アイビスペイント 自動選択塗りのメリットとデメリット(『カズオの運行日報』第27話 メイキング)
お絵描きアプリ「アイビスペイント」を使ってマンガを描いてはや1年半になります。
自己流ですが新しい技法もまたGETしたので共有をば。
ブレンドモードもまた1つ新しい使い方を発見したので、それについても書いてます。
多分これクリスタでも同じなんじゃないかなと思います。
今回は「(はみ出し防止に)自動選択で色を塗る時のメリットとデメリット」、自己流「焼き込みリニア」の使い方の話です。
ちなみにギャラリーのフォルダ分け機能の問題もありあれほど「クリスタに乗り換えるぞ!」と宣言しておきながら、挫折したのでまだアイビス使ってます…(爆)。
アイビスにフォルダ分けが実装されたってのもあるんですけど…。
またそれは別記事にでも(^^;)
自動選択で色を塗る
焦げ猫の彩色は現在、人間の肌はエアブラシ塗りにこだわっているので肌の部分は背景に透けないよう白ベタのベースレイヤーが必要になります。
他のカラーベタ部分とは別にそれぞれ影用乗算、必要なら加算レイヤー。
それと「カラー上エアブラシ」のレイヤーを作って、カズオやコージの髪の染めムラや手描きの柄、その他物品の汚れ等もそこに描き込んでいます。
(ちなみにフルロード誌連載原稿に関しては、編集さんのご希望で極力ベタ塗りせずエアブラシ塗りがいいとのことなので人物以外の殆どの彩色レイヤーに白ベタレイヤーをセットにしてます)
本当にデジタル作画の初期でははみ出しを気にせず背景も吹き出しも全部1レイヤーで塗っちゃってました。
で、その「エアブラシ塗り」をはみ出さないようにするために、
初期…塗ってから消しゴムをかけていた
最近…レイヤーを分け、クリッピング
…という方法を使っていたという経緯ですが、素材読み込みにしか使ってなかった「自動選択」でもはみ出さずに塗れるというのを今回娘に教えてもらいました。
コレで今回はドラムセットの塗装のほか、毎度おなじみカズオの私服のチェック柄や加算・乗算塗りもやってみました。
ところがコレ全部そうすればいいかというとそうでもなかったので、結局使い分けています。
ドラムセットのラメ塗装
焦げ猫はメタリックやラメの塗装を今まで、
ベースカラーベタ塗り→自動選択でラメ素材読み込み→色相・彩度・明度、コントラスト調整→必要ならラメのレイヤーを加算にする→透明度調整
…という方法で塗ってたのですが。
コレなんかがそうやって塗ったラメ塗装の例です↓
ドラムセットを塗るのに、よくある深い赤系のラメ塗装にしたかったんですが、どうもうまくいきません。
透明度下げるとキラキラしないし色相や彩度を調整したり、加算レイヤーにしたりしてもちょうどいい色にならない…。
暗い深い赤にするのに「彩度」「透明度」を調整すると加算レイヤーにしてもキラキラしなくなっちゃう。
そしたら娘が「点々ペン使うんだよ」と。
まずベースカラーで深い赤を塗り、自動選択しておいて加算発光レイヤーで明るめのピンクを点々ペンで載せ、同じように暗い色も乗算レイヤーで点々ペンで入れる。
コレがラメ素材読み込みして赤くするより全然ラメ塗装っぽくなったんです。
で、なぜ自動選択かというと、「点々ペン」は「飛び散る」ので。
「こうやってはみ出さなく塗る方法もある」
「キラキラ質感がほしいとき素材読み込みやラメペンだけでなくこういう方法もある」
…というのがすっごく勉強になりました。
オマケ。シンバルのボコボコした質感は、「もこ水彩ペン」で乗算塗りしています。
自動選択塗りのデメリット
はみ出さないための自動選択塗りですが、デメリットもあるので今後はクリッピングと使い分けようと思ってます。
たとえばカズオのシャツ…。
自動選択でエアブラシを入れたら、よく見るとスキマが空いてますよね。
「おわかりいただけただろうか…」ってレベルですが、雑な絵の割にこういうの気になっちゃうんです。
クリッピングだと参照元のベタ塗りを丁寧にしているのでこうならないんですが、たぶん焦げ猫は主線に「天才ペン」というにじみの出るペンを使っているので自動選択に任せるとこういう現象が悪目立ちするのかなとも思います。
以前から素材読み込みやバケツ塗りのときにスキマが空くのは気になっていたので、ベースに同系色をベタ塗りして必要ならGペンで線に沿って塗りつぶすなどの手間はかけていました。
「そんなところ誰も気にしてないよ!」
…と、よく技術面のツッコミが娘から入るのですが、A型気質のうえこだわりが強いADHD過集中癖もありきもちわるい(^^;
たしかにスマホの小さい画面で読まれることが多いと思いますし、元の原稿も横1700px、解像度450dpi→アップロード用にリサイズで横1000pxに落としてるのでわかんないっちゃわかんないですね。
自動選択の精度はほかにも問題を起こす
自動選択と同じ仕組みで塗りつぶしをするのがバケツ塗りですが、コレもひと手間加えないとなりません。
先ほど申しましたように以前からすみっこの鋭角部分や細かいところが塗り残しになるのでペンでスキマ埋めをしてましたが、最近あることに気がつきました。
濃い色の塗りつぶしなどのとき、バックが白だとなぜか主線まで塗りつぶされてモノが一回り大きく見えてしまったり、自動選択が意図しない部分にかかったりという現象が…。
コレ、どういうわけか透明部分であるバックの表示(背景表示)を暗くすることでちゃんと認識するんですよ。
コレも焦げ猫が「天才ペン」という「よく見ると線自体がムラになっているペン」で主線を引いてるからかもしれませんが…。
あと白っぽい色を塗りたいとき、主線で囲ってない部分のバケツ塗りも白バックだと認識しにくいですよね。
コレも透過背景を暗くすることで解決します。
バックが透明なことは変わらないのに、透明部分の背景色の「表示」で認識したりしなかったりというのはなんか不思議です…人間の目じゃないのに。
それでも天才ペンにこだわる
こういう不便があっても焦げ猫は「天才ペン」を使い続けています。
なにゆえ「天才」と名前がついてるのか謎ですが(^^;)
いちど、普通に「Gペン」を使ってみたんですが…(『グランジの神様』第10話』)
入り抜きの細さは設定できるのでアナログっぽい味が出るのは同じなんですが、どうもボタッとするようなモタっとするような重い仕上がりになるなと感じたので、この回のみでやめました。
焦げ猫のようなユルい作風の場合かすれたり滲んだりするペンのほうが相性がいいというのと、作業着やトラックのシャーシなど黒に近い濃い色の中に線がある場合にきれいに真っ黒な線だと「そこに線があるのがわかりにくくなる」からです。
天才ペンだと線の中にヌケがあるので「綺麗な仕上がり」とはいえないけれど線の存在はわかりやすいです。
ブレンドモード「焼き込みリニア」の使い方
あと最近、日本神話シリーズ(マンガニッポン神さま話)や「三途の川の渡りかた」なんかにも使うようになったのが「焼き込みリニア」。
ブレンドモードの減算の計算式とか原理は数学や物理が苦手でサッパリわからないまま使っているのですが…。
単純に、夜の暗さを表現したいとき便利なんですよね。
吹き出しやテキストなど暗くなっては困るレイヤーと全体的に暗くしたい絵のレイヤーの間に、紺や茶色系の色でコマを塗り潰し「焼き込みリニア」にしたレイヤーを乗せて透明度の調整で明るさの調整をすればいいだけ。
灯りが当たっている表現をしたいときは、そこだけ消しゴムをかけ、さらに強調したければ加算発光も使うという感じです。
たとえばこのコマ。
こういう構造にしています。
焼き込みリニアを入れないとこういう感じです↓
社屋2階の会議室の窓だけ灯りがついているのを表現するために、焼き込みリニアのレイヤーでは窓部分と人物前方を消しゴムで消し(人物は消しゴム形状にエアブラシも使います)、窓の色に奥のレイヤーでエアブラシ塗りした加算発光レイヤーをプラスしています。
ここでも「自動選択→レイヤーのクリア」にすれば楽じゃん、と思いましたが、絶対フチが消え残るので手作業は必須…なのでこの場合も自動選択は使いません。
たしか昔は普通に暗い色でコマを塗り潰した乗算レイヤーを乗せて透明度を調整してただけだったんですが、いま当時の原稿のレイヤー構造を見たらカラーが結合してあってもはやどうやってたのかわかりませんでした(^^;;
この方法(塗りつぶしの乗算レイヤーを載せ透明度調整)だと色が薄いところやエアブラシの塗りムラの白っぽいところに効果がかからず白く抜けるんですよね。
ちなみに焦げ猫は「メガネ」とか「ガラス」は普通レイヤーで色塗って透明度調整してるだけですが、同じく透明度調整するなら「乗算レイヤー」でなくても?と思うとよろしくないです。
「普通」での透明度調整は「そのモノにより向こうにあるものが色ついて見える場合」、空気そのものを暗くしたい場合に「焼き込みリニア」と使い分けております。
ブレンドモードが普通のままだと線もすべてぼやけた感じになるので暗い場所の表現にはオススメしません。
今回の小ネタ
さてさて技術面のお話は以上です。
第27話の小ネタです。
パズー
隠れネタ。
小学校のブラスバンド部のシーン…マンガ本編では前列の子や字が被ってるうえに楽器が見切れてるのでほとんど見えないのですが、じつはトランペットを吹いてる子がジブリ作品「天空の城ラピュタ」のパズーのコスプレしてます。
見えなくなっちゃう部分なのにこだわってしまう悪いクセです(汗)。
社長の奥様
12ページ目中段のコマ。
社長がギターを弾いてるそばで、シレっと奥様初登場。
第8話で植松の煽り運転を社長にチクった奥様です(^^;;
社長のモデルが焦げ猫の父、孫ののりちゃんが娘、なので当然奥様は焦げ猫の母です。
処女作「オバケ屋敷、神さま屋敷」には登場してます。
年齢の割には身綺麗な人で、90歳になったいまもどこへも出かける予定がなくても毎日起きたら服を着替えアクセサリーを着けお化粧をする人です。
趣味は若いころは日舞、現在はフラダンス。
好きなモノはコーヒーとアメリカ式の激甘スイーツ。
そして実際、演歌は聴かずプレスリーや初期ビートルズ、サイモン&ガーファンクル、ハンク・ウィリアムス(カントリー)を愛聴していました。
育ちのいいセレブ奥様に見えますが、本人は子だくさん農家の末のほうの生まれで、若いころ米軍基地関係の仕事をしていたので趣味がハイカラになったものと思われます。
「龍神・稲荷・天狗・弁天」の属性わけでいうと、典型的な「弁天属性」の女性です。
ジャミロクワイ
同じコマでジャミロクワイのコスプレをしている「のりちゃん」。
ここ数話登場してなかったので補足です。
本作を通して読んで頂いている読者さんはご存知ですが、社長の孫でありカズオの元カノであり(中学生時代の約1ヶ月のプラトニックでした)、現在KNロジの事務員です。
モデルはわたしの娘で、音楽はアシッドジャズ好き設定。
本人もルパンのサントラやジャミロクワイは好きで、英語得意じゃないのになぜか「ヴァーチャル・インサニティ」だけはカラオケで歌わせると流暢なんです(爆)。
あの曲の有名なPVに出てくるゴキブリみたいなのはどうやら「ダイオウグソクムシ」という深海生物らしいのですが、マンガに描いてあるのはまごうことなきゴキブリです(爆)。
よーく見ないとわからないと思いますが、帽子のもこもこ質感は黒のベタ塗りの上に「雲ペン」で濃いグレーを入れています。
のりちゃんがカズオと付き合っていたエピソードはこちらです↓
この小ネタ記事のマンガ本編はこちらです↓
さてさて、「カズオの運行日報」は第28話がもう出来上がってますので、もうしばしお待ちを〜。