【短い物語】 魔法のメガネ

なんかさ、

ふと思うんだけど、

魔法のメガネか何かで、

服の中が透けて見える、なんてことは、

たまに未来道具で想像しちゃうけど、

ほんとにできちゃったら、それはもちろん社会的に問題だから、

そんなメガネは発売されないだろうけど、

服の中、を飛び越えて、

相手の内臓が見れるようなメガネとか出てきちゃったりすると、

なんかそこまで問題にならなそうな気もしていて、

だって普段、自分がどんな内臓で、相手がどんな内臓か、

なんて気にもしてないから、

別に見られたところで、とか現段階では思うけど、

そうなったらそうなったで、

そういう価値観が生まれちゃったりして、

やっぱり内蔵だったとしてもすっぴんで見られるの恥ずかしい、

とか思うようになって、

内臓に化粧とかできるようになったりして、

かわいい〜とか言い合っちゃって、

それだけじゃなくて、

大きいとか小さいとか比べるようになったり、

おまえの肝臓しょぼいな、とか、肺汚いな、とか、

言われるようになったらやっぱり癪だから、

完全健康体のしっかりきれいな内臓を

擬似映像で見せるようになったりして、

そうすると健康診断とか行っても、そのまま見せたくないとかで、

ちょっと背伸びしたりするようになったりして、

いやでも、そんなことするとちゃんと診断できないからって、

あっちも技術は進化して、

化粧とか擬似映像とかを中和するメガネとか出来ちゃって、

そうこうしてると、

今度は心をまるごと見れるようなメガネとかができちゃって、

思ってることとか透けて見えるようになっちゃって、

相手に自分がどう思ってるか、見えるようになっちゃって、

おい、おまえ、そんなこと思ってたのかよ、

とか思われるとめんどくさいし、

なんかふと思ったこととか見えたら恥ずかしいでしょ、

ということで、

相手に、今こう思ってるよ、なんて定型文を、

毎回投影できるようにセットしたりして、

でも定型文だと、隠してることがまるわかりだから、

思ったことが常にいい感じに加工されるような、

こころの化粧機能なんかがついちゃったりして、

そんなことを想像するとさ、

なんか結局さ、

見なきゃいいよね、って、

会わなきゃいいよね、って

話さなきゃいいよね、って

そんな結論になっちゃいそうで、

嫌じゃない?


ねえ?


どう思う?


ねえ?



「え、おまえ、何言ってんの?」

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