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ロトの紋章 ルナフレア問題について考えた①彼女は死ぬべきだったのか?

2024年にドラクエ3のHD2Dリメイクが出ると聞いて、ある漫画のキャラクターとの死別の記憶が私の脳裏をよぎった。

おおルナフレアよ!死んでしまうとはなにごとだ!

ロトの紋章3巻168ページ


「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」
1991年から1997年に月刊少年ガンガンで連載された、ドラクエ3の物語の100年後を描いたスピンオフメディアミックス作品だ。

ドラクエの漫画としてかなり良くできた作品だと思っている。(特に1から9巻までは)
改めて読み返すと全体的に69点という感じのだが、部分的には超名作だと思っている。

ちなみに私の採点基準として70点以上が人に勧められる作品である。つまり悲しいことにギリギリオススメ作品ではない。漫画としては「ダイの大冒険」を読んだ方がいいだろう。しかし私には色々な想いもあって「ロトの紋章」は大好きである。


とにかくちゃんとドラクエの設定を押さえて物語が展開されるので、ドラクエ入門的な要素もあるし、当時まだTVゲームとしては視覚的な表現力が乏しかったドラクエ世界の細部が説得力を持って描かれている。

ドラクエの攻略本のように、あの世界の魅力が藤原カムイ先生の緻密なビジュアルで表現されているので、ゲーム世界を補完するには貴重な作品だった。

90年代にドラクエ少年だった私には「ロトの紋章」はドラクエを楽しむ上でとても大事な漫画だった。

スーファミ版のドラクエ3が出た時は漫画に出てくるキャラクターの名前をつけて縛りプレイしたりもしたし、友達の家でドラクエをする時には友達がレベル上げしてくれているときに読んだり、カバーを外すとモンスターの絵が描かれているのでよく模写したものだ。

ドラクエをする上では攻略本と同じくらいの必須アイテムだった。

私が自分のお小遣いで漫画を集める最初の作品だったし、なんとか漫画が読めるか読めないかぐらいの頃に漫画を読む力をつけさせてくれた作品でもある。

私にとってこの作品は漫画原体験であり、自分の人生に影響を与えた漫画ランキングに入るぐらいの作品なのだが、

当時からどーしても納得できないことがあった。

それは登場キャラの一人「ルナフレア」の死である。

ロトの紋章1巻82ページ

主人公の勇者アルスの剣の師匠でもあり保護者。
というか母親の代わりのような存在で、城の騎士団長の一人娘であり戦士でもある彼女は、王子でもあるアルスが生まれたての頃に魔王軍の襲撃から命からがらアルスを助け出し、その後アルスらと仙人の里で身を隠しつつアルスを守り育ててくれる人物である。

ロトの紋章1巻61ページ

凄腕の戦士でありながら母性を感じさせる、すごくグッとくるキャラクターだった。
と言うか何かに目覚めさせたキャラだったかもしれない。

兄貴が3巻まで持っていたので、それで初めてロトの紋章を読み始めたのだが、なんと!3巻の最後にルナフレアは死んでしまう。

ロトの紋章3巻63ページ 

漫画読み始めということもあり、漫画の中でキャラクターが死ぬというのは自分には衝撃的すぎた。しかも、もしかしたらあとちょっとで助かったかもしれないのに死んでしまったのもすごくショックだった。

もう一度読み直したら生きているのでは?
と思い、まだ漫画に読み慣れていないながらも何度も1巻から3巻まで読み返したものである。

で、家にはずっと3巻までしかなったのだが、その頃は7歳ぐらいだったので、あまりにもものを知らなすぎて続きがあるという認識がなかった。

この漫画は3巻で完結しているものだと思っていたので、なんて悲しい話なんだ、、と思ったものである。

ロトの紋章4巻150と151ページ 

時がたち、小3ぐらいの頃に続きがあると知ることになるが、それもまた衝撃だった。4巻を読めば生き返るかもしれないと思いそれで集めるようになったのだが、4巻ではルナフレアは若干生き返るに留まった。

生き返る可能性を見出した私は引き続きをロトの紋章を集め続けたした。しかし11巻でルナフレアは生き返らないことを悟ったのである。

11巻ではジャガンに殺されてしまったアルスは、冥界でルナフレアと死んでいったアルスパーティのメンバーと再開する。

このままルナフレアたちとアルスは冥界で幸せに暮らしました、、、とはならず、なんとアルスだけ生き返らなければいけないハメになるのだ。


アケロンの川という三途の川みたいなところを渡ったら二度と生き返ることはないとのことなのだが、アルスは引き返すようにルナフレアたちに説得されてしまう。

そして、また魔王軍と戦う生活に戻ることへの葛藤があるものの、自分だけ生き返らなければいけないことにはなんの疑問も持たずアルスは生き返ってしまう。本当は生き返りたくないにも関わらずにだ。

主人公が同調圧力で蘇るという、なんとも日本人らしい復活を遂げるのである。

そしてこのまま自分だけ生き返えらなけばいけなかったことになんの疑問も持たずに話は進んでいくのである。世界樹を甦らせればルナフレアたちを生き返らすことはできるんじゃないか?そもそも世界樹の葉なんていうアイテムがこの世に存在するなら、ルナフレアが死んだ時になぜカダル様は教えてくれなかったのか?とは全く思わないのだ。

この辺は今だにめちゃツッコミたいところなのだが長くなったので割愛させていただく。

それから私のロトの紋章に対する興味は薄れたというか、結局全21巻あるうちの14巻までしか集めなかった。あとは立ち読みで済ますか友達の家のを読むという感じになってしまった。

そして最終巻である21巻でやっぱり生き返らないのかと絶望した。

なんでダイの大冒険のアバンは生きてるのにロトの紋章のルナフレアは生き返らんねんと思ってたが、

大人になった今、ルナフレアの死は主人公の行動動機を決定づける上で必要なのだということはわかるし、生き返らないから感動があるのだと思う。

だが、なぜかまだ納得できないでいる自分がいる。てなると30年ぐらい引きずっている(笑)

なのでドラクエ3のリメイクの発売の話を聞いた時に、ついロトの紋章を読み返してしまった。

ルナフレアの死は必要だったのだと確認するために、、、

久々に読み返すロトの紋章
あの頃の記憶が蘇ってくる。
いかん、やっぱり3巻は悲しい、、

うん、やっぱり死なないとドラマチックにならないよね。

しかし、大人になった私は気がついてしまった。


やっぱりルナフレアは死に場所を間違えたのでは??


正直言うと、ルナフレアを殺していいキャラとしてサーバインは中途半端だ。

とくに因縁があるわけでもないし、
すぐに死んでしまうからだ。

なので

ルナフレアは通り魔に刺されて、犯人は自殺しました。
みたいな感じになってしまっている。


アルスが強くなろうとか、立派な勇者になろうっていう行動動機に影響を与えているけど、

物語全体を見てみると、あまり効果的ではないように思う。

だからルナフレアの死は余計悲しい。
後の物語の面白さが、ルナフレアの死に値していない、、と思うからだ。

あそこで殺されることによって、グノン戦までは効果的に影響を与えていると思える。
前の記事でも書いたように、アルスが1人で魔王軍とた戦おうと決心するのは、ルナフレアの死があったからだ。


そしてグノン戦が終わると、なんかお話が消化試合をしているように感じてしまう。

11巻でアルスが復活してから、物語を動かすパワーみたいなのがないように思えるからだ。

ちなみに11巻まではイエス・キリストの物語を下敷きにしていると私は分析している。聖書のパワーが無くなった11巻以降は作品が急速につまらなくなってしまったように思う。

王者の剣を手に入れるためにジパングへという流れになるけど、子供の時にはワクワクしたが、大人になるとただ単に装備を整えようとしているだけで、王者の剣がないとどうなるの?と疑問を持ってしまうし。

絶対に手に入れなければいけない理由がないから、もうオルテガの剣でええやろって思ってしまう。要はいざという時にオメガルーラが使えればええわけで、ジャガンには2戦目で勝ってしまったし、もし王者の剣が必要ならジャガンからぶん取ればええ。

それにジャガンと戦う理由がない。ジャガンが異魔神側にいなきゃいけない理由がわからないし、ブラック企業に務めてるけど辞めるって言い出しにくいだけの人のようにも見える。

何よりアルスが大事なのは装備じゃないと話しだすもんだから、虚無を感じてしまうのだ。

ヤマタノオロチまではギリギリ楽しめるのだが、後の話がなんかめんどくさい感じしかしないというか、

ジャガンも何かようわからんキャラになったし、なんか急にタオが出てきて、全ての真相を話し出すけど、それもっと早く話してくれよとなったり、そんなにつえーならルナフレア助かったやろみたいになり、てかなんでギランとアッサラームで待機してたんだ?と、なんだかこの作品の崩壊を感じてしまうのだ。

最終決戦に行く流れは、なんかもうこのお話を畳みたい感じが1番伝わってきた。
キャラクターがお話に合わせて動いているだけのように見えてしまうところが多々ある(特にジャガン)

しかもラスボスの異魔神を倒してもルナフレアが生き返るわけでもなく、アルスにとってこの旅ってなんだったんだろうなとやり場のない想いを抱えてしまうのだ。

あと11巻のルナフレアも、なんか冷たいし、なんか違う感じがしたし、アルスが現世へ帰る理由もよくわからない。本当は嫌だけど我慢しますと言ってる感じしかしない。

生き返ってからのアルスはなんかこう、ロトの血に操られているだけの勇者ロボのように見えてしまう。

と、なんか愚痴っぽくなってしまったが、11巻以降も好きな描写自体は結構ある。
ドラクエ11にも輸入された王者の剣を作るくだりなんかは面白いと思うし、他にもお気に入りのシーンも割とある。

ロトの紋章11巻

そして11巻のこのルナフレアのメッセージだけには昔と変わらず心が動いた。

そう、、、、
あなたが大人になって恋をして
その人と結ばれて子供を育てて
そして歳をとって
いつかあなたが
あなたの世界を離れる時がきたら
その時にきっとまた会えるわ

ルナフレアのセリフ

このセリフとシーンがなぜかすごく切なくて、なぜか感動してしまうんだよね。

だってルナフレアは人生を勇者アルスに捧げて恋をすることも自分の子供を育てることことも、もっと言うとカーメン流の剣技をちゃんと伝授させないまま道半ば死んでしまったわけで、そんなルナフレアが死んでもなおアルスのことだけを想ったセリフがなんとも切なすぎる。

こんなセリフを言うぐらいなら冥界でアルスに対してもっと取るべき行動があったはず(おれは抱きしめて欲しかった)と思っているが、でもこのセリフだけはグッとくる。

初めて読んだ当時もすごく心に残っていて、やっぱもうこれで最終回でええわと思ってしまった。

SF小説『タイタンの幼女』のラスト

天にいるだれかさんは、おまえが気にいっているんだよ。

みたいな余韻を感じる。


で、改めて読んでみても全21巻もあるのに、11巻で終わりを感じるんだけど、じゃあ後の展開はどうやったら面白くなったのだろうと考えると、

サーバインではなくジャガンにルナフレアが殺されていれば、ロトの紋章はもっと面白くなったと思うのです。

つづく


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