臆病がゆえに、

写真を撮ることが好きだ。
とは言っても、一眼レフカメラとかミラーレスカメラとか、そういう本格的なカメラは持っていない。
いつも持ち歩いているスマートフォンで、何気ない日常を切り取るのが好きなのだ。

ただただありふれたその一瞬は、当たり前のようで、もう二度と見られない光景。
いくら同じ条件が揃おうと、全く同じ光景になることはなくて。
わたしはその何気ない瞬間が、どうしようもないほど愛おしい。
だからその一瞬を残しておこうと、急いでもがいた上に撮る行為が"写真"。
言ってしまえば、ただそれだけである。

手持ちのスマホを目の前にかざして、パシャリ。
時には内カメラで、時にはバレないようにこっそり、時には音声も残る動画で。
そんなことばかりしているから後でカメラロールを見返すと「この写真なんだっけ？」ってなるのだけど、その時間ですらも愛おしくて笑えてくる。

だって、少しは目に見える思い出が欲しいじゃない？
もちろん、一緒に過ごした形に残らない時間がとっても大切なのはわかってる。
それでも、写真という形を通して蘇りやすくなる記憶だってあると思うから。
楽しい記憶にばかり縋って生きてきたわたしには、そんな何気ない思い出の欠片が心の拠り所だった。
今はもう思い出に頼らなくても生きていけるようになったけど、でもやっぱりたまには浸りたくなる日もあるの。

だから今日も変わらず、好きな人たちと過ごす日常にカメラを向ける。
これでまた、いつでも今日という一日を思い出せるように。