【美味しいはたのしい でも切ない@マレーシア】〜マレーシア編〜
〜マレーシアで〜
とある日本料理店のシェフとして、
奮闘する日々。
そんな中で、
洗い場で一生懸命汗を流す若者がいました。
私が赴任後、お店に行列ができはじめ、
ようやく少し軌道に…
でも、私の手が追い付かない汗。
あるとき、その若者が、
仕込みを手伝わせてほしい
とのこと。
彼は、母国ミャンマーにいる
家族に給料のほとんどを仕送りしていて、
妹の学校資金が必要とのことで、
もっと働きたいとのことでした。
器用な子だったので、
仕込みをやってもらうことに。
魚を試しにさばいてもらうと、
私より上手じゃん笑
よくよく聞いたら、
地元の川で魚をとって、
自分たちでさばいていたそうで…
恐れ入ります…。
それから、毎日、
朝から仕込みに入る私達。
すぐ近くにある中華系の屋台で
フォーを買って、朝ごはんをいっしょにたべながら、
だしをひいて、魚をさばく。
かれは、あまりに色々と上手なので、
よくよく聞いたら、
お母さんが料理上手で、
かなり仕込まれたらしい。
夜に、お客様が、
美味しいね
って言ってくれると、
私たちはうれしかった。
料理に国籍や育ちなんか関係ない
美味しいものを作りたい
という気持ちなんだと思った。
筋がいいので、
カウンターキッチンにも入って、
オーダーもこなすスタッフに成長した。
私は、以前から
難民支援に関わりたかったので、
彼がこのように働いて、
少しでも自信を感じてくれることが
嬉しかった。
もっともっと、
育ててあげようと思った。
でも、ある時、
会社から通達が入った。
「日本人以外のスタッフはキッチンに立たせないように。」
よくよく理由を聞いたら、
とある日本人のお客様からのリクエストだそうで。
日本人の私より、
この若者は料理上手なのに。
美味しい料理食べたいと思わないのかな。
イメージに翻弄される世の中って怖い。
可能性のある若者が、
生まれた国が違うだけで、
ここまで可能性が断たれてしまうということが
同じ地球の人間として悔しかった。
同じ日本人として恥ずかしかった。
でも数年後、日本の飲食店も、
海外からのスタッフさんがいるからこそ
まわるようになっていた・・・。
いやいや、でも、このようなことが伝えたいのではなく、
仕込み中に話した
彼の言葉が
私は忘れられない。
私「将来の夢は?」
彼「夢?ってなに?とりあえず、家族みんなが元気に生きていければそれでいい。」
自分がどれだけ恵まれた環境で育ったのか、
それに対して感謝していたか。
彼夢ががみれる日々はいつくるのか、
と思い、
すごくすごく切なくなった。
同じ空間で同じ仕事をしてる。
でも、生きている景色があまりにも違いすぎて、
どう寄り添えるのか、
自問自答を繰り返すのだった。
このとき、なんかとにかく悔しかった。
自分の無力さに。