映画『母性』の感想
湊かなえの小説が原作の『母性』の映画を観てきた。
湊かなえが、「この作品を書き上げたら、作家をやめてもいい」という覚悟で書いた作品の映像化。
湊かなえは普通にファンなので、母性は小説で二度読了済み。
小説特有の叙述トリックありありなので、映像化は不可能なのでは…と言う懸念はあった。
映画を観た感想(まずはネタバレなし)としては、
まあ完全に映像化はムリだよね そりゃそうだ
でもその中でここまでやってくれたら映画として100点満点です!!!
って感じ。
素晴らしかった。
役者陣がすごい。演技上手いなーって思うことすらなく、戸田恵梨香だとか永野芽郁だとか忘れて、母と娘として観ていた。
一流の詐欺師は騙されたことにすら気づかせないと言うが、一流の役者は演技だということすら気づかせないのかもしれない。
父親役の人も大地真央さんも素晴らしかった。
大地真央さん綺麗で可愛くて、優しさや柔らかさを完璧に表現してくれた。
田所母の高畑淳子さんもこれ以上ないくらいハマっていた。
全体の流れは小説と同じく、
母の証言
娘の証言
その後はふわっとどっちとも取れる感じで進んでいきます。
ところで原作を読んだ人は、
高校教師パートどうやったの?
と気になってると思う。
そこは残念、普通に誰と誰が喋ってるかわかるようになっていた。
そこでの「ああああこの教師って!!!!」というカタルシスは得られない。
これはもう仕方ない。
(ただ映画だけ観た人はニュースになっている事件をどう受け止めたのだろう?)
まあとにかく面白いので、母親との関係にトラウマを抱えていて映画を観たら具合が悪くなりそうな人以外には薦めたい。
私は芥川が好きなのだが、『藪の中』を彷彿とさせる作品なので、藪の中好きな方は小説読むor映画みてほしいなー。語りたい。
ここからは小説映画ともにネタバレあり。
まず母パートの「母と私が違う感想を抱くなどあってはならないのです」という作中きってのイカレワードは映像で観せるとかじゃなくて言葉にしてほしかったので、戸田恵梨香が神父様に語りかけるという形でこのセリフを言ってくれた時点で心の中でガッツポーズ。
語り始めてすぐに「この人やべーぞ」と思うのに誰もつっこまない狂気は開始五分で感じられた。最高だ!!
母は戸田恵梨香しか考えられない。
ただ恐ろしいことに映画はだいぶマイルドだった。
母と娘が味わって地獄はあんなもんじゃない。
映画にヒデキ出てこなかったし。つまり第二子のあれこれはまるっとカット。
薬の詐欺もカット。
母(ルミ子=戸田恵梨香)の母(大地真央)の死に際は舌を噛むからハサミで首の辺りを刺すに変更。
いいと思う。
ただおばあちゃんと寝ると足を絡ませるくだりは欲しかった。
父親の不倫はあったけど失踪はなかったことに。
りっちゃんは駆け落ち相手と上手くいって一緒にたこ焼き屋やってるし。
もっと地獄だろーが。
そんなもっと地獄が見たい物好きな同志は小説を読んでほしい。
娘は「永野芽郁ちゃんか〜、可愛すぎる子だから、娘の気が強いけど脆い感じ出せるかな?」などと思っていたが杞憂もいいところだった。
母に愛されたい、母の愛だけを求めている、でも、いや、だからこそ気丈に振る舞う感じを完璧に演じてくれた。
ボコボコ殴られて耐える表情すごかった。
母に首を絞められたあとの行動を思うともう序盤から泣けてきてマスクの中グチャグチャだった。
さやか、と初めて呼ばれるのは原作と同じく首を吊ったあと。
この子は自分の名前を忘れるくらい名前を呼ばれてこなかったのだと思うともう…
映画だけの人はこの首吊り自殺未遂をニュースの事件だと思って終わりかな?特に疑問を抱かないかも。
原作を読んだ者の感想としてはあれは娘とは関係ないどこかの誰かです。
それを高校教師になった娘が気にかけてるんです。
リルケの詩集も映画では空気だった。
仕方ないけどもうちょいリルケ成分欲しかったなぁ。
映画に大感謝しているがあえて文句つけるならそこ。逆にそこくらいしか文句のつけどころがない。
また気が向いたら追記すると思うけどここらへんで。
余談だがすずめの戸締りにお客さん集中していたせいか、公開二日目に行ったのに客は五組くらいで閑散としていた。
もったいない。。こんなにいい映画なのに。。
似た例で辻村深月の『朝が来る』も楽しみにしていたのだが、鬼滅と被ってしまい、まず最寄りの映画館で上映すらされてなかった。
ひとつ遠くの映画館でも一日二回ほどの上映で、そこまでがんばれなくて結局アマプラで観た。
でもまあそれはそれで、すずめの戸締りが話題になってる中母性観にきた仲間感が生まれるので悪くない。
拙い感想を読んでくださりありがとうございました。
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