氷づけの娘に恋する鬼2 (切り絵)シリアス風
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「春香…お前が誰かに恋をしていることには気づいていた…まさか相手が妖魔とは………!お前は忘れたのか!?父や母を殺したのは妖魔だぞ!」
「!?…兄様…忘れてなんていません……でもセツ様は人を襲わない…人を喰わない妖魔です。だから…」
「俺を裏切ったな…!」
「兄様…?…!いや…」
「妖魔のものになるくらいなら!」
(……セツ様!、セツ様、………)
「俺にはお前だけなんだ………春香…愛している…」
(……セツ様……愛しています…)
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「春香、洞窟の外にでたぞ。」
あたり一面が真っ白な雪でおおわれている。
しかし、視界は遠くまで見渡せるほど空は晴れており景色は綺麗だった。
お姫様抱っこをされ、シュラの腕の中でうたた寝をしていた春香は声をかけられ、ハッと気づいた。
「ごめんなさい!私ったら寝てしまうなんて…」
「長い間、氷づけになっていたんだ。身体がまだついていけてないのかもしれん。気にしなくて良いぞ。」
(寝顔も可愛らしくて…甘い香りが…ふぅ、胸がドキドキする…落ち着け、私!…しかし、ずいぶんうなされていたような……?)
「ありがとうございます。氷の中で数百年も寝てたのに、また寝ちゃうなんて…寝坊助ですね、私!」
腕の中でニコッとはにかむ春香に、シュラは更に胸が高鳴り、顔を真っ赤にしながら面食らっていた。
!…ドッドッドッド…!
(…か、可愛い!……し、心臓が!かっこよく装っていたが……もう、限界だ…。お姫様抱っこをしている間も胸の鼓動がおさまらなかったのに!胸のドキドキが…うぅ…!?…)
シュラは高鳴る鼓動にどうしたら良いか分からず、恥ずかしさから顔は更に赤くなり、とうとう顔から火をふいてしまった。
「……シュラ様!?」
〜〜 『土っ器、土器の赤鬼くん!
いつも真っ赤なのは恥ずかしがり屋だからかぁ?顔から火をふいてらぁ! 』
『にぃちゃん!赤土から出来る土器も焼けば茶色になるよ!』
『そうだね!あんちゃん!』
『『『たーたったぬたぬ!!!』』』 〜〜
「何でも…ない…春香…。顔の火が当たると危ないから…」
シュラは火が当たらないように春香をおろすと、火をおさえながらサッと離れた。
(幼き時の記憶が……落ち着くのだ!照れておる場合ではない!今の私は、幼き時とはちがうのだから…)
〜〜 『…ってめぇら!私の友達をからかうとは!
いい度胸だ!これでもくらえ!!』
『『『うわぁー!雪女のセツだー!氷づけにされるぞ〜逃げろー!』』』
たぬたぬたぬー!!!
『フンッ!誰がてめぇらなんか!腰抜けたぬきの三兄弟が!あと逃げ方かっこわる!!…….…大丈夫か?シュラ?ほら、私の雪の力で冷やしてやる。はやく消えるだろ?』
『ありがとう、セツ。』 〜〜
いつも助けに来てくれていたな、…セツ……
ジュウゥゥー!
「!?…は、春香!?」
「シュラ様、大丈夫ですか?…お顔の火を雪で消せないものかなと思って……ただ、雪がとけただけですね…。」
春香は、火を何とか消してあげようと直径30cmほどの雪の玉をつくり、シュラの顔に当ててあげた。
「ハハハッ!普通の雪では消えぬ。しばらくすれば火は消えるから…ありがとう、大丈夫だ。幼いときはセツがはやく消えるからと、雪の力を使ってくれていてな。」
「セツ様が!?まぁ!そういえば、セツ様とは古いご友人と話されてましたね。」
「……実は私は赤面症でな。幼い頃から恥ずかしくなると顔から火を吹き…よくからかわれていたんだ。その度にセツが助けてくれた。…自分を変えたくてカッコよく装うようになり、大人になるにつれて普段はおさえられるようになったのだが…、恥ずかしさが頂点に達すると症状がでる…修行が足らぬな…。」
火は落ちついてきたが、情けなさからか顔を両手でおおいシュラは悲しみを含んだ声で話した。
「そんなことないです!私のことを助けてくださって、シュラ様はお強く優しくてカッコ良いですよ!私の前では、装わないで…そのままのシュラ様でいてくださいね!!」
またニコッとはにかんで笑顔をおくる春香に、シュラの顔の火が再びボッと鳴った。(尊い!)
「ごめんなさい!私ったら…シュラ様が恥ずかしくなってしまう事をしたのでしょうか…?」
「大丈夫だ。ありがとう……春香は優しいな。そして素直で純粋で……私はそんなお前に惹かれ……」
「!!………私は優しくても、ましてや素直で純粋でもありません…。」
「…?」
先程まで晴れていた空はいつのまにか曇り空になっており、しんしんと雪が降り始め、冷たい風が吹いてきた。
「!…春香、場所をうつそう。洞窟を探している途中に家屋を見つけてな。誰も住んではおらぬが、暖はとれる。」
シュラが見つけた家屋は外壁はボロボロであったが中の囲炉裏はまだ使える状態で火をつけると暖をとることが出来た。
「春香、暖かいか?」
シュラは、家屋に入ってから無言になり震えていた春香に声をかけた。
「ここの家屋は…。」
小さな声で春香がつぶやいた。
「春香はこの家屋を知っているのか?」
「…ここは、兄様と私が住んでいた家屋です。ここで私は……」
消え入りそうな声で春香はこたえ、両手で顔をおさえながら涙を流した。
「何かわけでもあるのか?いや…無理に話さなくても…。」
「……シュラ様は秘密を教えてくださいましたね。だから…私も……。」
伏せ目がちに話す春香は、気遣ってくれるシュラに数百年もの間、胸に秘めていたことを話しだした。
「……数百年前、私はセツ様に嘘をついたのです。」
「!?…嘘だと?」
「はい…。私はここで兄様と暮らしておりました。…妖魔を憎む兄様…。数百年前のあの日、セツ様と私が恋仲と知った兄様は私を無理矢理……私の身体は穢れてしまいました。セツ様から身体の契りをもとめられた時に、私が穢れてしまっているとセツ様に知られたら…嫌われてしまう…と、私は怖くなって…人として生涯を終えたいから妖魔になれない…と拒否の嘘を…。」
「!?……お前の兄は何ということを…つらいことを話させてしまったな……それは春香のせいではない…春香は穢れてなどおらぬぞ。」
「わ…私、氷づけから解放されたとき、数百年たっていると聞いて喜んだんです…もう、兄様はこの世にいない。私を穢した憎い兄様は…。兄様に一生会わなくてすむんだ…と…。私は幼い頃から共に生きてきた兄様に何てことを!私は優しくなんてありません。」
兄から傷つけられたのにも関わらず、兄を想いポロポロと更に涙をこぼす春香を見て、シュラは胸がチクリと痛み、そして春香を傷つけた兄に怒りがふつふつと湧いた。
「…身体の傷は癒えても、心の傷は癒えない。セツがいれば、春香の心を癒すことが出来るのに…セツも春香が穢れているなんて思わないと思うぞ。セツが今ここにいれば……!………春香、私では駄目か?私はお前に惹かれ、いや一目見た時から……私はお前に恋をした。私がセツの代わりに…。」
シュラはそっと春香の肩を抱き寄せようとしたが、春香がやんわりとそれを制した。
「シュラ様…こんな私に優しく接してくれて嬉しかった…でも…気持ちには応えられません。セツ様の代わりは誰もいません。」
「しかし、セツはもういない!この先、生涯にわたりセツを想って独り生きていくのか!?ならば私と共に……」
「いいえ、セツ様を蘇らせる方法があるのです。」
シュラは言葉に詰まり、春香の思いもよらぬ一言に驚愕したのだった。
……つづく……
切り絵の説明を物語りにしました📝
ここまで読んで頂きありがとうございます😊
今回はシリアス風にしました✨
☆みんなのフォトギャラリーに登録した今回の作品
これ使ってみたいなって思われた方、
みんなのフォトギャラリーからぜひぜひ👍✨
切り絵のセツの手が見えにくかったので、下書きでは、手はこんな感じです🙇♀️
兄様とんでもないですが、家族想いの良い兄様だったのです!だんだん春香に執着気味になり…
春香も何となくその執着に気付き出して、でも心優しかった兄様を知っているからこそ、兄様から離れられない感じです。
つづきはまた後日にUPします🌸
見てもらえて感謝です🙇♀️