食事は身体のためだけに摂るにあらず
私のソウルフード。
それは、きつねうどんです。
小さい頃から麺と言えばそば。
うどん?そんなふにゃふにゃしてて
味のしない(太いから味が絡みにくいって意味で)もの、
美味しいのかなぁ。
麺類食べるなら断然そばやねん!
シャキッとツルッと喉越しでいきたいねん!!
と頑なに夏はザルそば、冬は鴨南を選ぶムスメッこでした。
で、大人になったある2月の
むちゃくちゃ寒いのに雨がしとしと降る日。
東京へ出張に出ていた私は
何があったかは忘れてしまいましたが
とても嫌なことがあり
メンタルズタボロのまま、
そして空腹のまま
その日宿泊予定のホテルに向かって歩いていました。
時刻は夜の11時過ぎ。
飲食店は軒並み閉まっています。
ビジネスホテルの近くには
だいたいコンビニがあるものだから
そこで何か食べ物を買って部屋で空腹を満たそう。
でも正直コンビニで買えるもので
この空腹とメンタルの落ち込みを
同時に回復してくれるものなんて想像つかんよ…
なんて考えながらとぼとぼ歩いていると
ホテルのまん前に到着。
フロントはどこかな…と探す私の目に飛び込んできたのは
ホテルの1階にある某立ち食いそば屋さん
ここ、立ち食いそば屋あったんだ!
まだ開いてるよね…
あ…暖かいお汁飲みたい、
暖かいおうどん、啜りたい!!
そう思った次の瞬間には店内に滑り込み、
迷わず自販機へ。
さくっときつねうどんのチケットを購入。
そして、カウンターのお兄さんにチケットを差し出します。
すると笑顔でお兄さんが
「きつねそばっすね!」
と大きな声で確認してきました。
…あれなんですよ、
チケットにはきつねうどん、きつねそばが
共通で印字されているんですよね。
(チケットに両方の名前が印字されている)
実はその日がそのチェーン立ち食いそば屋が
初体験だった私。
えー、いくらそば屋やからっつっても
東京ではきつねうどんより
きつねそばの方がデフォなんか?!
と心の中でツッコミを入れつつ
実際はもう腹に力も入らない状態だから
少し狼狽気味に
「あ…う、うどんで…」と答える。
明らかにひいているお兄さん。
うん、わかる、わかるよ。
そば屋さんに夜の11時過ぎに入って来たのに
今更うどん、茹でさせんのか?!
ってかんじやんね。
でもごめん、私はどうしてもうどんが食べたいねん…
普段なら5分も経たずに出てくるんでしょうが、
少し時間がかかって出来上がってきました。
おおう、やっと目の前にはきつねうどんが!
あぁ、これこれ、これやねん。
んーちょっとお汁は醤油が濃そうやけど…
これ食べたら
お腹も心も、芯から暖まるはず。
そう思ってお揚げさんにガブっ!とかぶりついたら
!!!!!!!!!
えー!!甘くないやーーーーーーーーん!!
お揚げさんからジュワッ!って
甘いお汁が出てくるって思ったのに!
あの甘さが私の口も胃も身も心も
全てふんわり包み込んでくれるはずやったのに!!
うどんもそんな腰がある訳じゃないけど
ふんわりもしてない、
ちょっともそもそした感じ。
寒い雨の日で、メンタルもズタボロの中、
やっと見つけた暖かいおうどんが
真っ暗闇に射した一筋の希望の光に見えたのに…
(ちょっと盛りすぎかな、すみません)
私の思い描くきつねうどんとは
ちょーっとかけ離れすぎていて、
その時の私にはとてもショックだったんです。
たぶん、今食べたら
そんなに抵抗なく食べられると思うんですが
あの日はきつねうどんの甘々なお汁に
身も心も浸りたくてしょうがなかったんです…
と、ここではもう
どうにか全部食べきりましたが
とてもじゃないけど気持ちは満たされず。
ホテルで布団にくるまって
沈んだ気持ちのまま、まんじりと朝を迎えたのでした。
あんなにそばそば!って言ってた私なのに。
普段は甘くていやだ!っていってた
きつねうどんなのに。
こんなに心から切望するなんて
不思議だなーと思うのです。
そういえば、私はすき焼きも好きじゃなかったのです。
甘ったるくて、美味しく感じなかった。
でも、大人になってからは大丈夫になって
食べるたびに
家族や仲間で食べたことを思い出して
ふうわり優しい気持ちになって…
それがより美味しいって感じさせているのかな、
と思ってます。
たぶん、きつねうどんも覚えてないけど
何か気持ちに作用するような出来事が
実はあったんじゃないかと。
弟が大好きだったしね。
普段、何気ない時に食べていたからこそ
自分の中の「家族」の原型を感じられる食べ物に
なっているのかもしれません。
そして私の中では家族=
安心できる場所、心を許せる場所なんだろうな、と
このnoteを書いていて感じました。
食べ物って単一の感覚だけではなくて
見た目や味や香り、食感など五感をフルに使って
思い出とつながっていると思うんです。
そのお料理を見たり食べたりすることで
相手を感じられたり
その時の幸せな気持ちを思い起こしたり
(もちろん、いい事ばかりじゃないけど)
だから食事の時は出来るだけ
楽しく幸せな気持ちで食べられるように
味や栄養以外の部分も整えられたら、と
思っています。
それがこの先の人生で
私にとっても他の誰かにとっても
心の支えとなりうるかもしれない。
お料理を作る側の人間として
そんな場面に立ち会えるお料理を作り出せているのなら
とても幸せだなあと思うのです。
(これでも、お料理の先生の端くれなのです…)
これからも、美味しいものを
楽しく美味しく食べられるよう、
それにプラスして身体が喜ぶ食べ方を
提供していきたいと思います。