志穂 /ピル事情 5
私は、志穂、41歳、
カオリとは、5年ぐらいの付き合い、共通の友人の紹介で知り合った。7年前に、務めていた会社がNYに新しく支店を出し、その際に引っ越して来た。
最初の1年10ヶ月は、東京にいる彼と遠距離をしていた、1年が過ぎた頃から、なんとなく疎遠になっていき、私も違う環境の生活に少し慣れてきて、彼も、新しい相手が出来たようで、直接会う事も無く別れた。今の所、彼が、結婚したとは聞いていないし、私もまだしていない、
彼と別れた後、しばらくして、仕事関係で出会った、中国系アメリカ人のジョンと2年3ヶ月ほどお付き合いしていた、
彼のご両親は40年ほど前にアメリカに来て、一代で築いた邸宅をニュージャージーに持ち、ニュージャージーにある、アトランティックシティという、ラスベガスを小さくした様なカジノへ、週末になると、よく連れて行ってくれた。中国系の方々は、ギャンブルが好きで、 彼の従兄弟の結婚式の2次会や家族の集まりでも、親戚同士で夢中にカードをしている光景を、何もする事がない私は、しばしば後ろから眺めていた、毎年2月に盛大に行われるチャイニーズニューイヤー(旧正月)も、参加する事のなくなった今では、少し懐かしい。、
ジョンとも別れ、1年とすこし経ち、
ある日、ノマドホテルのバーで、ベンと知り合った、
私はあまりお酒が飲めないので、自分から誘う事もあまりしないけど、その日は友人が、約4年お付き合いした彼と別れ、自殺したいぐらいと言うほどの傷心ぶりだったので、駆け足で、待ち合わせのバーに向かった、
友人はバーで、私がロゼワインを一杯飲んでる間にも、もうグラスの数が数えきれないくらいのシャンパンを、水の様に飲んでいて、ふと気がつくと、耳まで赤くなった彼女はベンの友達と話しをしていた。
少しすると、友人は突然帰ると言いだし、さっきまで、あんなに仲良く話しをしていたベンの友達にも急に冷たくなってしまった、
ベンに、私の友人が酔って、あなたの友達に突然冷たい態度をとっているけれど、傷心中だから、ごめんなさいね、と伝えると。
ベンは、僕も、2年間遠距離恋愛をしていた彼女が住むニュージャージーに、最近ボストンから、去年越して来たんだけど、4ヶ月前に別れてしまって、君の友人の傷心がとてもわかるし、僕の友達もすごく酔ってるから気にしないで大丈夫だよ、と言ってくれた、
わりとそんな形の自然な流れで、ベンとは知り合い、デートはスタートした。
その後、週末に1度のペースで、会う様になり、お医者さんの彼は、勤め先のクリニックも紹介してくれて、デートの度に話しも盛り上がり、よくお互いの家族の話しや政治の話しをした、
彼は、カオリがしばしば口にする、ずっと遊んでいたいニューヨーカー男性ではないし、読書が好きな男性が好きな私は、沢山の本が家にあって、インテリな彼に惹かれていった。
3ヶ月が過ぎた頃、(これが、カオリがよく言っている魔の3ヶ月らしい、)一つの問題が生じ始めた。
ベンがある日、君とちゃんと付きあいたい、だから、、、、ピル(バースコントロール)を飲んで欲しいと言うのだ。付き合うまでも時間のかかるニューヨーク、嬉しいのか、悲しいのか、
私は本当は、今すぐにでも子供が欲しいと思っているし、39歳のベンは、2人の甥っ子達をとても大切にしていて、当然、子供が欲しい物だと仮定していた、ショック、
ちゃんと付き合う?、でも、子供は不用意には欲しくない、か、だいぶ彼の事も好きになってしまった時にこんな事言われても.....
アメリカ人の女性達にとってピルを飲む事は一般常識となっているみたいだけど、
でも、私の中では全く納得がいっていなかった。私は、自分の体の自然な流れを変えたくもないし、ピルを飲むということは、毎日同じ時間に服用しなければならない、しかも、私の年齢でピルを飲むなんて、全く体にいい事ではない、でも彼が好きだ。どうしよう。
ピル バースコントロール 男性に飲んで欲しい 言われたら で検索して、ヤフー知恵袋をのぞいたりもしたけど、心ない男性達が、参考にならない答えを書いていて、余計傷ついた。
日本人とアメリカ人の女友達に、あなたならどうする?と相談すると、
1、私は、以前、ピルを飲んでいた、けれど、副作用で気分が悪くなって辞めて現在は服用していない、私はもう一生飲むつもりはないけど、志穂の彼が、付き合いたいって言ってるのだから、これからピル飲むつもりよ、って言って、そのまま付き合って、様子をみたほうがいいんじゃない。(日本人 女性 37歳 アメリカ在住暦18年)
2、私は、今までピルを飲んだ事がないけど、今の彼に同棲する前に飲んで欲しいと言われて考えている、でも、婦人科で話しを聞きに言ったら、生理痛がひどい人には和らぐし、肌も綺麗になり、出産したい時の為にもいいらしいよ。私はそれでここのところ、禁煙もしてるし。(日本人 女性 35歳 アメリカ在住歴 8年)
3、わたしは、昔飲んでたけど、体に合わなくて、太ってしまったので辞めたの。私だとしたら、自分が飲みたいのなら飲むけど、彼が飲んで欲しいからとっていう理由では始めないかな、コンドーム買うのケチってない?その男 笑 男性が女性の体についてコントロールする権利はないよね、ちゃんと志穂の事考えてるの?わたしもかれしほしー。(アメリカ人女性 32歳)
4、私は、昔1ヶ月ぐらい飲んでいたけど、飲んでいる期間中、気分が妊娠している気分になっていて、その後やめたの、でもあなたが今、子供がすぐにでも欲しいと思ってるのなら、生物化学的にも妊娠する為に体にとって良くないし、そう言う事言ってくるって男は、結婚も妊娠も決断するのに時間がかかる人で、将来的に考えると、上手く良いかなかった時に、傷つくのはあなたで、時間のムダになるよ。(アメリカ人女性 38歳)
たしかに、ベンのその言葉から、私に対する思いやりを感じる事はできない。お医者さんで、ピルの副作用の事も他の男性より熟知しているはずなのに。
別れるべきなのかな...
けれど、あんなに話しやすくて、気が合う人とすぐに、また、新しく出会うことも難しい。
カオリ達の様に、デーティングサイトで新しい男性達と会う勇気もない。
70年ぶりのスーパームーンも見逃してしまったし。
なんでこうもうまくいかないのかしら、、、女って悩み深い。
*物語中に掲載されたお店
The NoMad Hotel (バー) 1170 Broadway, New York, NY 10001
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