051.ケルベロスのソリ [Sb アンチモン][甲寅]
私は30匹の犬を飼っている。
犬は大好きだから、いくらいてもいい。でもあまり増やしても世話が追いつかないから、30匹が限度だ。彼らは大きな犬小屋で、共同生活をしている。みんないい犬だから、喧嘩もせずに仲良くやっているよ。
私は彼らのうち、その日にぴったりの犬を何匹か選んで、犬ゾリのメンバーにする。さすがに30匹を一度に連れて行くのは無理だ。
その日にぴったりの犬というのは、実にいいものだよ。犬たちもまた、その日にぴったり、ソリを引きたいと思っているのだから。私はその日にぴったりの犬が引く、その日にぴったりのソリに乗って、雪の中を走っていく。こんなに素晴らしいことはない。
私たちはいつの間にか、ケルベロスのソリと呼ばれるようになった。
まあ何と呼ばれたって構わないさ。
今日は湖にやってきた。湖面はすっかり凍っているが、最高の景色だ。そこで私はお湯を沸かし、温かいコーヒーを淹れる。犬たちはおやつの時間だ。
ここは、今日の日にぴったりの場所だ。
実に、世界は素晴らしいではないか。
2022年1月27日 02:11