瞬間小説『妄想力大戦』
西暦2021年。
インターネットの影響か、はたまた神の気まぐれか、妄想を現実化してしまう能力の持ち主【妄想力者】が世界各地にチラホラと出現するようになった。
著作権的にグレーゾーンなヒーローや怪獣たち、明らかに自重を支えきれない無茶なデザインの巨大ロボット、おびただしい数の2次元美少女たちに囲まれて鼻の下を伸ばすおびただしい数の男たち、その他ありとあらゆる「常識では存在しないはず」の者たちが世界中の街を闊歩しはじめた。
各国は、強力な妄想力者たちを秘密裏に集め、それぞれが自国に都合の良い妄想で世界を改変しようとした。「ああ言えば、こう言う。」という言葉があるが、もはや「ああ思えば、こう思う。」の世界大戦である。
妄想大国同士の世界改変に翻弄されてなるものかと、民間妄想力者の猛者たちもあらゆる妄想を膨らませ、世界を書き換えていく。
さらに、彼らにインスパイヤされ覚醒した数多の妄想力者たちも加わり、ありがちな妄想から斬新な妄想まで、放送できそうなものから放送禁止なものまで、妄想が妄想を膨らませ、時に上書きし合い、時に混ざり合い、どこまでも妄想は暴走していった。
もはや、過去にあった常識は、世界のどこにも残ってはいなかった。
そして、膨れ上がりエスカレートしていった妄想群はついに宇宙法則の限界に達し、処理が追いつかなくなった宇宙は強制再起動されようとしていた。
すなわち、138億年ぶりのビッグバンである。
神様「…という妄想をしてみたんだけど、どうかな?」
天使「いやいやいやいや、『どうかな?』じゃないですよ! 神様の妄想は本当に現実化しちゃうんですから、やめてください! って、ああ、もう世界が変わってきちゃったじゃないですかー。ほら、このnoteとかいうやつも、絶対ヤバイやつですって…」
<完>
☆表紙絵 by さとねこと さん → https://note.mu/satonekoto
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