ドラクエ史に残る薄命のヒロイン ルナフレアの魅力とその死の秘密②
続きです。
ロトの紋章のヒロイン、ルナフレアについて
『処女でありながら勇者を産み、育て、そして一生童貞にした女』
という視点で語っていますが、
今回はルナフレアの死に隠された秘密があると私が思った部分と、最後のメッセージの謎を中心に語っていきます。
前回の記事
《注意》 一応書いときますがネタバレありです。この記事を書くまで完全版と違いがあることを知らなかったので、旧単行本を元に語っています。
ルナフレアの死に隠された秘密
3巻でルナフレアはアルスを守るために通り魔みたいな敵キャラと1人戦いに望み、結果的に致命傷を負わされてしまう。
教会の施設で仲間達から必死の治療を受けるが、敵から喰らった技が反則すぎてアルスの必死の呼びかけも虚しく、ルナフレアは自らの死を悟る。
人生最後のお願いということで、アルスと共に礼拝堂でドラクエ世界の神ルビスにお祈りをささげるのだが、そこで息絶えてしまう。
そして問題なのがこのページ。まさに死んでしまった瞬間。
ファンなら涙なしでは見れないページになるのだが、本来ならドラクエでは生きかえる場所であるはずの教会で死ぬというのがまず衝撃だ。
なんで教会(礼拝堂)でアルスに抱きしめられながらルナフレアは死ななければいけなかったのだろう?
別にベッドで死なせてもよかったではないか。
ベッドでルビス様に祈ってもよかったのでは?
なんでわざわざ教会というロケーションを設定して、なんでタルキンという神官も画面に一緒にいなくてはいけなかったのか?
礼拝堂に行くことによって、ルナフレアのアルスに対する愛情の強さを表現できるというのもあるだろうし、
礼拝堂に行ったせいで、せっかく治療法が見つかったのに間に合わなかったという展開でもあるので、それ故に死んだことが余計悲しくなる。
だからより悲劇を演出するために礼拝堂まで向かう展開にしたのだろうけど、それだけが作り手の狙いではない気がする。
では作り手の別の狙いとはなんなのか?
教会で男が女を抱きしめている、、
つまり、、
これは結婚式ではないだろうか、、、?
アルスはルナフレアと、ルナフレアの死を持ってして二人は永遠に繋がったという意味の絵だと思う。
少年漫画でここまでやるのか!?
と、思わず唸りたくなる。
いや、お前やっぱり妄想しすぎと言われそうだが、そうとしか見えなくないだろうか?作者はそこまで狙って描いているようにしか私には見えない。
ベッドで亡くなるなら親子の関係までとしか見えないが、やはり教会で抱きしめちゃったら男女が結ばれた関係に見えてしまう。
作り手は主人公のこの世で最も大切な存在を喪失させることによって、勇者というキャラクターを作り上げようとしたのだと思うが、これはかなり大成功してると思う。
何故なら究極の痛みを知らなければ、この世のあらゆる他人の痛みを理解することはできないのだ。アルスにあってライバルのジャガンにないものが描けるはずなのである。
この物語のアルスの勇者らしい活躍に読者が納得できるのは、アルスのこの喪失体験あってこそだ。
だから結婚したいぐらい大事な存在をアルスは失ったという描き方をしたのだろうと思う。
この死の描き方があまりにも危うく美しすぎたがために、ルナフレアは私には一生忘れることが出来ないキャラになってしまった。
ちなみにこの喪失に対しての癒しが充分にないのがこの漫画の問題点だと思っている。
ルナフレア最後のメッセージの謎
で、11巻の話になるのだが。臨死体験したアルスが冥界から去る際、『また会えるよね?』という質問に対して、ルナフレアは謎の祝福のメッセージを送る、、
このセリフが謎に感動してしまう。なぜか魔王軍倒したこと前提で送られるこの言葉。つまり魔王軍を倒してもルナフレアは生き返らないということを暗示させるのがまず悲しい。
なんでこんなこと話すのか正直謎なのだが、なぜ恋愛して子供を育てることを促す話をするのだ?
なぜ必ずではなく『きっと』なのか?
人生を全うすることを祝福しているようにも見えるが、結婚して子供を育てることだけが人生ではないだろう?
たぶん、また会えるわと言いながら、もう私のことは忘れて前に進みなさいと言っているように読める。
アルスの自分に対する想いが理解できているが故に、自分のことは忘れてちゃんとした結婚をしなさいと言っているのかもしれない。
しかし旧単行本の最終話では、仲間は誰かと結婚してるのにアルスだけは誰とも何かそれらしい描写はなく1人孤独に旅をしているかのような描き方しかされていないのだ。
つまり勇者はずっと童貞なのである。
だからアルスは死者と添い遂げる気でいるようにしか見えなくなってしまう。まぁ、いずれ王位を継げば誰かと結婚するのだろうが、、
でもアルスは誰とも恋愛する気はないと思うんだよね。
例えば「宿題をしなさい!!」と叱られるのは子供が宿題をする気がないから言われるわけで、
「恋愛をしなさい」と言われるということは、やはりアルスは恋愛する気がないということだろう。
で、『きっと』だから、もしかするとたぶんアルスはルナフレアに二度と会うことはないんだろうなと思うと、
ものすごく切ない、、
で、こんなセリフをルナフレアに言わせちゃうもんだから、あとの話ではアルスが回想する場面以外は彼女は全く出てこなくなる。
出てきたとしても、ルナフレアとそっくりな船の船首像としてしか出てこない。
11巻でいいセリフ言わせちゃったから最終回で生き返らなかったと思うとなんとも言えない。
今だに最終回のアルスの後ろ姿が不憫すぎる。
最後のコマはアルスとルナフレアらしき人物の後ろ姿で良かったのではないか?
完全版ではティーエをルビス様に頼んで蘇らせるそうだが全く意味がわからない。
ドラクエ11とルナフレア
漫画を読む限りだとルナフレアに関してはロスするしかないのだが、
ルナフレアの遺伝子はドラクエ11において、マルティナとベロニカに引き継がれたように思う。
マルティナに関しては物語の冒頭で、魔物に襲われる城から赤子の主人公を救助するというくだりはルナフレアそのものだし、主人公を守ってくれるお姉さんなキャラなのもルナフレア風味がある。
ベロニカに関しては、仲間を守るためにメインキャラなのに死んでしまうという点で同じだ。
新たな悲劇を生んでいる感はあるが、ルナフレア的な要素は本家のドラクエに生かされてると思うし、ドラクエ11には他のロトの紋章の要素も多く取り入れられいると思う。
ロトの紋章と私
初めてロトの紋章を読んだころ、その時はなんと幼稚園ぐらいだったのだが、歳の離れた兄貴が3巻まで持ってたのでそれがきっかけで読み始めた。
3巻の終わりにルナフレアは死んでしまうので、あまりにもショックだった。もう一回読めば結末が変わると思い、何度も書いてあることがわからないなりに読み返したものである。
で、今なら処女受胎だの究極の恋人だのこれは結婚式に違いないぃと言い出したりするようになるまで読めてしまうのだが、
3巻までを何度も読みすぎたせいか、私にとってロトの紋章というのは、勇者として生きなければいけない主人公が究極の嫁を失い、魔王軍に復讐するお話という認識なのである。
改めて読んでみても、
あまりにも悲しいし、
2人の描かれ方はあまりにも危うい、、
が、故に美しすぎる
で、美しすぎるが故にさらに悲しい、、、
やはりルナフレアが死ぬ場面は構成も絵も神がかってるなと思った。
まぁ、そんなものを幼稚園の時に見てしまった私には一生のトラウマになってしまったようで、なかなかこれを超えるヒロインはおらんなという感じである。
ゲームでは嫁を選べるのに、漫画読んだら嫁を失うとは、、
まさにしんでしまうとはなにごとだ!という感じである。
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