はて?の先を生きているー『虎に翼』と考える
10月が怒涛のような忙しさでnoteを更新できてなかった……10月中に更新するので購読されてる方はお待ちくださいな! というわけでものすごく今更な話題になったが、先日PLANETS批評座談会で『虎に翼』について話し、なんとなく思ってたことがよくわかったので、今日はその話。
もはや時流は『おむすび』だが、それはそれとして、私は『虎に翼』という作品が大好きだ。
なぜ好きかというと、このドラマの根幹が、寅子の「はて?」に耳を傾ける場面から始まるからだ。
世間や他人が言語化せず無意識に常識としている空気に対して、「はて?」と疑問を唱える。しかしその「はて?」を誰にも聞いてもらえなかったーー社会はそういうものだよ、そんな疑問は誰も挟まないよ、と話を遮られてきたーー寅子が、はじめて大学という場で、「続けて」と言ってもらえる。そして寅子は、「はじめて最後まで話を聞いてもらった」と法曹の世界を志す。
私はこの第一週の流れがほんとうにほんとうに大好きだ。
宇野さんも言っていたことだが、ある意味、「はて?」は批評の仕事にも近い言葉だ。世間や作品に対して、問いを設定する。はて、なぜ働いていると本が読めなくなるのか? ーー働いてると本が読めないことは、当たり前ではないのでは? はて、娘が母の呪いを解くにはどうしたら? ーー娘が母と密着したままで、いいのか?
はて? という問いの続きに、耳を傾けてもらうこと。寅子にとってそこが仕事の原点であることの美しさ。このドラマの魅力はここにあると思う。
「けど、先生は私の話を遮らなかった」
今もって、なんて美しい台詞なんだろう、と感動する。それくらい、私にとっても大切な言葉だ。
しかしーー同時に『虎に翼』とは、私にとって、今の世の中で「はて?」を言うことの難しさも感じたドラマだった。
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