いつか、あれがほしい。

スペインを旅行した時、私の相棒はオレンジジュースだった。季節は夏。とにかくよく歩く旅だったし、買い物で自由行動のときや、1人でちょっと早く起きた朝も、カフェに入って「スーモデナランハ ポルファボル」と覚えたての呪文を得意気に唱え、搾りたてのオレンジジュースを手に入れた。そう、どんなカフェに入っても搾りたてのオレンジジュースが出てくるのだった。店員さんがいくつかのオレンジを手に取り、マシンの上からゴロゴロと入れる、中央でギュッと絞られたのち、皮は二手に分かれて落ちていく、ボタンを押してオレンジジュースがカップに注がれる。何度見ても胸が踊り、私の喉を潤す、あの雫達を作り出す無骨なマシンを心の中で礼賛した。旅の間、私を助け、支えてくれたオレンジジュースを作り出すあのマシン。いつか、あれがほしい。あれは私の人生をきっと助けてくれる、なんだか確信をもって、そう思うのである。 #旅する日本語 #炎節

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