見えなくても朗読コンテスト
音声sNS、clubhouseでお世話になっている脚本家の今井雅子先生から指令が来た。
「Noteで{♯想像しなかった未来}を募集しています。膝で未来が変わった人、どしど
し書いて応募しましょう。」
「膝」って何とちょっとでも引っかかった人、以下のリンクをお読みください。
こちらは2021年5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短
編小説「膝枕」(通称「正調膝枕」)の派生作品となっております。
二次創作noteまとめは短編小説「膝枕」と派生作品を、朗読リレーの経緯、膝番号、
Hizapedia(膝語辞典)などの舞台裏noteまとめは「膝枕リレー」楽屋をどうぞ。
短編小説「膝枕」と派生作品|脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー )|n
ote
5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短編小説「膝枕」
の正調、アレンジ、外伝まとめ。
note.com
こちらの朗読コンテストを知ったのは、そんな今井先生が膝枕リレーのオープンチャ
ットで紹介してくれたから。
朗読歴は長いけれど、コンテストなんて存在すら知らなかった。そんなのがあるなら
自分の実力はなんぼのものかいっちょダメもとでエントリーしてみるべと思い立った
。
せめて、目が見えなくても朗読をやっている人がいるのだという事だけでも審査員の
人たちに知ってもらえれば、何らかの形で爪痕を残せれば!!
こちらのコンテストでは、毎年出身地が同じ作家何名かの作品の中から決められた抜
粋個所を予選課題として朗読し、提出する事になっている。
今年は金沢出身の作家6名。それぞれの作品から抜粋箇所が指定された。
どの作品を選ぼうか。作品選びから勝負は始まる。
しかし見えないとそこら辺からもう一朝一夕にはいかない。
まず最初のハードルは今井先生が送ってくれた課題作品のPDFをボイスオーバーで読
む事。
抜粋個所の最初のフレーズと最後のフレーズが書いてあるようだけれど、どれが誰の
どの作品かが音声だけだとよくわからない。
かろうじて何となくわかったのが、最後の室生犀星の「幼年時代」だったので1もに
もなくそれを選ぶ。
それから視覚障害者用音訳図書の中から該当作品を探してカセットに吹き込む。
私は中途失明なので、文字も点字も読めない。なのでカセットから流れてくる音声を
聞きながら朗読をしている。
なぜカセットかというと、デジタルの機械はプレイやストップを押してから、一拍お
いてから動作が始まるので、自分の読みのペースを作れないからだ。
音源はUSBかCDで送るようにという指示があったので、どうするべと考えあぐねた。
当然iPhoneのボイスメモで録音した方が音がいいに決まっている。でもそれをMP3に
してCDに焼くなんて私のような情弱にはできる気がしない。
友人にも相談して、視覚障害者用音訳図書再生機で録音もできるPTR2という今はもう
売っていない機械で録音することにした。
ボイスメモほど音質はよくないけれど、大切なのは読み方。
しかし1つ困った事があった。
ボイスメモと違って間違えたら最初から全部読み直さなければならない。
5分くらいの文章だけれど、緊張すると間違える。それはもう何度も何度も読み直し
、とりあえず最後まで読み切った。やれやれ(汗)
さすがにエントリーシートの書き込みや封筒のあて名書きは自力ではできないので、
ヘルパーさんにお願いした。そしていざ発送!!
この段階でもうやり切った気になっていたけれど、忘れた頃に予選通過のメールが届
いた。マジか!!
しかしそれからも見えない壁は立ちふさがった。
所定のWordファイルに当日読む本の出展やその本の何ページから何ページを読むかな
どの細かいことを書いたり、自己紹介や抜粋箇所までのあらすじなどを書いて添付フ
ァイルで送らなければならなかった。
「青い枠の中に書いてください」とかもう見えなければ完全無理ゲーだ。
さらに自分は左寄せで書いているつもりなのに確認すると何かずれている気がする。
エディターで書いたテキストをWordに貼り付けても、どこに貼り付けてあるかがよく
わからない。
Word、わけわからん(涙)
私は目が見えないから当日はガイドヘルパーと行く事、点字も文字も読めないからカ
セットを使って朗読することなどと一緒に、Wordがうじゃじゃけていてうまく記入で
きない旨を先方の事務局に伝えた。
見える人にお願いしてやってもらうという手もあったけれど、見えない私が単独でど
こまでやれるか挑戦してみたかったのである。
そしてそれが後発の視覚障害者につながってくれればと思った。
返信はすぐに来た。さすが学校主催、うじゃじゃけたWordファイルはとりあえず読め
るのでO.K.。ガイド同伴はぜひにとの事だった。
カセットを使っての朗読はどんな感じなのでしょうかという質問が来たので、それに
返事を送ったらちゃんとご理解いただけた。
柔軟な対応に海よりも深く感謝!
そして大会当日がやってきた。
私が関わっている視覚障害者中心の朗読グループ「こうばこの会」の友達がガイドヘ
ルプとして一緒に来てくれることになっていた。
こうばこの会ホームページ
http://www.koubako.jp/
ところが、いきなり彼女が使っている小田急線が止まってしまい危うく遅刻しそうに
なった。けれど、振り替え輸送でどうにか時間内に会場入り。
会場に入って舞台の方まで誘導してもらったけれど、行けども行けども舞台に着かな
い。どんな広いホールなんだとガイドの友達に聞いたところ、400人は入るらしいホ
ールだとか。
普段こうばこの公演でも図書館朗読会でも、お客さんは多くて50人から100人程度。
こんなに大きな舞台に立てる事はめったにない。それだけでもドキドキだ。
午前中は舞台の出入りとマイクテストのリハーサルをやった。
初めに青年の部の中高生、それから我々一般の部だ。
順番はくじ引きで決めたそうだが、私は青年の部6人の後、一般の部の3番目。全体で
は9番目に読むことになった。
ちなみに出場者は青年の部6人と一般の部8人。ほとんど女性で男性は一般の部に1名
いただけ。
そういえばどこの朗読サークルも構成員はほとんど女性だったっけ。
リハーサルが終わった後は自由時間。本番10分前には戻ってきてくださいと言われた
。
私たちは控え室でお弁当を食べたり無駄話をしたりしていたけれど、その間に青年の
部の中高生は引率の先生と最後の仕上げをやっていた。皆放送部のガチ勢らしい。
そしていよいよ本番。1番初めに読んだ中学生がうますぎてビビる。
さすがに本選とあって青年の部も一般の部も皆レベルが高い。
何回も挑戦してやっと本選に出ることができたなんて話を聞くと、私みたいなポッと
出が来ていいような大会ではないのではないかと一層小さくなる。
そしていよいよ自分の番が回ってきた。やっぱりいつものこうばこの舞台や図書館朗
読とは緊迫感が違うが、隣に友達がいてくれたことがとても心強かった。
会場は広いしどうなるかと思ったけれど、朗読を始めるともうこれは見えないもん勝
ち。お客さんが何人いるかなんて見えないからわからない。いつもの図書館朗読会の
ような調子で読めた。1部あまがみしてしまったのもご愛嬌。
それから審査員の話し合いタイムがあり、結果発表。
青年の部も一般の部も最優秀賞一名と優秀賞二名が選ばれる。
青年の部は最初に読んだ彼女が最優秀賞。やっぱり頭1つ抜けてたもんな。
一般の部は私含めて4,5人がどんぐりだった。こりゃ審査員の好みで決まるかなとい
う感じだった。
そしていよいよ発表。最優秀賞は思った通り、どんぐりの中でも頭半分抜けてた人だ
った。
そして優秀賞になんと自分ともう一人が選ばれた!!
どんぐりの中で誰が選ばれても納得だった。けれど、なぜ自分かと考えた時、自分に
アドバンテージがあったのはセリフ部分だったのではないだろうか。
私は中高演劇部で、朗読は見えなくなってから始めた。思い立って朗読教室に入った
時、まず大先生に言われたのが「セリフはいいけど地の文かちょっと」だった。
朗読は地の文とセリフ部分の両輪。人によってどちらが得意とか不得意意がある。
地の分の読みは皆50歩100歩だった。
どんぐりの中にもセリフがうまい人もいた。けれど、選んだ作品の当たり外れもあっ
ただろうし、私が飛び道具を使っていたという事も全く何の影響もなかったとは言え
ないだろう。
室生犀星、すごく消極的に選んだけれど、結果的には私に一番合っていたのかもしれ
ない。
カセットを使った朗読も審査員の偉い人たちに認知してもらえたし、とにかく視覚障
害者も朗読をやるという事を認識してもらったという事が今回一番の収穫だった。
こうばこの会の見えないお友達、次は君たちの番だ!!
そして最初に戻るけれど、コンテストの情報を投げてくださった今井先生、私にも想
像していなかった未来がやってきましたよ。
当日は今井先生はじめ膝枕リレー仲間とこうばこの会の友達がリアル応援に来てくれ
た。
おかげさまで取れたよ、優秀賞!!
こっちは水泳のインチキ金メダルとは違ってちゃんと偉いんだよ!!
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