Beautiful World の驚愕
公開終了から1ヶ月を経たずして、
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のAmzonプライム配信が始まった。早!
今までだって今回だって正直エヴァはいつも難しい。
一度では聞き取れない言葉も多いし、理解も追いつかない。
わからないところは巻き戻し、咀嚼しながらもう一回は観たいのだ。
さらに現在はサブスク配信が主流となり、
日本語音声に日本語字幕を付けられるから文字でも言葉を確認できる。
映画館にも観に行ったが、当初から配信開始も待つことにしていた。
その日を以って僕の26年間のエヴァが終わることは予め織込み済みだった。
・・・・・
10代後半の1995年10月、(今も仲の続く)友達が熱っぽく、
「なんか面白いの見つけたかもしれん」
と僕に言ってきた。
但しその様子には少し照れが混じっていて、理由はアニメだったからだ。
僕らは所謂オタクやアニメっ子ではなかった。
「○○○(僕のあだ名)にも観てみて欲しい」
そう言われた。
友達は偶然第1話を観てしまい、一発で引き込まれたらしい。
次週が2話目という時だった。
それから約6ヶ月、僕らはテレビ東京の水曜18時半を楽しみにすることとなり、
リアルタイムか予約録画で『新世紀エヴァンゲリオン』を観続けた。
・・・・・
溜まった録画はCMをカットして数話ずつビデオテープにまとめ、観直した。
待ちくたびれて忘れた頃にやってきた劇場版や新劇場版の公開時にも、
なんだかんだ欠かさず映画館へ足を運んだ。
深夜に再放送されれば観たし、配信されればなぜかまた観てしまった。
そうこうし、40代中盤で最後のエヴァンゲリオン作品を迎えたわけだ。
・・・・・
Amazonプライムでもう一度 “シン・エヴァ” を観た。
字幕を付け、誰に遠慮することなく思う存分巻き戻して再生した。
映画館では一瞬で通り過ぎたシーンたちを一時停止しては隅々まで観察した。
上映時間2時間35分を堪能するために4時間弱を費やしていた。
それでも感覚的にはあっという間で、
「あぁ、エヴァ楽しかったなー…」
なんて26年間の深い感慨まで含めてエンドロールに差し掛かった。
テーマ曲、宇多田ヒカルの『One Last Kiss』が流れる。
黒バックに止めどなく表れる白文字は作り込みの深さと苦労の証のようであり、
関係者の多さは1曲分の長さではとても賄いきれそうにない。
ギターの音色で自然につなぎ、2曲目へと入っていく。
「Beautiful world」
「Beautiful world」
新劇場版2作目“破”までのテーマでもあった『Beautiful World』の新Ver.だ。
シン・エヴァのみならず全新劇場版4作の総合ED曲になった記事を以前読んだ。
「もしも願い一つだけ叶うなら君の側で眠らせて」
「どんな場所でもいいよ」
日本語字幕はED曲の歌詞まで表示してくれる。
この文字群が脳や心に言葉の“ダイレクトエントリー”を試みてくる。
映画館で一度観ているはずなのに、あの時はさほど気に留めなかった。
恐らく初見のシン・エヴァ考察で頭がいっぱいだったからだろう。
「寝ても覚めても少年マンガ夢見てばっか」
「自分が好きじゃないの」
覚えている曲の歌詞が、今日は意味を伴って染み入る。
「何が欲しいかわからなくて」
「ただ欲しがってぬるい涙が頬を伝う」
「言いたい事なんかない ただもう一度会いたい」
あれ?
「言いたい事言えない 根性無しかもしれない」
「それでいいけど」
これって?
「もしも願い一つだけ叶うなら君の側で眠らせて」
「どんな場所でもいいよ」
「Beautiful world 迷わず君だけを見つめている」
碇ゲンドウの心の声だ!
ユイのいる世界こそ紛れもない Beautiful world だと言ってたんだ。
「Beautiful boy 自分の美しさまだ知らないの」
ユイもシンジの不完全さに純真さを見出し、美しいと母性で包み込む。
死しても尚、生前の愛を実感していたいという受け手の切な願望かもしれない。
そういう意味では、ゲンドウでも良い。
“破”の時まではシンジの話でシンジの歌くらいにしか思っていなかったが、
僕らはゲンドウがシンジの映し鏡のように脆かったことを観たばかりだ。
愛は愚かなまでに身勝手にもなってしまうが、
そこも純度の高い美しさゆえと捉える寛容さを投げ掛けたんだと思う。
これは恋愛であり、親子愛であり、隣人愛の歌だ。
愛ある世界は美しく、世界は愛があるからこそ美しいという話だ。
漠然とはわかっていたが、庵野秀明監督は26年もの時間を掛け、
壮大な世界観を作り、莫大な予算も使い、苦悩に苦悩を重ねてまで、
誰かが誰かを愛するという1つずつの神秘と、
愛というものが生み出すエネルギーの大きさを顕したかったんだと思う。
「It’s only love」
“シン・エヴァ”を観終わったら、歌詞と一緒にスッと入ってきた。
僕の中では物語の完結にそういう落としどころをつけて納得でき、充分満足だ。
ところで…。
拝啓 宇多田ヒカル様
あなたはこのお話をいつからどこまで理解していたのでしょうか。
『Beautiful World』は“シン・エヴァ”で、“全エヴァ”でした。
エンドロールの歌で鳥肌が立ったのは初めての経験でした。
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