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見えなくても餃子を作りたい

視覚障害者は料理教室に入れてもらえない。
なぜなら見よう見まねができないからだ。その上人のふり見て我が降り直せない。

これは料理に限らない。スポーツであれ楽器であれ、グループレッスンは難しい。基
本的にマンツーマンでのレッスンでなければ他の人に迷惑はかかるし自分も体得する
のが難しくなる。


障害の有無にかかわらず、最近は料理をする人としない人と二極化していると思って
いた。
冷凍食品であれお弁当であれおいしいものが簡単に手に入るから料理なんてめんどく
さいという私のようなずぼらタイプト料理が趣味です、きわめてマスみたいなタイプ
だ。


そんな私の適当な認識に反し、目が見えなくても特に女の人で料理を習いたいと言う
人は一定数いる。極めなくてもいいけれど、一般家庭料理を作れるようになりたいと
いう事だ。
特に子供のいるお母さんたち。

子供に安全な手作りご飯をという事もあるけれど、一定数の家族がいるとやはり自炊
をしなければかなりの費用がかかってしまう。1人ならばいいけれどデパ地下のサラ
ダなんて100グラムで平気で500円オーバーなんてのもあったりするから家族4人で400
g2000円!!おいそれとは手を出せないだろう。


そんな事情もあり料理上手なヘルパーさんが視覚障害者何人かに料理を教えることに
なった。それも餃子!!

餃子なんて餃子の満州でかなり安く売っていると思うんだけど、やはり手作り餃子と
言うのには夢があるのだろうか。


習いたい人を募集したらあちこちに情報が駆け巡り、定員以上の希望者が来てしまっ
たらしい。恐るべし、盲人ネットワーク!!
断るのも心苦しいのでそのままの人数で餃子作り教室を開いたそうだ。


そして一人ひとりに餃子の包み方を教えていたら案の定お昼までに焼くところまでい
かなかったらしい。

講師のヘルパーさんは次回は講習を複数回に分けて少人数制にするなど、個々にきめ
細かい対応ができるような形にしたいと言っていた。


今回は人数と時間配分が問題だったのだが、私はつい聞いてしまった。「そんなに何
人もいて誰も餃子の包み方を知らなかったの?」

どうやら参加者7人位いた中で餃子の包み方を知らない人がほとんどだったそうだ。
もちろん全員大人である。


私は見えていた頃友達と餃子パーティーをしたことがあるけれど、女の子も男の子も
皆普通に餃子を包んで焼いていたような気がする。

私は小さい頃に母がやっているのを見ながら一緒に作っていた。でも目の見えない人
たちにあのひだの部分を作るやり方を実際に手をとって教えるのはかなり時間もかか
り根気のいること。皮のへりに水を塗るとひだを作る前にくっついてしまう。くっつ
く前にひだを作るのが意外と難しかったようだ。


確かに日々ご飯を作っている親御さんが目の見えない子供に時間と労力を割いて餃子
の包み方を教えるのはあまり現実的ではない。しかも小さいころから見えない人たち
は盲学校の寮で育った人が多いから、日常的に親と料理をするという機会があまりな
いだろう。

そして見えない本人も餃子の形を確認すべく、焼く前にしろ後にしろこれから食べる
ものをべたべた触るわけにもいかない。

家庭科の時間も前述のヘルパーさん同様、先生1人に対して5~6人の生徒がいた場合
、授業の中で全員の手を取って餃子の包み方を教えるというのは時間的に無理がある

他にも簡単で美味しくて栄養価の高いメニューはたくさんあるのだから授業ではそち
らを選ぶだろう。
そして今は焼くだけでおいしい餃子が市販で売っている。


私が小さかった70年代にはそんなものはなかったので母と一緒に一つ一つ手作りをし
ていたけれど、中学生高校生になってからはやった記憶がない。


お母さんが料理上手で本人も料理に興味があったという視覚障碍者で徹底的に仕込ま
れたという人もいるけれど、どうやら視覚障害者にとって餃子への道は険しいようだ



私は日常生活動作が全部できるようになってから目が見えなくなったけれど、小さい
頃から見えない人たちは言葉では説明しにくいリボン結びなどもどうやって体得して
いるのだろう。

そういえば見えない人の中にはタオルを4つにたためないとか泡立て器を触ったこと
がないという人がいるらしいと聞いたことがある。先日はうどんを初めて食べたとい
う20台の人の話を聞いた。


餃子作りを習いに来た人たちは少なくとも積極的に料理を体得しようとしている人た
ちだ。アシスタントを動員するとか少人数制にするとかして、どうにか皆餃子だけで
なくいろいろな料理を体得してほしい。

めんどくさい星人の私はラーメン屋のお持ち帰りか生協の冷凍餃子で大満足ですけど
ね。

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