053.ディセンション [I ヨウ素][丙辰]
俺は落ちていた。
どんどん血の底、
いや、地の底に落ちていった。
その墜落は、止められないんだ。
いや、止まる必要自体、感じなかったからね。
俺は最初、一人だった。
「俺」というのはたいてい、一人の人間のことを言うだろ?
アンタだってそうだと思う。
アンタが俺という時、いや、僕でも、私でもいいんだけど。
自分のことを指す時、たいてい、一人の自分のことを言うだろ?
でも、墜落して、どんどん落ちていって、
DownDownDownDownDownDownDownDown.....
そうしたら俺の中から、
たくさんの声が聞こえてきたんだ。
その声はどんどん増えていって、
どんどん大きくなって、
ものすごい数の体臭が、
いや、大衆が大騒ぎしている声になったんだ。
お祭り騒ぎをしてるんだよ。
血湧き肉躍る、お祭り騒ぎ。
ものすごいいる。
数えられないほど。
すごくすごくいっぱい。
たくさんの声が聞こえてくる。
なあ、これっておかしいだろ?
俺は最初、一人だったはずなんだ。
2022年1月27日 22:39
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