猫の目を借りたい
子供の頃、夜起きてトイレに行く時は怖かった。
やっぱり、なんとなくお化けが出そうな気がしたから。
それに、学校でお風呂に入っている時は後ろを振り向いてはいけないとか、首にタオルを巻いておかないと鎌で切られてしまうなんていうバカバカしい話が流行ってたから。
信じてはいないけれども、暗いトイレのドアを開けることは、何となく怖かった。
結局のところ、これをやったらどうなる?そうなったらその次は?という、次になにが来るか分からないものがあって、それが暗闇の中から現れるから怖いんだと思う。
光の中から出てくるなら怖くはないから。
私は仕事で、あと一歩が怖くて踏み出せない部分がある。
そのせいで何度泣かされても、それでもなお足が出ない。
理由はいつも「私が相手の立場だったら嫌だから」というもの。
嫌だというのは、要は暗さだ。
明かりさえ灯せたら乗り越えられると言い聞かせるものの、本当は灯りを灯して、何かが見えたら怖い。
猫の目があれば明かりすら要らなくなるのに。