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氷づけの娘に恋する鬼  (切り絵) ※〜ギャグになる物語り〜

鬼は深い洞窟の奥で、氷の中にとらわれている娘を見つけた。

「あいつが言っていた娘だな。…やっと……やっと見つけた。」

火の力をあやつることが出来た鬼は娘を傷つけぬよう、ゆっくりと氷をとかした。

氷をとかし頬にふれる鬼

娘の上半身をおおっている氷がとけ、娘の顔があらわれ長く綺麗な髪がさらりとゆれた。
なんとも可愛らしい娘だ。
貴人の姫君か?
声をかけてみるが反応はない。
そっと頬にふれるとひどく冷たかったがそのまま優しく唇にふれてみると息はあった。

可愛らしい娘だ

鬼は頬に触れたまま、手のひらにあつめた火の力を気にかえ、娘が火傷せぬよう優しく優しくあたためてあげた。

娘に気をおくり、あたためる鬼


………

しばらくの間、あたためているとスッと娘の目が開いた。


澄んだ綺麗な瞳に吸い込まれそうだ…


「あたたかい…」
娘がぽつりと声をだした。

…心地の良い声だ…

娘は自分の頬に手をあてたまま佇んでいる鬼に気づき、
「あの…あなた様は…?」
と尋ねたが、鬼は娘と見つめ合ったまま動けずにいた。
鬼はすっかり魅了されていた。

いつまでも答えない鬼に、
「あの!私は春香ともうします!お聞きしたいことがあるのですが…!」
と春香が強い口調で話すと、ハッと鬼が我にかえった。
「聞きたいこととは…?」

「今は雪の季節でしょうか?雪女のセツ様はご健在でしょうか!?会いに行きたいのです。」

「あぁ、今は雪の季節だ。…雪女のセツ…あいつは数百年ほど前に坊主から退治さ…れ…、
…もう会うことは……。」

できない--------、鬼は春香を悲しませてしまうと思い、それから先を言えなかった。

「お坊様に退治されたけど、数百年ほどたち、
今は雪の季節なのですね!?良かったー!」

ところが、鬼の想いとは裏腹に春香の声は明るく、そして嬉しそうだった。

「!?…どういうわけだ??」

「助けていただいてありがとうございます!あの、あなた様は?どうしてここに?」

「…!……私は鬼の妖魔。赤鬼のシュラ…雪女のセツとは古い友人だ。死にゆくあいつの最後に立会い、
『とある洞窟に生きたまま氷づけにされている娘がいる。その娘の術を解きに行きたいが命がもたない…シュラの火なら解けるはず…お前が解きに行ってくれ』と懇願されてな。洞窟の入り口には娘が他の妖魔から襲われないようセツの結界がはってあるらしく、私が入れるように札を渡された。どの洞窟か聞きだす前にこときれてしまい…しかし、その洞窟を探し見つけるまでに数百年かかった…すまなかった。」

シュラが頭を下げると

「むしろ数百年かかって良かったのかも……」
と春香は小声でつぶやいた。

「ん?今なんと…?」

「い、いえ!…あら!?ん、ん!シュラ様、出来れば腰から下の氷もとかしていただけると…ゴニョゴニョ…。」

春香は氷から抜け出そうとしたが、抜け出せず、気恥ずかしそうにシュラに言った。

「あ、あぁ、気づかず……すまない。分かった。」

シュラは、セツは退治され、もう会えないのに…何故か明るい様子の春香に訳も分からず混乱しながらも、春香の腰を固めている氷を優しくとかしてあげた。

………

長い間、氷づけにされていたためか春香の足は痺れて歩くことが出来なかった。

「あ、あの…お願いばかりで申し訳ないのですが、洞窟の外に連れ出してもらえますか?」

「それはかまわないが、春香、足の痺れがとれるまで、ここで休もう。痺れがとれ歩けるようになっても抱きかかえて連れ出してやる。この洞窟は険しいからな。それに…お前がこんな洞窟の奥で氷づけになっていた訳を聞きたい。それとセツとのことも…。」

「分かりました。お話しします。」

シュラは春香が足の痺れをなるべく感じぬよう優しく座らせ、自分は春香の横に腰をおろした。
春香はシュラにお礼を言い、ポツリ…ポツリと語りだした。

「……実はセツ様と私は恋仲なのです。氷づけにされたのも、私が身体の契りを拒んだため…。妖魔と身体の契りを結んだ人はその妖魔になる。私はセツ様を愛していますが、妖魔になれない訳がありまして…人として生涯を終えたい。そう伝えると、セツ様はお怒りになり私を氷づけに…」

「恋仲!?…そうだったのか。(こんな可愛らしい娘と恋仲だったとは!聞いていないぞ!隠していたな…セツめ!うらやましい…。)しかし、氷づけにするとは酷いやつだ。そのままお前が氷づけにされている間に、セツは退治されてしまい…私に見つけてもらうまで…数百年もこんな洞窟の奥でずっと……つらかったな。」

シュラはセツと春香が恋仲と聞いてショックを受けていたが、内心はホッとしていた。
(セツにが悪いが、退治されてしまいもう会えない。まだ私にもチャンスはあーる!!)
by シュラの内なる声

「いえ!氷づけは慣れていますので全然大丈夫です。喧嘩するたびに、この洞窟に連れていかれ氷づけにされてましたし。でもやっぱり春香がいないと寂しいって…いつも術を解きにきてくれて…ふふ、可愛いですよね!?」

「!?…あ、あぁ…喧嘩するほど仲が良いと言うしな。」
シュラは苦笑いしながらこたえた。

「数百年の愛の氷づけか…セツの結界があったから他の妖魔に襲われなかったのだな。人を喰う妖魔もいる。私は喰わないが。しかし、もう会えないのに悲しくないのか?私に気を遣い明るく振る舞っているのなら、遠慮はいらぬぞ?私の胸で泣くが良い。」

シュラは春香を慰めようと両手を広げそのまま抱き倒そうとしたが、

「明るく振る舞ってなどいません!あら!?足の痺れがとれました!シュラ様、洞窟の外へ…シュラ様、大丈夫ですか!?」

足の痺れがとれた春香はスッと立ち上がって進み、空振りに終わり、前のめりに倒れて恥ずかしそうにしてるシュラに言った。

「---ゴホンッ!…とにかく洞窟の外へ出よう。」

シュラは立ち上がって、かるく咳払いをし澄まし顔で言うと春香を抱きかかえ洞窟の外へと向かった。

……つづく……

おまけ

身体の契りを拒み氷づけにされるシーン
腰から下が氷で固まっている春香
(鉛筆描き)✏️

ゴニョゴニョ春香


切り絵の下書き


ギャグです😊
切り絵のイメージの説明を物語りにして書きました。
ここまで読んでいただき感謝です🙏🌸
画像は、みんなのフォトギャラリーに登録してます👍
つづきは、また後日に✨

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