つまるところ、どう生きればよかったのか?

最近、仕事をしている時に思うことがある。

それは子どもの頃に思い描いていた職業ないし、好きな事に携われる仕事に就けていたら……という幻想である。

こんな事を見出しに持っていく辺りで察せられるが、私はそんな事とは無縁の大して面白くない仕事に日々身を投じている。

見知らぬ誰かに下げたくない頭を下げ、安っぽい三気筒のエンジン音を響かせる軽自動車のハンドルを握り道路を走る。それは非常に退屈な日々であり、色に例えると灰色だろう。ウレタンのステアにプラスチック丸出しのダッシュボードも灰。空も灰。そんな事を思うと胸の内まで灰色に染まってしまう。

子供の頃からアニメやゲームみたいな創作物が好きで、大人になれば漠然ながら、それに携わる職業に就くと本気で思っていた。

美少女ゲームのシナリオライターに一番なりたかったかもしれない。次点でライトノベル作家。そして次は……。

灰色のキーボードをカタカタ打ちながら過去に抱いていた幻想を思い返すと「なぜ、それができなかったのか?」という念にかられる。

言ってしまうとその幻想を形にする努力をせず、ひたすらに形となった物を享受する生き方のみを行ってきたからに尽きる。

思うに、美少女ゲームやライトノベルに限らず創作物とは作者の「幻想」だ。
こういう物語を作りたい。こういうキャラクターを動かしたい……という幻想を実際に形に起こす事で現実となるのだ。

私は形の無い幻想をイメージをするが、それを形あるものに落とし込めなかった。

つまらない、退屈な日々の仕事の折に過去に抱いていた情念がふつふつとこみ上げる。
人生の展望も無く、ただ毎日ずっとこの繰り返しなのか?やはりもっと若い頃に何かを形にしてどこかに応募するべきだったのでは?

……いや、それでも自分にはやはり才能は無く、努力をする気力も無い。幻想を形ない物にしか留められないだろう。

それでも、近年通うようになった同人誌即売会のような場で二次創作や一次捜索を発表したりしては?

或いは、今の仕事も順調にキャリアを重ねてきているから、そんなつまらないことは忘れて、いっそ仕事に邁進してみてはどうか?

……つまるところ、どう生きればよかったのか?

そんなことを、過去と現在、そして未来の自分に問いながら生きる日々を過ごしている。


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