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等松春夫先生による防衛大学校の問題提起から考える

防衛大学校の等松春夫先生が、7月に防大の現状を憂慮しての告発がネットでの異例の応酬になり、話題になりました。夏休みも終わり、問題の展開が注目されます。

等松春夫防大教授の告発

これに関する等松先生の問題「告発」は集英社のサイトで閲覧できます。

感想を書いてみようと思った理由

私は軍人や軍人OBではありませんが、一般庶民の感想を書こうと思いました。なぜかと言うと、安全保障は軍人まかせっきりもダメで、国民も関心を持って考えるべきものと思うからです。もっとも素人による外野の野次馬の駄弁に過ぎませんが。

問題提起に対するOB(オオカミ少佐)の解説が最も納得

この問題告発に対し、OBでもある「オオカミ少佐」さんが私にとっては最も納得の解説でした。記して感謝と敬意を表したいと思います。

一方で、私が「外野」から見て、面白いと思ったのが「怪しげな論客」の部分です。あくまで野次馬的ですが。

「怪しげな論客」?

「怪しげな論客」相当で、等松先生の告発文で名前が出てくるのは以下の方々です。馬渕睦夫(元防大教授)、竹田恒泰、井上和彦、吉木誉絵などで「ネトウヨ」として報じられているのもあるようです。

目くじら立てるほどの話なのか or「お役所仕事」

私は正直、目くじら立てるほどの話なのかとも思いました。授業とも違うから別に寝ててもいいじゃん的なのもあります(授業でも寝てる)。そもそも「?な講師の話」にすぐに感化されるなら、防大での教養教育自体が問題です。

それはさておき、ありがちな「お役所仕事」的に、選定基準考えてみると、こんな感じでしょうか。⑤⑥が重要です。

①自衛隊の悪口言わない人、応援してる人
②(ヒマそうだし)スケジュール合わせてくれる人
③安い謝礼でもニコニコやってくれる人(予算ないから)
④寝てる学生がいても「事情」を理解して怒らないやさしい人
⑤講演の事前検閲に怒らない人(これは等松先生の指摘参照で重要)
⑥防衛省の現状の政策を絶対に批判しない人(これが本稿の目的)

という条件を満たすのが、結果としてこれらの識者(識者と言えるかどうか別として)だったというわけで、いわゆる「ネトウヨだから」は考えすぎ・思い込みと思います。リベラル系言論人が目を吊り上げ、金切り声を挙げているのは滑稽です。

もっとも、戦後すぐには旧軍の軍人が来て話もしていたこともあり、問題になったこともあるようです。考えてみると「防大で誰が外部講師でしゃべるのか」は、政治や安全保障を考えるうえで面白いトピックかもしれません。

軍として「陰謀論」とどう対峙するのか

なお、私が看過できないと思ったのは馬渕睦夫元防大教授(外務省OB)の最近の陰謀論のおかしさです。呆れました。

最近、ついに特殊部隊のレジェンドまでがおかしなことを言いだして、私も絶句しました。

「ネトウヨ」自体は大した話ではないですが、軍として「陰謀論」とどう向き合うのか、ここは大切な視点だと思います。ZAKZAKの記事を読んで驚いていたところに柏原竜一氏の解説もあり、全く同感でした。

奥山真司氏の背景も含めた解説は刺さりました。軍としてこの背景の問題は考える必要があるのではないでしょうか。

等松先生NGでも、誰が外部講師なら良いの?

これが、本稿の目的です。私から見て外部識者の講演会で呼んだら面白いと思う人を思いつくまま挙げてみました

先に挙げた「陰謀論」とも関係しますが、役所的な「正しいもの」だけを教わる状態が「陰謀論」の温床になりかねない、逆の危うさを感じました。

だからこそ特に防衛省に批判的な識者の講演こそ必要ではないか、という敢えて暴論極論を言ってみました。しかし、本当にこれが暴論極論なのか、考えてみても欲しいところです。

挙げていくうちに、どういう人が外部講師に良いのか、と言うのが安全保障に対する考え方を端的に表すようなものでもあると思います。なお、OBや防衛研究所の先生方はありがちなので本稿では除外しています。

(1)清谷信一(防衛ジャーナリスト)

正直、批判表現の激烈さには閉口なのと、内容に全部が賛成ではありませんが、防衛省の「現状」を清谷氏以上に批判している人はいません。こうした批判に傾聴できることが大事だと思います。ただし、防衛省から超強力な絶対NGが出るに決まってますので実現はしないと思います。「防衛省が困る理由」はいくらでも思いつきますが、「ダメな理由」ではないはずです。

(2)樋口恒晴(元常磐大教授)

最近出版の『日本の死角』でアカデミズムから日本の防衛基盤に対して鋭い問題提起をしています。当然ですが、防衛省の現状の政策だけでなく霞が関全体の軍事無知に対し非常に批判的です。役所の論理で防衛省批判もさることながら他省庁批判を防衛省の役人がびびってOKするはずありません。

軍事・安全保障は主に制服OBや防衛研究所の先生方が論じられてきました。しかし、古巣や所属の批判になるような話は立場柄しにくいのはあると思います。安全保障は経済や金融等の政策と異なり、情報と論者が限られていることによる「死角」が多いだけに、関係者とOBにだけに知識を依存するのは危ういと思います。それだけにアカデミズムからの批判を受け止められないようではだめだと思います。

(3)部谷直亮(安全保障アナリスト)

部谷(ひだに)氏は、軍人ではないう文民の立場から早くからドローンの軍事使用に関し警鐘を鳴らしてきた専門家です。さらに政軍関係も専門的に学ばれており傾聴に値します。

いみじくもデューク大学教授のピーター・フィーバーは、選挙を経た文民指導者にのみ失敗する権利があって、軍人にはないと指摘している。これは失敗した文民は選挙での落選や政権交代によって責任をとれるが、失敗した軍人に責任を取らせることは出来ないということである。
裏を返せば、政治指導者には失敗する権利がある以上、失敗を恐れて専門家任せにしてはいけないということでもある。

自衛隊に対しても容赦ない批判を行っており、非常に貴重です。

防大での講演は待ったがかかるのは間違いないと思います。だからこそ推奨したいと思います。

(4)飯柴智亮(米国籍元米国軍人)

飯柴智亮氏は高卒後19歳で渡米。北ミシガン州立大に入学し、学内にて士官候補生コースの訓練修了。1999年に永住権を得て米陸軍入隊。精鋭部隊として名高い第82空挺師団に所属し、2002年よりアフガニスタンにおける「不朽の自由作戦」に参加されています。

米軍から見た「自衛隊」がいかに軍隊としてなっていないかを忌憚なく書かれ、それだけに非常に貴重な指摘で大切にすべきと思います。しかし、飯柴氏が米軍を不名誉除隊になった経緯も含め、防衛省がOKするはずないし、絶対NGであることは確実でしょう。飯柴さんの言葉に耳を傾けずに日米同盟が大事と言う上っ面の偽善や事なかれこそ、国を亡ぼすものと思います

(5)ケビン・メア(元在日大使館政治軍事部長、元在沖縄総領事)

「日本人は、和の文化を強請りの手段に使う」「沖縄は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人でゴーヤーも栽培できないほど怠惰」と発言されたとされ更迭された経緯があります。(本人によれば発言は曲解)

著書を見ると日本事情に精通しており、日本政治の問題点を熟知しています。日米同盟、防衛問題の当事者でもあったので、防衛省の甘さを容赦なく指摘するでしょう。当然、ことなかれ第一主義の防衛省の役人が「勘弁してくれ」と言いだすに決まっています。

日米同盟大事だという一方で、ケビン・メアさんの講演ダメ出しはあり得ません。ただし、講演料高いという理由以外で。

(6)J・マティス(元国防長官)James Norman Mattis海兵隊大将

米国の軍人は相当なインテリが多いです(日本も劣後しているわけではないと思いますが)。日米同盟を重視するのであれば、国防長官経験者でなおかつ読書家でもある、元国防長官のJ・マティスは一番の理想でしょう。

「ネトウヨNG」は結構ですが、それならマティス将軍と防大教授陣が知性でどう格闘するのか是非見せていただきたいと思います。日米同盟大事と言ってますよね?それなら話かみ合わないはあり得ないと思いますが。

たぶん予算が無いからダメだを理由にすると思いますが、メッケル少佐を招聘した明治政府の気概を見習ってほしいものです。

(7)エドワード・ルトワック

戦略論の泰斗のエドワード・ルトワック氏。呼んだら面白いことを言うと思いますが、内容からして「国会で問題になるんじゃないか」とか気をもむ役人が出てきそうです。

ここまで大胆な提言はルトワック大先生しか言えないと思います。

(8)石破茂元防衛相

今回の告発についてもコメントあります。石破氏の政治と軍事に関する関係の議論は妥当なものと思います。(ただし政治家としての手腕とは別次元)

防衛省・自衛隊という組織は、他の省庁に比べても、風通しが悪いところがあるのは事実です。私は防衛庁長官、防衛大臣を通算3年ほど務めましたが、国防を真剣に考え、防衛省や自衛隊の改善策などをあれこれと口にすると、部内から疎んじられてしまうこともありました。

私は農林水産大臣も務めましたが、農林水産省にはそこまでの風通しの悪さを感じたことはありませんでした。

石破茂インタビュー

防衛省についても上記のようなコメントしている点と「政治的中立ガ~」等の理由をつけて絶対ダメに決まっています。軍隊の政治的な中立を「関わるとワーワー言われて面倒なのでとりあえずやめておこうや」的な事なかれ次元の解釈が本当に妥当なのでしょうか。

なお、石破氏が安倍総理に対し後ろでグジグジ言っていたことには私は良い感情を持っていません。

(9)小笠原理恵(国防ジャーナリスト)

小笠原さんが現状を告発する形で問題視しています。あろうことか、これに防衛省関係から勘弁してくれ、やめてくれとか言われているそうです。

ならば小笠原さんも防大で現状を話して欲しいです。防大の学生たちも(任官すれば)いずれ現場の惨憺たる現状と向き合います。民間で言えば企業から内定をもらっている状態の学生です。内定先の会社の現状を学生に聞かせることの何が問題なのでしょうか。

小笠原さんの話で見切りをつけてやめる学生がいれば、その現実こそ問題です。その現実と向き合う勇気無くして、国が守れるのでしょうか。ネトウヨよりはるかに問題だと思います。

以上挙げてみましたが、私が挙げた識者の皆さんに失礼があればご海容のほど。

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