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「一票の格差是正」は地方での人口減少の現実への最後通告と受け止めるべき

いわゆる「1票の格差」を是正するため、衆議院の小選挙区を「10増10減」する公職選挙法の改正案が可決成立しました。

平成8年(1997年)の現在の制度開始し25年経過しましたが、今回の議席配分の改正はいわゆる「アダムズ」方式と呼ばれる形で再配分され、地方での議席減少が大きいのが特徴です。

 そもそも、議席の定数配分の見直しは主に「1票の格差」(一票の価値)として主に都市部の人々から問題提起されています。

これに対し朝日新聞の社説では、一票の格差是正を促進する内容になっています。

一方で、興味深いのは福岡県の西日本新聞では地方の声を切り捨てるな、という内容の社説があります。

筆者は地方(岐阜県)に在住していますが、反対論の中でこの「地方の声が反映されない」という議論には非常に違和感があります

漠然と「地方の声の反映」を主張されても、具体的にどのような政策について反映されない(なかったか)の検証や議論がほとんど無いからです

 また、反対に都市部での意見がしっかり反映されているのか、というとそうでもないように感じます。ここも都市部の選出の議員などの具体的な反論をもっとされるべきだと思います。

まず、25年前の人口と議席とをデータにしてみました。

25年間の議席と人口の減少

データを見ると小選挙区導入時(平成8年)からも人口減少の影響を受けていることがわかると思います。小選挙区制度導入時は1議席は別枠であったのですが、今回これがアダムズ方式の計算でなくなりました。
秋田県・宮崎県などはこの25年間議席減少は無かったのですが、人口減少数を見ても次回改正での減少は予想されます。鳥取県も次回の見直しでは小選挙区の議席が1議席だけになるのは避けられません。

 データで見ても、今回の議席再配分はあくまで人口変動の「結果」なのだと分かると思います。

 「地方の声が届かない」とする反対論は「背景や原因と結果」を取り違えているのではないでしょうか。

 問題の本質は「地方での人口減少」なのです。

また、次回の選挙の公認問題などにメディアが熱中しています。その背景の人口減少の深刻さをなぜ報じないのでしょうか。

これまで、地方で人口減少したのは、地方の声が反映されなかったからでしょうか?あるいは地方の声を反映しても、政策が適切でなかったからでしょうか?この問題がむしろ本質論のように思います

選挙制度に血眼になる前に、議席減少の背景の「人口減少」と政治がどう向き合ったのか。この点の検証がメディアも含めてまるでされていません。この25年間の地方政策の効果が無かった結果が人口減少なのではないでしょうか。政策の検証がまるで無いことに、非常に疑問に感じます。

一方で田舎に住んでいる筆者としては、地方への資源再配分はそれなりに手厚くはされているとは感じます。過剰とすら思える時もあります。これらは産業構造の変化や人口動態を考えた政策になっていたでしょうか。

繰り返し強調したいのですが、この政策の検証こそやるべきなのであって、議席の配分に文句言ったり、選挙制度の議論は筋違いだし、公認騒動に至っては論外です。

さらに、改めてこの25年間での地方の人口減少の数字は衝撃的です。上記の図を見てみましょう。

長崎県でみてください。25年間で24万人減少。24万人というと長崎県内では佐世保市の人口と同じです。長崎県の25年間毎年ほぼ1万人減少。長崎県で佐世保市がまるごと消滅した規模のインパクトです。長崎県選出の4名の議員はどうお考えなのでしょうか。まずは問いただすべきところでしょう。

また秋田県の22%の減少にも驚かされます。25年間のスパンとは言っても、企業の感覚で事業内容や戦略の見直しが全く無いという状況は到底考えられません。
 秋田県出身の菅総理自身も就職で横浜に出てきました。この実情をどう考え、どう取り組んだのでしょうか。個別にふるさと納税の創設の功績もありましたが、もっと全体から見てどうなのか、メディアも愚にもつかない質問するよりこれを問うべきです。

福島県の32万人減少は震災と原発事故の影響もあると思いますが、非常に大きい数字です。議席を減らさなければ解消できる問題とは到底思えない規模です。そもそも原発事故対応は国全体で考える問題です。地域選出の議員の問題にしてはならないと思います。

他にも10万人規模での減少の県も多くあります。「10万」と言う数字は小選挙区でのおよその当選ラインの票数でもあります。10万人以上が県単位で消滅というインパクトにもかかわらず、むしろ地方の選出議員に切迫感が無いように感じます。選挙区の人口が減少している現実を把握してなかったのでしょうか。議席減で初めて尻に火が付いたような印象すら受けます。

特に過疎地域の基礎自治体で必須の住民サービスが維持できるのかどうかに直面しています

2023年春の統一地方選挙でどれだけ議論になるのか注目ですが、現実は甘くはありません。もっとも地方では大半が無投票ですが。

こうした過疎地域を選挙区に持つ議員は地元を本当に回って実情を把握し、政策に活かしているのでしょうか。

自分の議席の不安の以前に、地域の人口減の実情と真剣に向き合っているでしょうか。

将来予測の数字をみると、地方でのさらなる人口減少は衝撃的な数字が並んでいます。議員の諸氏はどうお考えなのでしょうか。この人口減少予測に対して、どのような政策を考えてるのでしょうか。議席減に漠然とした反対だけでなくこの問いにまともな回答が無ければ、「地方の声の反映」は自分の議席の心配ということになります。

 都市部の方には現状を理解されるかどうか不安なので、筆者の地元で具体的な事例を挙げましょう。

 「母校が一つも残ってない」人が筆者の身近にも実は何人もいます

 小学校・中学校・高校・専門学校の全てが人口減の統廃合で廃校になってしまったのです。地方では、あらゆるものが統廃合を余儀なくされる現実に「国会議員だけそのままにしてくれ」はどうなのでしょうか。この現実と向き合ってください。

 一方で、市役所や県庁に行くと驚くほど豪華だったり、補助金がやたらに多かったりもします。「地方創生」の補助金はその典型例です。基礎自治体での住民サービスの維持の問題や「撤退戦」を今後どのようにやっていくのかの危機感の一方で非常にチグハグさを感じます。

これだけバラまいても結局は何も役に立ってなかったのではないか、そういう疑問が消えません。報道や議論がこの点に何も言及しないことが残念です。

「地方の声が」を叫ぶ議員にお願いしたい。自分の議席が心配なら、選挙制度ではなく、まず選挙区の人口減少の現実と向きあってください


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