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陰謀論の歴史(3):アトランティス

前回は旧約聖書関連の陰謀論や偽歴史などについて検証しましたが、今回はアトランティス伝説について検証したいと思います。

伝説上の大陸

アトランティスは古代ギリシャの哲学者プラトンの著書『ティマイオス』及び『クリティアス』の中に記述された伝説上の大陸ならびにそこに繫栄したとされる帝国のことで豊富な資源と強い軍事力を背景に大西洋を中心に地中海西部を含んだ広大な領土を支配していました。

ちなみに、アトランティスの王家はポセイドンの末裔であったが、人間が混じるにつれ堕落し、物質主義に走ってさらなる富と領土を求め、紀元前9400年ごろに地中海沿岸に侵略したものの、アテナイを中心とした連合軍に敗北した挙句、一昼夜にして海中に没したとされています。

新大陸へ

アトランティス伝説については以上であるが、中世までは主にプラトンの著作『テマイオス』と『クリアティアス』の記述内にとどまり、広く知られることはありませんでした。

しかし、1492年にコロンブスがアメリカに到達したのをきっかけに、ヨーロッパ人は新しい大陸や島々を探求し始めました。これによって、未知の大陸や失われた文明への関心が高まり、アトランティス伝説が再び脚光を浴びるようになったといえます。さらに、この当時の探検家たちはアトランティスのような未知の大陸や島や失われた文明を探し求める動機の一つとしてこの伝説に魅了されました。

アトランティス・ブーム

フランシス・ベーコンが1610年に『ニュー・アトランティス』を出版し、
アメリカをアトランティスの名残である説を紹介して普及させました。なお、『ニュー・アトランティス』の話は寓話であり、当時の地理の知識でも創作であることは明らかだが、真実と捉える人がいたみたいです。その後、1870年にフランスの作家であるジュール・ヴェヌスが『海底二万里』で海中に没したアトランティスの姿を描き、19世紀の読者にアトランティスへの関心を高めました。

そして、1892年にイグネイシャス・ドネリーが著書『アトランティス―大洪水前の世界』を発表し、一大ブームに至りました。この当時において、彼の学説はそれなりの説得力があったみたいで、近代のアトランティス学・アトランティス伝説の基盤が作られ、オカルトと結びつくことで多くの派生研究を生んだとみられます。

しかし、19世紀ごろになるとアトランティスをめぐる科学、歴史、考古学が進むにつれ、欠陥や不正確さが明らかになり、アトランティスの実在への疑いは深まっていき、プレートテクトニクス理論によってアルフレッド・ウェゲナーの大陸移動説が正しいことが証明されるとともにアトランティスの存在そのものが科学的に否定されたといえます。


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