002.糸のこと

糸の絡め方の授業が終わり、私は少しぐったりしていた。この世には無数の糸の絡め方があり、そのすべてを把握することを思うと、途方もない疲労感に襲われた。

しばらく糸のことから離れよう。

そう思って晩ごはんの支度を始めたが、エビのトマトソースにうどんを絡まながら、まだなお、うどんという糸に関与している自身を発見した。

糸はドロドロとした液体に絡むこともできる。糸も絡む対象も増えたことで、また暗い気持ちになった。トマトソースに絡むうどんをすすりながら、私は嘆いた。

2021年11月19日 21:16

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