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目指せ!ES#001:センサとアクチュエータ
組込みシステムは
周辺環境に影響を与える/受けるシステム
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組込み(エンベデッド)システムが,その他の情報システムと大きく異なる点のひとつとして「(多くの場合)組込みシステムは周辺環境に影響を与える/受けるシステムである」という事が挙げられます.
例えば,わかりやすい例として,エアコンについて考えてみましょう.
エアコンは暑いときには空気を冷やし,寒いときには空気を暖めることで人間の居住空間を快適に保つシステムです.すなわちエアコンは,空気を冷やし/暖める という形で,周辺環境に影響を与えるシステムです.
その一方で,ただひたすら空気を冷やし続けてしまえば気温が下がりすぎてしまい,快適な空間とは言えなくなってしまいます.居住空間を快適に〈保つ〉ためには,現在の室温を計測しながら適温を保つ必要があります.すなわちエアコンは,周辺環境(室温)によって動作が影響を受けるシステムです.
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組込みシステムが周辺環境に影響を与える/受けるために必要なもの
ただコンピュータ(CPUやメモリ)が計算処理をするだけでは,周辺環境に対して影響を与えることも受けることもほとんどありません※.
そのため組込みシステムでは,積極的に周辺環境に影響を与える/受けるための部品・デバイスを使用します.その中で特に重要なキーワードが「センサ」と「アクチュエータ」になります.
※厳密にいえば,計算負荷に応じてCPUが加熱して周囲の空気をわずかに暖めることはありますし,宇宙から飛来した自然放射線によってメモリの中身が書き換わって動作に影響が出る可能性もゼロではありませんが,多くの場合は無視できます.
周辺環境から積極的に影響を受けるための部品:センサ
周辺環境(温度,湿度,明るさ,色,音,磁力,圧力,速度・加速度,距離,回転数・角度…)の影響を受け,電気信号(電圧・電流・抵抗値・デジタル信号等)として出力する部品を総称して「センサ」といいます.
ただし出力が電気信号でない場合はセンサとはいいません.たとえば水槽の水位を測るために水に浮くボール(フロート)を設置することがありますが,フロートだけでは水面の高さによってフロートの位置が変わるだけ(=電気信号ではない)のでセンサとはいいません.しかしフロートの根元にアームの回転角度を測るセンサを取り付けた場合,全体をひっくるめて「水位センサ(モジュール)」と呼ぶことはあり得ます.
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センサは,検出する情報や検出方式に応じて数えきれないほどの種類が存在します.全て一度に覚えようとすると大変ですが,主要なものから順番に理解をしていけばよいでしょう.
代表的なセンサの例
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温度
サーミスタ
熱電対
抵抗測温体
湿度
湿度センサ
明るさ,色
フォトダイオード
CdS
イメージセンサ(CCDカメラ/CMOSカメラ)
音
ダイナミックマイクロホン
コンデンサマイクロホン
磁力
リードスイッチ
ホール素子
圧力
歪みゲージ
ロードセル
速度・加速度
MEMS加速度センサ
レーザドップラ
距離
超音波距離センサ
レーザ距離センサ
回転数・角度
ロータリエンコーダ
ポテンショメータ
周辺環境へ積極的に影響を与えるための部品:アクチュエータ
アクチュエータはセンサとは逆に,電気信号(通常は電圧および電流)を受けとって「運動エネルギー」に変換し,周辺環境へ影響を与えます.
アクチュエータは「運動エネルギー」を出力するものに限ることに注意してください.
代表的なアクチュエータの例
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回転運動
モータ
DC(直流)モータ
AC(交流)モータ
ステッピングモータ
サーボモータ
直線運動
ソレノイド
リニアモータ
その他周辺環境へ積極的に影響を与えるための部品
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熱エネルギー(暖める・冷やす)や光エネルギー(光る)を出力する部品はアクチュエータとはいいません.またスピーカは電気信号に従ってコーン紙を振動させ(≒運動させ),その振動を空気に伝えて音を放ちますが,運動エネルギー自体は微小なものであり,最終的に目的としているのは運動そのものではなく「音(=空気振動)」なので,これも通常はアクチュエータとはいいません.
熱エネルギー(※)
電熱線(ニクロム線)
ペルチェ素子
光エネルギー
電球
LED(発光ダイオード)
磁力
電磁石
音
(マグネティック)スピーカ
圧電スピーカ
※暖めるとか冷やす機械として真っ先に思いつくエアコンや冷蔵庫は,コンプレッサ(圧縮機)をモータで回して冷媒ガスを高圧にした後,そのガスを一気に低圧にすることで空気を冷やしますので,制御マイコン側から見るとモータに見えます.
まとめ
組込み(エンベデッド)システムがその他の情報システムと大きく異なる点のひとつとして「(多くの場合)組込みシステムは周辺環境に影響を与える/受けるシステムである」という点があります.
周辺環境から積極的に影響を受ける,すなわち周囲の状況を感じ取るために使われる部品を総称して「センサ」といいます.
逆に周辺環境へ積極的に影響を与えるための部品も数多く存在します.特に「運動エネルギー」の形で出力する部品を「アクチュエータ」といいます.
例えばエアコンの場合,室温(温度)センサを使用して室内空気の温度をチェックしながら,適温となるようにアクチュエータとしてコンプレッサ(≒モータ)を動かして空気を冷やしたり暖めたりします.
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執筆者
N.Y.City(山口直彦)
工学院大学学生職員、組み込みエンジニア、専門学校HAL東京(先端ロボット開発学科)教員を経て、現在東京国際工科専門職大学(情報工学科)助手。プログラムや電子回路、産業用ロボット教育等に従事。その他、音楽情報科学研究、文筆業、ラノベ研究や発達障害者支援、写真等も。
主要著書
『コンピュータの動くしくみ(電子書籍再刊)』(秀和システム,2019年)
『小説の生存戦略 ライトノベル・メディア・ジェンダー』(青弓社,2020年)
Web連載「イメージでしっかりつかむ信号処理」(APS-WEB,2023~)
より詳細なプロフィールはWeb(N.Y.Cityのまちかど)へ。