サブスクの定常状態を知る
2024年10月にリリースした「無限もじおこし」。
引き続き多くの人に利用してもらっており、ユーザー数は着々と増えてきているのですが、一方でサブスク数が頭打ちになってきました。
新規登録者数は少しずつ増えていくのですが、1~2ヶ月目と比較してのトータルの伸びが悪くなってきています。
AppStoreConnectでは継続率がみれるので、そこを見ると大体50~70%でした。この数値をベースに、トータルのサブスク数が新規流入、継続率とどのような関係性にあるのかについて、直感的に理解ができるようにo1 proに解説してもらいました。
ここでは、サブスクの「継続率」と「毎月の新規加入者数」を変化させながら、会員数がどのように推移していくのかを、なるべく数式を使わずにイメージしやすく解説していきます。
ポイントは「継続率がどれくらいか」「毎月どれくらいの人数が新しく入ってきてくれるか」の2つ。この2つをうまくつかむことで、最終的にどれくらいサブスク会員が安定して増えていくのかを予想しやすくなります。
まずはベースの考え方
毎月どうやって人数が決まる?
ある月にサブスクを利用してくれる人がいます(これを“ストック”と呼ぶこともあります)。
そのうち、継続して次の月も残ってくれる人が一定の割合(継続率)でいます。
そして、新しくサブスクを始める人が毎月入ってきます(新規流入)。
「前の月に残っていた人のうち、何割が継続するのか? さらにそこに新しく入ってきた人が加わる」という繰り返しによって、サブスクの会員数が決まります。
定常状態(安定状態)の数式
もし継続率と新規流入者数が毎月ずっと同じであれば、最終的にはある値に落ち着くと考えられます。
たとえば「毎月の新規加入数」を I とし、「継続率」を R とすると、理論上の安定状態では、
S = I / (1 - R)
という形で、会員数 S が算出できます。
直感的には、「チャーン(= 1 - R)の割合で抜けていくけれど、毎月 I 人ずつ入ってくる状態」を考えると、ここにバランスが取れるポイントが存在するイメージです。
シミュレーションの例(少しずつパターンを増やす)
ここでは実際にいくつかの数字を当てはめてみて、その増え方や落ち着き方を見ていきましょう。便宜上、「初回は 0 人からスタート」として、毎月ある程度の人数が必ず入ってくる状態を想定します。
※ 実際には最初から 100 人いるケースなどもあるかもしれませんが、数字の変化をわかりやすくするための仮定です。
パターンA: 継続率 50%、毎月の新規加入 50 人
継続率:50%(つまり半分の人が翌月も継続)
毎月新規加入者:50 人
1か月目:
前月は 0 人。そこから継続はないので、単純に 0 人 + 50 人 = 50 人。
2か月目:
前月 50 人の半分(25 人)が残り、新たに 50 人が入る → 25 + 50 = 75 人。
3か月目:
前月 75 人の半分(約 38 人)が残り、新たに 50 人が加わる → 38 + 50 = 88 人。
4か月目以降:
前月分の半分に新しい 50 人を足す…を繰り返すと、だんだん 100 人弱で落ち着いていきます。
上の数式で見ると、I = 50、R = 0.50 なので S = 50 / (1 - 0.50) = 50 / 0.50 = 100 という理屈ですね。
パターンB: 継続率 50%、毎月の新規加入 100 人
同じ継続率 50% でも、新規が倍になれば落ち着く人数も倍近くなります。
1か月目:
0 人 + 100 人 = 100 人
2か月目:
前月 100 人の半分(50 人)が残り、さらに 100 人が加わる → 150 人
3か月目:
前月 150 人の半分(75 人)+ 100 人 → 175 人
…という具合で、最終的にはおよそ 200 人近辺で安定します。
数式で見ると、I = 100、R = 0.50 なので
S = 100 / (1 - 0.50) = 200
パターンC: 継続率 60%、毎月の新規加入 100 人
今度は継続率を 10 ポイント上げた 60% にしてみましょう。同じ 100 人の新規加入でも、継続率が上がると増え方は大きく変わります。
1か月目:
0 人 + 100 人 = 100 人
2か月目:
前月 100 人の 60 人が残り、新たに 100 人 → 160 人
3か月目:
前月 160 人の 96 人(60%)+ 100 人 → 196 人
4か月目:
196 人の 60%(約 118 人)+ 100 人 → 218 人
…最終的には 250 人あたりでバランスしていきます。50% のときと比べて、明らかに “数の伸び” が大きいですね。
数式で見ると、I = 100、R = 0.60
S = 100 / (1 - 0.60) = 100 / 0.40 = 250
パターンD: 継続率 70%、毎月の新規加入 100 人
さらに継続率を 70% へアップ。同じ 100 人の新規加入でも、継続率がぐんと上がるだけで大きく結果が変わります。
1か月目:
0 人 + 100 人 = 100 人
2か月目:
100 人の 70 人が残り、新規 100 人 → 170 人
3か月目:
170 人の約 119 人が残り、新規 100 人 → 219 人
4か月目:
219 人の 70%(約 153 人)+ 100 人 → 253 人
…最終的には 330 人ちょっとに落ち着きます。継続率 60% のとき(最終的に約 250 人)よりも大きく増えるイメージがあるはずです。
数式で見ると、I = 100、R = 0.70
S = 100 / (1 - 0.70) ≈ 333.33
パターンE: 継続率 70%、毎月の新規加入 200 人
継続率が 70% に加えて、新規加入を倍の 200 人にすると、さらに勢いよく増えていきます。
1か月目: 0 + 200 = 200 人
2か月目: 200 人×70%(140 人)+ 200 人 = 340 人
3か月目: 340 人×70%(238 人)+ 200 人 = 438 人
…安定期には 700 人前後という、かなり大きな数字になってきます。
数式でも、I = 200、R = 0.70 なら
S = 200 / (1 - 0.70) = 200 / 0.30 ≈ 666.7
前後のブレを考えるとおおよそ 700 人弱、とイメージするとわかりやすいですね。
継続率が高いほど、溜まっていく“ベース”が大きい
見てきたように、継続率を上げることが非常に大きなインパクトを持ちます。新規加入がそこまで多くなくても、継続率が高ければ高いほど、辞めずに残り続ける人が増え、“徐々に積み上がっていく”というイメージです。
一方で、新規加入が多いフェーズだと、多少継続率が低くても、短期的には勢いよく数字が伸びる場合があります。ただし、ある程度の水準に到達した後は「継続率が低い」ほど失う人数も増えるため、長期的にはなかなか数が安定しないという面もあります。
まとめ
継続率が上がると、想像以上に数字は伸びやすい
ある程度のところで “頭打ち” に見えても、継続率を上げられれば、思わぬブレイクスルーが期待できます。新規流入のパワーも侮れない
継続率が同じでも、毎月の新規加入数を倍にすれば、最終的に安定する会員数も倍近くなるのは明らか。施策や広告費などのコストとの兼ね合いで戦略を考えるのがカギです。最終的には「継続率 × 新規流入」のバランスが大切
どちらかに偏りすぎると、短期的には良い数字になっても、すぐに落ちてしまったり伸び悩んだりしがち。長期視点で安定した拡大を目指すなら、両輪をうまくまわしていくことが重要になります。
そして、どうしても数式を使わないとイメージしづらい場合は、安定状態として
S = I / (1 - R)
という公式を押さえておくと、ざっくりどの辺りまで会員数が積み上がりそうかを判断しやすいでしょう。
「毎月何人入ってくるか」「どのくらいの人が翌月も残るか」の2つさえ把握すれば、大まかな見通しがつきやすくなります。ぜひ参考にしてみてください。
初月のペースの延長線上で伸びていくというわけではないですね。
継続率をどう上げていくか、ここをもう少し科学してみたいと思いました。
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