社会学という愛について

今日は、社会学について書いてみようと思う。

私は、大学時代に社会学(ゼミは理論社会学)を専攻していた。「学んでいた」と言える程、真面目な学生ではなかったけれど、「かじっていた」というには、いやいやもうちょっと真剣に授業受けてたよ!と思うので、控えめに「嗜んでいた」と言わせてもらおうかな(学生のくせに嗜むとはどないやねん)。

「社会学って何勉強するの?」という質問は何度もされたことがある。そりゃそうだ。法学部では法律を勉強するのだろうし、経済学部では経済のことを勉強するのだろう。じゃあ、社会を勉強するって何??そう思う気持ちは、よく分かる。私自身、高校のときに、なんとなく「ニュースを見るのが好きだから」という漠然とした理由で、社会学部を志望した。

大学受験を終えて、同じ大学の社会学部と国際系の学部の2つの学部に合格した。英語の受験勉強を見てくれていた高校時代の恩師は「社会学って学んで結局どうするの?って思うし、器用貧乏って感じがするから、僕は国際をオススメするね」と言った。外国語大学を卒業して、英語の教師になった先生からすると、当然の意見だったと思う。

本当に良くしてくれた恩師のアドバイスだったので迷いはあったが、国際系の学部は学費が高かったこともあり(確か、留学が必修だったと思う)、進路選択の当初から漠然と志望していた社会学部に進学した。

社会学を嗜んだ結果(だから嗜むってどないやねん)、私は、社会学ってすごく愛のある学問だと思っている。大学を卒業して、働くようになって6年が経つけれど、社会学という愛に守られている感覚があるのだ。

社会学の愛って何だ?と思われると思う。

(ここからは、社会学を嗜んだだけの私が話す個人的な見解なので、とても恐縮しながら、書いています。)

そもそも社会学って、平たく言えば、ある事象等を通して、その社会的背景や社会的文脈、社会の変遷等を紐解いていく学問だと思っている。この「ある事象」というのは、色んなものが当てはまる。

例えば、宗教社会学。宗教社会学というと、何か怪しいことでも学ぶのか?と思う人もいるかもしれないし(いやいや、おらんやろ←いやいや、おるかもしらんやろ)、私は無宗教だから関係ないと思う人もいるかもしれないけれど、これが最強に面白い授業だった。それはもう、毎週欠かさず見るドラマを楽しみに待つのと同じように、宗教社会学の講義を毎週心待ちにしていたくらいだった。

宗教社会学は、どのような宗教があるかや、ある宗教がどのような信仰を持つのかを学ぶことが目的の学問(宗教学)ではない。宗教を通して、その社会的背景・文脈・変遷等を考察するのだ。

特定の宗教を信仰しない人が増えた一方で、パワースポットとか聖地巡礼とか「いわゆる宗教」とまではいかない、「宗教の周辺的なもの」に対する関心が強まっていること。お墓について、一般的にイメージされる「先祖代々のお墓」とは異なる新しいスタイルのもの(樹木葬等)が普及していること。このような宗教の切り口から、社会がどのようなものであるかを考察する。

学生時代に、とある先生は「社会学はクールな学問だ」と言われるという話をしてくれた。というのも、例えば、福祉学は実践的な介入を試みる学問であるのに対して、社会学は俯瞰・考察に留まることが多い学問だからだ。でも、クールだからこそ、偏らない提言ができるのではないか、という話をしてくださったように記憶している。これこそが、社会学の愛なんだと私は思っている。

少し話は飛んでしまうが、卒業論文のテーマを決めるとき、ゼミの先生がくれたアドバイスは、社会学という愛の象徴だったと思う。「あなたは、〇〇業界(私が就職した業界)の改革の中に入り、その中に入れば、その物事の本質なんて考えられなくなってしまうかもしれない。だからこそ、卒業論文では、その物事の本質を考える原理的な問いを立てなさい」というものだ。

先生がくれたこのアドバイスは偉大だった。就職して、いわゆる改革が叫ばれる業界の中に入ると、その改革が当然のものとして働くこととなる。それが、ときに苦しさを伴ったりもするのだけれど。社会学は、その苦しさと正面からぶつかるのではなく、その苦しさから抜け出して、その場所を俯瞰してみたり、自分自身を社会的文脈の中で捉えなおす視点を与えてくれたからだ。

タイトルの「社会学という愛について」は、そんな大袈裟な!という人もあるかもしれないが、私にとって誇張はない。クールな学問でありながら、愛のある学問だ。愛といえば、隣人愛とか家族愛とか人それぞれ色んな愛を思い浮かべると思う。そのなかの一つに、社会学、という愛も存在しうると私は思っている。

NHKの番組「100分de名著」で12月はブルデューのディスタンクシオンが取り上げられた。久しぶりに社会学に触れたく、テキストを購入したけれど、社会学って、やっぱり愛だよな、と思ったので、今回のnoteを書くに至った。

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