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読書感想 今井雅子作「さすらい駅わすれもの室」

クラブハウスの朗読ルームでお世話になっている今井雅子先生の連作短編「さすらい
駅わすれもの室」がキンドル出版された。

それに続いて更に「さすらい駅わすれもの室 臨時停車」という作品が登場。。

本編はもともと買ってあったので、二次創作出版と共に二冊一気読みした。


本編の「さすらい駅」はわすれもの室の室長(?)が忘れ物を探しに来た人と探し物と
の関りを通していろいろな人の心の機微にふれていく心温まる短編集。

年齢も性別も背景も違う人たちが「わすれもの室」を訪ねてくる。「傘もカバンも10
0円で買える時代」、彼らは一体何を探しに来たのだろうか。

全編通して優しい気持ちになれるストーリーでこちらもクラブハウスで朗読させてい
ただいている。


そして「臨時停車」。こちらは本家本元の二次創作。いわゆる「うすい本」だ。
クラブハウスで朗読してねと先生自らが書き下ろしてくれた作品たちで、ご自身も「
クラブハウスの朗読部屋の楽しさが伝われば」とおっしゃっている。

何より面白いのが先生自らご自身の作品、ええ話系の「さすらい駅」と絵本「わにの
だんす」と創作落語「禁じられた金次郎」という全く方向性の違う作品をミックスし
てしまっているところ。

ちなみに朗読リレーの発端となった作品「膝枕」の中にも既にいろいろな人が二次創
作でわにやら金次郎を登場させていたりしている。もうクラブハウスの中ではカオス
な世界観は共有されている?
それに積極的に悪乗りする今井先生!!(絶賛)


本編も二次創作もNoteで読んだりクラブハウスでの朗読を楽しませていただいていた
けれど、kindleで改めてまとめ読みするのも楽しかった。


小節も楽しかったけれど、私が今回特に紹介したいのは先生のプロフィールこと「著
者について」。
これだけでも一つの作品になっている。
とにかく面白いのだ。


その中で特に目からうろこだったのは外国語の下り。
先生はアメリカ留学の経験もあり、英語が堪能だという事は周知の事実。他に外国語
での失敗談なんかも面白おかしく紹介してくださっているのでいくつかの言語を勉強
されていることは知っていた。


よく「私は英語ができる」とか「できない」とかいうけれど、その基準はどこにある
のか。TOICなら何点以上、英検なら1級以上とかそういう基準があるわけではないか
ら自己申告になる。

以前「ドイツ語ができる」と言っていた人がいた。私なんぞは大学でドイツ語専攻だ
ったのはもはやネタレベルにわけわからん状態になってしまったのに、第2外国語で
習っただけのドイツ語ができるなんてなんてすごいんだと思っていたけれど、よくよ
く聞いてみると??という感じ。挨拶程度!?
それなら私も小学校で習った「フランス語ができる」事にしていいの?

いずれにしろ本人が嘘つく意図なく言っているのだから彼女の「できる」は否定でき
ない


数多くの言語を習得している今井先生。英語は別格としてもそれぞれ履修レベルに違
いがあるだろう。そこのところを「クロワッサンをねだれる程度のフランス語」など
具体的に書いてくれているのが面白かった。

そっか、「できる」に対してはこういう具体的な説明があればいいのだ。
ちなみに私の場合は以下のようになるのか。
電車の中で突然「あなたはどうして次の駅がわかるのですか」と聞いてきた謎のお爺
さんに返答できるくらいの英語。
レストランでお勧めを聞けるくらいのドイツ語。
挨拶プラスアルファ程度のフランス語というレベルだろうか。

ちなみにフランス語は無駄に発音がいいらしく、サロン・ド・ショコラというイベン
トでショコラティエに「メルシー」と「セボン」を連発していたら、通訳のお姉さん
に「留学経験があるのですか」と聞かれた事がある。
いやいや、私は「メルシー」と「セボン」しか言ってないから(汗)


話は明後日の方に行ってしまったが、とにかく今井先生の自己紹介が秀逸なのだ。

本編でほっこりして、二次創作で笑って、祖のあとの「著者について」も端から端ま
で堪能できるので、ぜひ最後の最後まで完読してほしい。

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