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じっと目を見るのはあなただけ③

「(会いたいって気持ち)だだ漏れさせてごめんね」

全てをすっ飛ばしてあなたにそう伝えた。
あなたは首をぶんぶん振ってた。
首というか、頭を。

あれ、この仕草どっかで見たことあるなって思った。

あー、あの時だって思ったのと同時に、その仕草から彼の本心を確実に垣間見たと思った。
あー、これ本当なんだなって。


本当に初めの頃、今から思ってもあなたがとんでもなく幼稚なコミュニケーションをしたせいで、亀裂が入ったことがあった時。
そうあの時も、メッセージだった。
すっかり、あなたはわたしに関心がないんだと思っていたあの時。

あなたは多分、自分がやらかしたと思いつつ、その一件で私が愛想を尽かしたと思ったのか暴挙に出て、勝手に拗ねて、傷ついて、身を引く、もう会わないって言い出したよね。

大人になって、恋愛に限らず人とのコミュニケーションでこんなに当惑したことがあっただろうか。いや、何度思い返してみても絶対に無いと思う。

あなたが何の話してるのか、どういう気分でそう言ってるのか本当に本当に1ミリも分からなくて、思い返してもとにかく「当惑」という言葉がしっくりきすぎてしまうほどに。

恋愛(特に初期)も人とのコミュニケーションも、どちらかといえば得意分野と言えそうな私の概念を、見事に壊していくスタイルのあなた。

勝手に距離詰めて深読みして、自らメッセージでエラー出して、その後の電話でちょっと強気に出るなんて、一体今までどんなコミュニケーション取ってきたんだと思ったけど、後にも先にも、あんなに当惑することはないような気がする。

全く予期せぬ方向から思考を止められて、取り付く島がないような状態になって、ようやく答えを聞き出せたとき、
どう曲解したらそんな風になるのか分からなくて
はじめて子どもみたいに泣いたわたしにびっくりしたのか、夜中車飛ばしてきましたね。直接会った時には、もうそんな威勢も虚勢もなくて。

(こんな理由で)意地悪言っちゃった、
自分がどんどん嫌な奴になっていくみたいって、
あなたの、相当自分勝手だけど至極シンプルな言い訳(理由)を聞いた時、私は半分諭しつつ、その時も一旦、全てをすっ飛ばして同じように伝えたよね。

「そのお顔のどっからあんな(強めの)声出たん?」
「やな気持ちになったね、ごめんね」

その時も、何も言わないで首をぶんぶん振ってた。
ハグしてたから余計に伝わった。

こどもが、いやいやする時の強さと同じあれ。
違う違う、そんなことない、自分が悪かったっていうのが、
全部伝わってくる、あれ。

あの時幼稚すぎると思いながら、同時に愛おしかったのは、その思いが伝わったから。わたしの気持ちを説明するのは、この次でいいやって思ったあの感じ。
わたしが悲しく思った気持ちも分かってるだろうし、自分がまずかったなってきっと分かってる。

今日も本当に同じようにやってた。
お互いに。

わたしだって、とか
昨日のあの文面はちょっと、とかそんな思いを消してるわけじゃない。
かといってそれは今伝えるべきことではないかな、って考えたわけでも
言いづらいな、って思ったわけでもなくて。

そういう思いが包括された気持ちの中で、
言葉に出たのは「(そんなにしんどかったのに)(会いたい気持ち)だだ漏れさせてごめんね。」だった。

「状況が理解できれば、状況を愛せてしまう」というのが、本当にわたしの本心だと思う。
「話せばわかる」のわたしと、「言葉をさぼる」あなたはきっと大変なことも多いでしょう。

思いっきり首振ったあと、
「そんなことない、僕が本当に余裕なくて・・・(こんなことになってる)」っていう気持ちを伝えようとしてくれた時。安心に近い感覚を得たし、愛おしい気持ちになった。自分が一旦安心できる、大きな確信も得たような感覚。

わたしはこれからもしばらく先に安心をあげるし、先に謝ってあげる。
傲慢な思いじゃないよ。

うまく言葉に出ないなら、うまく態度に出ないなら、わたしが先に見せてあげる。
ただそれだけ。



終わり。
(241011 )

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