【減税】住民税決定通知書を見よう!府県民税の超過課税知ってますか?
6月は「住民税決定通知書」が届く季節です。届いた方は出して見て下さい。知らない人も相当数いますが、自治体による住民税の金額の違いがあります。改めて「住民税決定通知書」を見て下さい。
都道府県民税に注目してみましょう。都道府県民税は均等割で本来(法定標準)は1,000円ですが復興財源で500円追加されています。
しかし、これにさらに37府県で独自に超過して課税しています。「府県」?あれ?と思うかもしれません。北海道と東京都は超過課税ありません。個人ですと均等割で37府県超過課税、これに加えて神奈川県は所得割で超過課税をしています。以下総務省のページからです。
都道府県民税の超過課税はほぼ森林環境関連です。一覧にまとめました。森林に関した内容が多いので、森林面積データ(林野庁)つけました。また、超過課税は府県の条例で決められています。開始・更新・「期限」年度も付けました。期限で継続か終了かは有権者が判断することです。
一覧を作って気づいた点があり以下つらつら書きました。(長いです。)
1.森林環境税と重複は何なのか
まず疑問なのが、国の森林環境税との重複。令和6年から森林環境税が始まり、国税として1,000円を市町村が賦課徴収します。普通にこれは重複では?という疑問は湧きます。超過課税導入県のHPでこの重複を説明ある県、ない県があります。「重複しないようにします」(「しません」ではない)と説明するパンフまであります。半ば重複を認めているわけです。
疑問・批判の論文やレポートも多くあります。
そもそも林業に関連して、2021年に起きたウッドショックもありました。
2.宮城県は均等割1200円で最も高い
まず、都道府県で高いのが宮城県。
均等割で2,700円。本来は1,000円のはずが、2.7倍。また超過課税の無い1,500円の県と比較すると1.8倍です。
今年11月任期満了で宮城県会議員選挙あります。「代表無くして課税なし」で日本で一番高い県民税の是非は話題にするべきです。
3.横浜市高い。神奈川県は所得割は必要ないのでは?
しかし実はこれより高いのが横浜市。神奈川県は300円均等割で、さらに所得割0.025%追加。その上に横浜市で900円均等割(横浜みどり税)で追加。
令和5年度が最終年で更新あるので市議会での対応も注目されますが先の市議選で争点にしたかどうか。ちなみに2023年4月横浜市議選投票42.8%。
神奈川県の0.025%の所得割の超過課税の数字の根拠も調べたが分かりませんでした。全国で唯一、神奈川県だけ所得割の超過課税をしています。所得割でどのような計算になっているか、神奈川県の方は住民税決定通知書に記載あるか確認をお願いしたいところです。
4.神戸市にも注目する必要
神戸市は「神戸モデル」という認知症対応で400円を超過課税しています。兵庫県の県民みどり税800円と併せて1,200円。今回の環境関連とは異なりますが、超過課税として注目は必要です。ナゼかと言うとこの神戸モデルを他の市もマネして超過課税を始めかねません。なぜ超過課税なのか、なぜ400円なのかの根拠は必要です。
https://help.city.kobe.lg.jp/hc/ja/articles/6667838385423
なお、「神戸モデル」での超過分税収の収支や政策の評価検証について神戸市HPみてみましたが分かりませんでした。
大阪市減税会の「陰気なたまむし」さんが内容を検証しています。
5.森林環境関連の超過課税は高知県から
そもそも、これらはどこの県が始めたのか。森林関係の超過課税は高知県が平成15年(2003年)に導入開始以来、全国に拡大しました。高知県での導入の流れは見てみると興味深いところです。
森林の面積の広さや水害など理解しやすいフレーズが当時からも並んでいることには留意の必要があると思います。
平成10年前後で地方分権の推進がありましたが、高知県の導入が平成15年なのを見ると、地方分権で条例での超過課税になったという見方もできます。
地方分権が良いことのように聞こえたかもしれませんが、実態は増税です。
また一覧にしてみて隣県が導入での「横並び」の発想で追加されていくのが読み取れます。例えば九州全部500円で一律です。栃木群馬も仲良く?同じ。西日本は500円多く、東北が1000円で高い傾向があります。理由はよくわかりません。しかし「隣県のマネ」しかないでしょう。
パンフや文言、条例もコピペで「増税も隣県やれば怖くない」でいいのでしょうか。
6.鳥取県の導入経緯からわかること
なお、環境税導入の経緯としては初期に導入した鳥取県が分かりやすくまとめて事例として参考になります。(高知県資料はpdf貼付だけで難解)
当初は「水源の涵養」という目的で水道料金上乗だったのが、検討過程で県民税の超過課税に変わっていきました。現在は「豊かな森づくり協働税」。目的が次々変化拡大しましたが、増税方針と金額上昇は変わっていません。一度超過課税制度導入したら絶対やめない「鉄の意思」を感じます。
それ以上に「目的の変更」が重要です。「国の森林環境税と重複」と言う批判は今後も必ず出ます。このために現状の条例の目的・意義等を変更していく可能性は非常に高いことも、鳥取県の導入経緯資料からも読取れます。
また花粉症対策の謳い文句があるかどうか。今後、花粉症対策を意義に入れ目的をかえて存続や増税させる手口は私ですら思いつきます。
6.滋賀県で「交通税」が検討
なぜ神戸市や、高知鳥取の導入経緯を注目したか。現在、滋賀県では交通税が検討されています。滋賀減税会のページをご参照ください。この滋賀県の「交通税」は他県も決して他人事ではありません。導入経緯を検証するころで滋賀県での交通税阻止に役立てたいものです。なお滋賀県の減税会のみなさんに、教えられること多いです。
先の環境税の導入経緯を見てみて、この轍を踏まないことも重要だと思いました。
日経の記事の中では「1人当たり700円程度」が提示されています。法人税などもあるので、私の推測で個人均等割400円でしょうか。
滋賀県は既に「琵琶湖森林づくり県民税」として800円を超過課税しています。これに加え交通税400円を追加するなら県民税均等割1,200円。ちょうど宮城県の1,200円と同額です。あるいは森林づくりを700円で交通税300円なら1,000円で岐阜県と同じ。「担税能力」とか難しいこと言わなくても県庁のオッサンは他県の超過課税の均等割金額が頭にあるはずです。
宮城県の1,200円超過課税を許しているために、これを「最大」と見て他県でも新税導入の余地があると(勝手に)判断している可能性があります。だからこそ全国でも宮城県の1,200円超過課税を徹底的に監視する必要あります。
7.導入してない県は他人事ではない
環境関連税を導入してない県の方も他人事と思うと甘いと思います。
①原発立地県(青森県、新潟県、福井県)で環境関連の超過課税していない共通性があります。理由は分かりません。しかし、導入県での導入理由を見ても原発あることが森林保護の超過課税の無い理由にはならないはずです。
②徳島県。ナゼか導入されていません。しかし新知事でどうなるか。他県もやってるから、横並びになりやすい条件は揃っています。
③埼玉県・千葉県。一覧にしてみると逆にまだ導入されてないのが不思議です。時間の問題でしょう。特に埼玉県は水源の山林もあります。虎視眈々と狙っていると考えるべきで環境関連のアンケートなどあれば黄信号です。
④香川県と沖縄県は面積と森林率低いから、とは思います。しかし、鳥取や高知他の先の導入経緯を見て下さい。理由は何とでもなる(なった)事実を読み取りましょう。
8.検証も無く情報公開が最低な和歌山県
基本的にはどの県も超過課税分を基金にして事業を行っています。しかし、実施事業に対する評価の実施の有無や公開は府県によって差があります。事業評価シート非公開(未実施)な県あります。
ここで大問題なのが和歌山県。HPでの公開も貧弱なのも問題です。しかしそれ以上に紀の国森づくり基金運営委員会の議事録公開されてても海苔。
①基金の運営委員の名前が黒塗り。委員名を伏せる理由が分かりません。
②金額黒塗りで議事録で金額を隠す必要性が分かりません。
③話の流れで黒塗り散見。これはなぜなのかわかりません。
昭和のエロ小説やポルノでもあるまいに。伏字ゴッコに笑止千万。
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070700/kikin/zeikeika/d00208224.html
なお2022年12月就任の岸本知事指摘していますが事業評価が無く、知事は「次からやる」と言ってます。しかし、超過課税分相当の「紀の国森づくり基金」は優先して直ちに徹底的に評価実施の必要あります。超過課税だからです。
9.超過分の均等割金額の算定根拠は無い
超過課税均等割の金額の根拠は森林面積などを見ても関係ないと分かります。
①森林面積がダントツの北海道が導入していないです。なぜでしょうか。
②超過課税税収を概算で入れましたが、島根県は超過課税税収2億円で神奈川県42億円で最も高く島根県の21倍の税収です。ところが森林面積は島根県の方が神奈川県の5.5倍。丹沢の山々に他県とは桁違いのコストが投入されていることになります。
③大阪府300円で安いからいいや?甘い。大阪府超過課税税収11.3億円。岐阜県の超過課税税収12億円で同規模です。しかし森林面積は岐阜県が15倍も広い。大阪府は岐阜県の15倍も森林に費用かかりますか。さらに、大阪府より香川県のほうが若干森林面積が広いのに超過課税ない事実は何ですか。「
これらのツッコミに「一概には言えない、単純ではない」とかすぐ言うと思いますが、だったら算定根拠を明快に提示を要求したいです。
10.名古屋市は減税しています
超過課税どころか、減税してるのは名古屋市。河村たかし市長の公約で実現しました。横浜市民はしっかり名古屋市の取組見てください。
しかも名古屋市は税収のびています(上記SAKISIRUページ参照)。他方、注目されるのは、住民税決定通知書。摘要欄に明記されていること。
超過課税のある府県では、摘要欄に超過課税について記載あるでしょうか?(各地の減税会の方で「書いてない情報」あれば教えて欲しいです。)
名古屋市の減税について「減税の効果が疑問」等グジグジ言う人たちいましたが、超過課税による政策での経済効果を説明は一度も見たことありません。経済が目的でないなら環境ですが、超過課税の環境影響への効果(コスパ)示したものは一度も見たことありません。なぜですか。減税に効果の立証を求めるより、超過課税にこそ先に説明責任あるはずです。
大阪市減税会の「陰気なたまむし」さんが減税効果を検証されています。
11.アンケートもツッコミどころ満載
超過課税に関して県民がどれぐらい知っているのか、アンケートあります。各地のアンケート探していくとツッコミ満載です。
11.①和歌山県8割が超過課税でタカられていることを知らない。
しかも、金額まで知っていたのは1割もいません。
11.②神奈川県は超過課税に一切言及無い県税アンケート毎年実施
神奈川県は県税の広報に関するアンケートを毎年実施していますが、超過課税には一切言及が無いです。
まずは超過課税知ってるかの項目を入れさせろ。アンケートの目的が「県税の広報について」だからその目的に無いからというのでしょうが、こういうふざけた言い訳を黙認しているのが神奈川県議会です。
11.③横浜市は過半数が超過課税を知らないが関係者だけは把握
横浜市で緑に関する意識調査を毎年実施していて半分は知らないのです。それなら、納税対象者だけに限定した数字を出すべきでしょう。ナゼかと言うと樹林と農地の所有者限定(みどり税の利益関係者)のアンケートも実施していて、まるで反対の結果が出ています。
なお別に毎年実施の「環境に関する市民意識調査」が毎年あり重複もいいところですが、ここでも超過課税のみどり税に関しては出てきません。
横浜市役所は財政厳しいと言っているようですが、超過課税の用途をみると冗談や与太話にしか聞こえません。
11.④一番高い宮城県では超過課税のアンケートは?
宮城県のアンケート見つけられませんでした。
11.⑤滋賀県の交通税アンケートで八百長の可能性
アンケートに着目したのは滋賀県で交通税のアンケートが行われていますが、八百長アンケートとしか思えない疑問が減税会から出ています。私は追加の疑問点出したいです。
・住民税納税対象者かどうかの欄が無いこと(納税対象者の賛否確認)
・既にある「琵琶湖森林づくり県民税」についての設問がないこと。
滋賀の例見て感じたのは、各県の環境税の導入時のアンケートも過去に遡ってチェックしていくと八百長がかなりあると思います。これに限らず、超過課税に関するアンケートを全部チェックすると次から次へとツッコミポイント出ています。
そもそも超過課税については、住民投票での同意にするべきで国政選挙などの選挙の機会を利用して賛否確認すべきと思います。無投票低投票率の議会に同意権があるから超過課税が行われるので、少なくとも標準の倍以上の超過課税には住民投票を必須とする条項を求めたいところです。
12.条例で「無駄」の指摘は受けないようにしている
いろいろな県の実績報告など見ていくと「啓発活動」が出てきます。普通に啓発活動など不要、超過課税してまでやることか?と思いますが、条例で簡単には「やめれない理由」を作ってあります(増税アリバイ条例)。
長野県の例をみてみましょう。超過課税は「長野県森林づくり県民税条例」を根拠にしています。この使途の内容として具体的な「長野県ふるさとの森林づくり条例」で啓発活動など謳われています。
逆に条例に「支援する」と書いてあるのだから、やらない方が条例違反になります。「単に条例の綺麗ごと作文、思いつきの隠れてこそこその無駄遣いでなく、条例を根拠に正々堂々とした無駄遣い、が重要なポイントです。
啓発活動で公金に群がる構造は、colabo問題と通底するものがあると感じます。啓発活動はいつまでたっても終わりのない永遠の課題にできます。意識や啓発などの法律や条例は要注意だとよくわかりました。
13. NPOの関与・有識者会議
Colabo問題でNPOによる不適切会計が問題になりました。さらに注目されたのは、対応する法律や審議会に、NPOの当事者まで入っていたことです。
この環境に関連する超過課税も似たような図式が見られます、超過課税の制度導入の有識者会議や基金の運営会議にNPOが入り、受益者が入る「八百長会議」「八百長検証」の側面があります。環境関連の「会議」を見てもその人選が受益者なのでは?があり、Colabo問題の構図を想起しました。
例えば、横浜みどり税(均等割900円)に関しては「横浜みどりアップ計画」があり、その「市民推進会議」があります。この名簿を見てみて下さい。公金を使う側が市民の低い意識を上から目線で説教する構図です。
14.県庁の記者クラブは権力の手先・増税応援団
たびたび和歌山県の事例で恐縮ですが、先日「わかやま森林と樹木の日」記念行事があり、知事の会見でも発表がありました。報道もされました。
この行事にも超過課税の紀の国森づくり税が使われています。しかし、報道で「超過課税である『紀の国森づくり税』が使われています」等一言でも言及したでしょうか。ありません。
県庁のリリース文書に記載ないからですが、これを聞いて確認するのが記者の仕事で納税者である読者に伝えることと思いますが、まるでできていません。これが超過課税の現実を県民8割全く知らないことの温床です。
15.「きれいごとワード」をちりばめたパンフ
増税推進の武器として文書に「きれいごとワード」をちりばめるテクニックには苦笑脱帽させられます。行政が「きれいごとワード」を使ったときは増税の兆候です。
また、超過課税名称などで県名のひらがな表記が目立ちます。均等割なので「漢字の読めない愚民から徴収」の徴税の断固たる決意です。
さらに天皇皇室出席する行幸行啓の行事も動員しています。パンフ等で「全国植樹祭を契機に」「育樹祭をはじめ」「豊かな海づくり大会を踏まえ」等が散見され、反対しにくい雰囲気の醸成に役立てています。これには言いようのない不快感がこみあげてきました。皇室は増税正当化の道具なのか。怒りが湧きます。
16. 地方自治は議会がチェック機関という制度設計
先日のSAKISIRUのウェビナーでColabo問題に関連し、地方行政について宇佐美典也氏の興味深い指摘がありました。【SAKISIRU会員限定のセミナーでアーカイブあります】
「そもそも地方行政(首長)をチェックするのが地方議会」という制度設計、考え方がある、という指摘です。地方自治は「首長が行政やってそれを議会が見張る」制度設計になってるはずですが、現実には議会と首長が一体(オール与党)になっています。地方議会のチェックの建前と有権者の地方行政への無関心が産んだ徒花とでも言うべきでしょうか。colabo問題の進展・対応の経緯についても、こうした行政の制度面としての問題がありますが、地方の環境関連の超過課税も類似の点を感じます。
ちょうど地方分権推進、都道府県の権限強化が話題になって以降から、この森林環境に関する独自の超過課税が流行しています。単なる偶然とは思えません。この因果関係も行政学者やメディアも検証が必要と思います。
地方分権の流れの一つで課税自主権の拡大と言うことで国の関与が減って行っているのは総務省HPでもわかります。
17.情報を整理追加するところ
今後余裕がもしあれば情報追加して各府県で情報比較したらいいかなと思うのが、以下の項目。
①超過課税相当の実施事業に対する事業評価シートの公開の有無
②事業評価を行う委員のメンバー公開(受益者確認)
③基金運営委員のメンバー公開(和歌山県は黒塗です)
④超過課税条例の県議会での賛成反対者一覧。更新年ごとの有無
⑤最初の制度導入時の県知事名
⑥最初の制度導入にあたって協力した有識者の実名公開
(反対1人もいない八百長会議だったのか)
⑦財政規模との比較(一般財源で賄えない理由の明確化)
これはどの数字を持ってくるといいのか助言頂けるとありがたいです
⑧アンケートの公開有無(知っているかどうかだけでも)
⑨導入時のアンケート公開有無(八百長アンケートの可能性チェック必要)
まとめ
私としては、洪水対策や土砂崩れのための山林保護や風倒木の処理もあり、一概には否定しません。実際この事業で洪水の被害が低減できた事例もあると思います。意義は無い、ゼロとも言いません。しかし問題として「超過課税してまでやる必要性」には程遠く、疑問です。まずは有権者が関心を持つこと、関心を持ちやすくすることが大事だと思います。