTSとBCT-Sの2つのテストが活用できるのではないかと提案してきた。
・IELTSが大学入試利用で期待できる点として、実際に使う英語を場面に即した出題によって測る熟達度テストであるという点。また、英国政府管轄の第三者機関“Ofqual(イングランドの公式な政府の法定規制当局。特定の省庁に属さず、議会に直接報告する政府機関)”による監査や、外部研究者によって公正・公平性を担保している。
・BCT-Sは東京外国語大学とブリティッシュカウンシルが協働で開発した大学入試用のスピーキング・テスト。作問する際には、学習指導要領で目指している、知識・技能を実際のコミュニケーション、思考力・判断力・表現力を評価できる出題をすることに注力した。

【前田剛 IDP:IELTS Australia IELTS 業務管理日本統括責任者】
・文部科学省から発表されている「高大接続改革」の考え方の中にある「学力の3要素」の育成・評価の点において、IELTSを通じて国に貢献できると考えている。
・日本人が活躍するために必要なスキルは英語力の他にもコミュニケーション力、思考力、判断力、表現力、問題分析力、問題解決力など多岐にわたる。その中で、IELTSは留学先の大学等でしっかりついていけるか、卒業できるかを測っている。
・スピーキングでは、受験者自身の話や身近なテーマ等をテスト。発音、流暢さと一貫性、語彙力、文法知識と正確さを評価。ポイントは、自分の考えを相手に伝えられるか。
・ライティングでは、情報分析とエッセイを通して、文法の幅広さと正確さ、タスクの達成、論理的一貫性とまとまり、語彙の豊富さと適切さを測る。
・日本人は、「思考力・考える力」が不足している。日本語で自分の考えや意見が言えなければ英語で言えないのは、大前提である。
・IELTSの評価の仕方などを参考にしてもらえればと考えている。

≪意見交換≫
・昨年英語成績提供システムが延期になる直前まで、どのように受験するのか分からない受験生が一定数いた。様々な費用負担について賄われる可能性があるのかも分からない点があった。その点について意見をお聞きしたい。(芝井委員)
→地理的な要因は最後まで悩んだ。離島の方々がIELTSを受験するのはハードルが高い。いろいろな工夫を考えたがオンラインでは実施できなかった。システムがうまくまわり、全体像が把握できた段階であれば対応できたと考えている。(安田氏)

・イギリス系のケンブリッジ英語検定とLinguaskill、IELTSはCEFRでの信頼性が高い。それ以外のGTEC等はCEFR上のマッピングでどれほど信頼性があるのか。(小林委員)
→1913年C2Proficiency(CEFRのランク)を世に送り出した際は国の内外(今のEUなど)において人・物・金の移動を促進する(労働者の言語能力を示す)ための指標であり、柱はC2だった。CEFRの生みの親の4名はケンブリッジ英検を参考にCEFRを作っていたといっている。英語についてはマッピングが出されている。“Ofqual”の査察を念頭に質が担保されている。だが監督機関が日本にはなく、我々は答えるポジションにはない。(青山氏)
←監督機関というシステムが必要というのは同意する。(小林委員)

・イギリス流の検定試験は第3者機関を立てており、安心して信頼性もあると思う。その中で、利益相反とはどのようなものを想定していたのか。(小林委員)
→利益相反について、出版社が問題集を出版するルールがあり、承認するプロセスがある。内容も良い点を取るためだけの問題集はダメであったり、過去問を使う場合、それが利益になってはいけないなど。採点者によって有利にならないように無記名とされている。利益相反については“Ofqual”のようなルールがあれば避けられる。(安田氏)

・IELTSに50万人の受験生が受験すると考えた場合、ライティングの試験と同様の問題が出てくると考えられるがいかがか。(小林委員)
→IELTSを受ける方の95%が留学が目的。IELTSはクラス全員に向いている試験ではないが、仮に留学したい学生がいた場合を想定し、その学生の不利益にならないために共通テストに参加した。(前田氏)

・離島問題は頭が痛いところではあるがLinguaskillなら対応が可能ではないか。ケンブリッジのLinguaskillがご説明にも入っていたが、なぜ共通テストに入ってこなかったのか。(柴田委員)
→初年度に申請したが、認められなかった。理由は高校生の受験者数が少ない、真新しいテストであったから。今回のコロナの関係で自宅で受けられるテストということで、離島僻地の方でも受験できる。今後につながる未来型のテスト。(青山氏)

【込山智之 ベネッセコーポレーション GTEC開発部部長】
・ますますグローバル化が進むはず。そんな時代の中で世界と渡り合って活躍できる人を増やしたい、今からの高校生・中学生には本当に使える英語力を身に付けてほしい、と強く思っていた。
・指導と評価、学習と評価は一体のもの。1999年にアメリカのテスト会社と共同で英語検定開発し、リリースしたのが「GTEC」。
・センター試験にリスニングが導入されたのが2006年。大学入試が「読む」1技能だけの時代から「書く・話す」まで測定し、真の英語力=4技能を伸ばすことを追求してきた。
・学習指導要領と英語の観点からは、タスクベースに課題解決、リアルな英語使用場面、CAN-DO対応で整理できる。CEFRの基本はCAN-DOであり、学校現場でもCAN-DOの視点が入っている。
・入試如何にかかわらず、高校の英語教育をどのように考えていくのかというのが重要な観点。「英語で何ができるか」という記述で学習到達目標を設定するか、というのが重要。指導評価は一体であり、定期テストで使える英語を身に付けてもらう。パフォーマンステストは文部科学省の調査によれば3割くらいの実施にとどまっており課題となっている。

【塩崎 修健 日本英語検定協会教育事業部 部長】
・時代の変遷やニーズとともに、英検のモデルチェンジを行いながら様々な教育機関との連携において、実用の社会に必要な実用英語の習得及び普及向上につなげるために英語能力を判定し、能力を養成することにより、生涯学習の振興に寄与することを目的に活動している。
・現在は4つの形式で運用している。
①従来型とよばれる50年間実施してきた英検。筆記試験を実施後に面接を行う。この形式は成績提供システムからは外れている。以下の試験が成績提供システムに登録されている。
②英検CBTは2級から3級まで受験でき、スピーキングは吹き込み式。1日で受験完了。
③英検S-CBTは準1級から3級まで受験でき対象は高校3年生。スピーキングは吹き込み式。1日で受験完了。
④英検S-Interviewは1級から3級まで受験でき対象は高校3年生。スピーキングは対面式で2日間必要。
②と③は受験者への配慮が限定的であるということで、従来型の英検では幅広く障害者の方への配慮を行っており、同様に配慮を行うために④を開発し提供している。

【根本 斉 CIEE TOEFL 日本拠点)代表理事】
・TOEFLテストの目的は、留学で活用されるテストといわれてきたが、正確には英語を母語としない学習者が高等教育機関で英語を使って学ぶときに必要となる英語力を測定するため。インターネットを介して受験できるTOEFLiBTは4技能を1回の試験で測定。受験はテスト会場受験とオンライン監視による自宅受験を併用している。
・採点にはルーブリックを活用し採点する。スピーキングの評価は0~4の5段階。
・国立大学では86大学中、62校でテストスコアを利用いただいている。
・大学入試で4技能を評価する理念や一般選抜以外の選抜区分が果たす役割として検討してほしい点として、外部英語検定試験の活用は各大学のAPやDPに基づいた入学者選抜の一部として妥当か。また、外部英語試験のスコアの信頼性を判定する必要性について検討してほしい。

【三橋 峰夫 国際ビジネスコミュニケーション協会調査研究室 室長】
・英語4技能評価の在り方についても検討事項として挙げられている。外部試験をどう活用するのかも含まれているため、外部試験を実施している団体が会議で発言すること自体に疑義がある。
・成績提供システムの導入に向けて、2014年頃から文科省の会議で発言等させていただいた。当初は問題視されていなかったが試験実施団体が会議に入っていることに対して徐々に批判を受けた。
・大学入試に外部の試験を活用することに関する、実施運営面から意見をしたい。従来のAO入試、推薦入試での活用は一部の受験生が利用しているに留まっていたため問題視されていなかった。これまでTOEICでは独自の運営方針で試験を実施してきた。つまり、大学入試のために特別なことを実施する、ということはなかった。通常との唯一の違いは、受験者本人にスコア結果を送付することはせずに、大学に直接受験生のスコア結果を通知すること。
・そこから、共通テストの枠組みの中で実施、ということになり、全ての受験生が対象になるといったタイミングで公平性と公正性といった観点が入ってきた。そのときには、受験生が受験したいタイミングで受験したい会場で受験できるようにして、さらに結果も早く知らせるように、と要望された。
・試験実施に関しては、大学を中心に会場をお借りして実施している。大学側の立場からは行事等のスケジュールが決まらないと貸し出せない、ということになっている。このような背景があり2020年の4月から実施するのであれば2019年の4月には決めてもらわないと困るという意見があった。現実問題として対応は厳しい。
・当初は参加要件をクリアすれば大丈夫であろうと考えていたが、徐々に厳しい条件が厳しくなってきたため、対応が不十分では受験生のためにならないと思い参加を取りやめた。

≪意見交換≫
・採点がブラックボックスであるという説明が前回あった。その点について英語検定試験はどのようにお考えか。(芝井委員)
→詳細まで踏み込んでご説明できなかったがHP等で公開できるところまでは公開している。英検は問題自体も公開している。(塩崎氏)

・TOEFLを大学入試で活用することはそもそも目的が異なる、ということについて意見を伺いたい。(芝井委員)
→それぞれのスコアユーザーがどのレベルを想定するのか、というのが重要。CEFR等で判定するかどうかも各教育界の判断にも左右される。(根本氏)

・前半部分で“Ofqual”の利益相反についての資料があった。英検及びGTECにおいて、利益相反の内部ルールがあれば教えてほしい。(末富委員)
→第3者評価について公開している。ISOの認証も会社として取得している。“Ofqual”の厳密性以上のレベルはない。このレベルを求めるならば、制度設計の際に国の関与が必要。(込山氏)
→自社で出版している本がないので該当しないと考えている。(塩崎氏)


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