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豊津徳07【HozuTalk】「垂線」

東京画廊で開催中の展示『小清水漸 垂線』の解説を、東京画廊山本豊津とバラエティプロデューサー角田陽一郎で行います。

東京画廊
小清水漸 垂線 2021/3/16–4/17 /ウェブサイト

小清水垂直展森様演奏(画廊放送)/YouTube

 豊津徳も寿司特も週間ICUCも、未熟者の私にとってはノートを用意して聞きたいもの、できれば教科書とか読み物として欲しいもの。文字起こしが趣味になって本当によかった。
 私の趣味の文字起こし。月イチのお楽しみ【豊津徳07】です。

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角田 今日はなんと!ロケ配信をやってみようかなーなんて思ってましてですね、やっております。こちらは銀座のとあるビルでございますが、今からちょっとカメラをチェンジしますと…あ!豊津さん(笑)

豊津 どうも!

角田 どうも。おはようございます。

豊津 おはようございます。お待ちしておりました。

角田 ついに東京画廊に(笑) 来ましたね〜!今日あれですよね、東京アートフェア。

豊津 そう。国際フォーラムで7時までアートフェアがやってまして。

角田 今急いで帰ってきた!

豊津 急いで帰ってきた。

角田 すいません。こんな忙しい時に。

豊津 いえいえ、どういたしまして。

角田 こんな二人で、趣味のようなYouTubeを(笑)

豊津 はい。大丈夫です。

角田 はい。で、今日、今、東京画廊では展覧会をやってるということで。

豊津 そうですね。先週の土曜日から。

角田 ここに名前書いてありますね。

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豊津 小清水漸先生の展覧会で、垂線(すいせん)という展覧会です。

角田 垂線。Perpendicular Line 。

豊津 そうです。僕にはこれは読めないんです。

角田 読めないですよね?垂直ってバーティカルとかですもんね。なるほど。これ、まさに3月13日から始まったばっかのやつを。

豊津 そうです。4月17日まで展覧会開いております。今回はちょっとね、面白い嗜好を用意してありますので。

角田 うわ!楽しみ!

豊津 中に入っていただければ、またご説明させていただきます。

角田 豊津さん、いつもよりちょっとべらんめぇ調じゃなくなってますね(笑)

豊津 え?

角田 いつもよりべらんめぇ調じゃなくなってます。

豊津 あ、そう?(笑) やっぱりね、緊張してる(笑)

角田 (笑) ということで今日は早速、東京画廊に入らせて頂きたいと思います。

豊津 はい、いらっしゃいませ〜!

角田 よろしくお願いしまーす!おおおーっ!さっそく、早速入ってますよ。おお?これ、すごいですね。

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豊津 これはあの垂線と言うように、天井からワイヤーで石を吊るしてるんです。

角田 あ、これ、吊るしたんですね?

豊津 はい。そうです。

角田 あ、ホントだ、浮いてる…。

豊津 浮いてるでしょ?だから我々は重力の制限の中で生きてるということをこの作品で感じられると面白いと思うんですよね。

角田 そっか。だから…。面白いですね、これ、だから浮いてるんだけど限りなく地面にあるような感じなんだけど、それが実はワイヤーというか、で、吊るされていると。

豊津 だから天井が無い空間ではこの作品は成立しないというわけですね。

角田 そっか!ってことはつまりギャラリーとか美術館でないと。

豊津 そういうことです。だから外、野外だと出来ないということね。

角田 へぇ〜!

豊津 この作品の面白いところは、このワイヤーとこのワイヤーが平行ではないんですよ。

角田 ん?ん??どいうこと?ちょっと待ってください…???どのワイヤーとどのワイヤーですか?

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豊津 このワイヤーとこのワイヤーは平行じゃないんですよ。なぜかと言うと、重力は中心に向うから、つぼんでるんです。正確に言うと

角田 そっか!だから0.00何度くらい傾きが違うと。うわ!面白い!垂線って垂直ってことだから90度だと思ってたんですけど、だから89.9999……

豊津 そうそう。つぼんでるんです。そうすると平行っていう概念は観念的には成立するけど、現実にはないってことです。

角田 なるほどね。

豊津 だから美術っていうのは非常に観念的に思うけど、現実に作品を作ると現実と観念がずれてることが分かるのが面白いんじゃないかと思うんです。

角田 超おもしろいです!なるほど。でも、これ、いつも豊津さんにね、今回の東京画廊でこういうのやってるのって、──ちょっとカメラを変えます、ボク映らないから──、なんでこれをこういう風にやってるかというと、その話を聞かないで吊るしてるのをただ見ただけだと分かんないですよね。ただワイヤーがあるじゃん、みたいな。こちらにもワイヤーがあるじゃんみたいな。これって別にただの吊るしがあるだけじゃないですか。何が作品なんですか?ってことが分からないですよね。ところが今豊津さんのね、ちょっと、だから平行じゃないっていう話とか聞きながらこれを見ると、途端にドキドキしはじめますね。

豊津 だからもう1つ大事なことは、垂直であるってことが、日本の文化の構造でものすごく大事な概念なんですよ。一番いいのが那智の滝ですね。

角田 ああ!滝って、垂直だ。

豊津 垂直に下りてきた水が水平面に当たって、そこに神が宿るっていうのが日本の文化なんですよ。

角田 ぅわあー、めっちゃくちゃ面白い。。。

豊津 そうすると、小清水さんは那智の滝をこの垂直の線だけで現代的にアレンジしてる。

角田 描いてるわけですね!

豊津 そうそう。それから本地垂迹(ほんちすいじゃく)って言葉があるでしょ?

角田 ああ、あの、神道は仏教の日本に来た時の生まれ変わりというか。

豊津 そうそう。それの中にも垂線、垂直っていう概念があるの。

角田 あっ、そうなんですか!

豊津 そう。それで今回はこの石は11個あるんですが、、、

角田 ちょっと待ってください、11個ですか?1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11個!

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豊津 11個。

角田 意味があるんですか?!11個。

豊津 で、元々は14個でやりたかったの。なぜ14個かというと、龍安寺の石庭が14個の石で出来てるの。

角田 ああああぁぁ、ボク今、龍安寺って何個あるんですか?とか、聞こうと思ったんですけど、間違ってたら嫌だから聞かなかったんですけど。龍安寺は14個で、こちらは11個。

豊津 先生は最初14個で考えてたんだけど、途中でそれが…忘れちゃったらしいの(笑)

角田 (笑)

豊津 で、作ったら11個だったっていう(笑) ちょっと面白い話なんだけど。

角田 これは11に意味があるというより、忘れちゃったと(笑)

豊津 忘れちゃったの(笑) だけど人間のなせる技ですから。

角田 (笑) 面白いですね!だから、そっか、さっきのね、本地垂迹とか神様みたいな話をしてるんだけど、実はこれを作ってるのは人間ですからね。お茶目な3つ足りないみたいなのがあると。

豊津 それで龍安寺の石庭から先生はこの案を考えたから、元々は石庭という概念がベースにあるわけですよ。世界の庭で石が動くのはこれだけなんですよ。

角田 …っ!ああー!そういうことか。

豊津 これね、本当に空調入れると揺れるんですよ。

角田 うん、だってボクが入ってきてちょっと揺れてましたもんね。

豊津 そう。揺れますからね。

角田 これちょっと揺らしてもいいんですか?

豊津 揺らしちゃいけないんです。触っちゃいけないんです。

角田 そっか、そっか、触っちゃ駄目ですよね。展示ですからね。

豊津 そう。そうするとこの垂直にぶら下がってるということは、極端に言うと龍安寺の石庭って白い砂の上に置いてあるわけでしょ?あれは海を表してるんじゃないかということですよね。そうすると海の上に石が浮いてるのはおかしいじゃない。そうすると浮いてるってことがものすごく現代的になるわけですね。スターウォーズとかね。我々は今バーチャルに、上に浮いてるわけですよ。宮崎駿さんのハウルの動く城、あれも浮いてる。そうすると浮いてるということはものすごく現代的で、少なくとも現代の、彼がこれをやるまでに石を浮かすという作品は無かったんですよ。

角田 はぁぁぁ、なるほどねぇ。そういうことですね。

豊津 そうすると石が動くとね、下に影が映るんです。この影がまた重要なんです。

角田 ぅわ…、これ影も意味があるわけですね?

豊津 そうです。影の意味があるのはうちの床がPタイルだからですよね。今、現代の画廊で床をPタイル引いてるのうちだけだと思います。

角田 あ。そうか。…これわざとなんですか?

豊津 うちは現代の画廊というか、近代で上がったから、近代の、これがPタイルですよね。今だいたいコンクリート打ちっぱなしか、少なくとも四角い絨毯引くでしょ?あれが現代だとすると、近代はPタイルだから、東京画廊は近代で始まったんでPタイルを置いてあるわけです。

角田 これ、ちなみにTBSも昔これだったんですよ。

豊津 あぁ、だから一緒、、、

角田 これ、一尺ですよね?

豊津 そうです。

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角田 Pタイルは角から角までちょうど一尺ですもんね。だからボクらがセット作るときに大体三尺だねって言うと、このタイル見てタイル3つ分じゃんとか言ってたんですけど。今は絨毯です。だからまさに今の美術館みんなそうですよね。

豊津 で、何が大事かってギャラリーの空間をホワイトキューブって言うでしょ?ってことはキューブって言う空間の中に現代美術が展開してるからホワイトキューブって言って、世界中の美術館やギャラリーはキューブって言うんですよ。だからそのキューブを見やすくするためにPタイルを残したわけ。だからこれキューブの連続じゃない。

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角田 確かに!確かに!!ほら、こう見るとキューブの連続。あ、だから…、分かった!分かりましたよ豊津さん!つまりこの垂線、垂直の線とこの平行の線がPタイルで交わってる。だからこのPタイルの線自体もアートなんだ。

豊津 そう。だからPタイルの平行線。下の床の水平と小清水さんの垂直が成立してこの作品の意味になるわけです。

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角田 面白いぃぃぃ!

豊津 そこまで気がつく人はまあ、見にきた人でほとんどいいません。

角田 でもカメラでこう見れば分かりますね。はぁぁぁ面白いっすね。Pタイルまでデザインの一部なのかということなんて全然想像もしなかったです。

豊津 だからやっぱり僕たちはアーティストに空間を提供するわけだから、東京画廊の空間というのはうちの画廊のコンテクストにとって大事なんですよ。だからうちは全てのデザインがキューブでできてますから。

角田 うん。出来てますよね。

豊津 そういう様なことで今回やって、で、水平の面をもう一つ考えたいなと思ったので、…ここに。ワイヤーが。テグスが。(笑)

角田 あれ?待ってください…これ、あ、分かった!こちらのさっき触っちゃいけないと言われた垂線の方はワイヤーなんだけど。これ、一本ここに平行の、これワイヤー…?テグス?

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豊津 テグスです。全部で何本、(奥まで)ずーっとあじゃない?

角田 1本、2本、3本、4本、5本?…6本、7本。ああ、7本ある。こうだ、こう見ればいいんだ。これ3本ありますからね。これがずーっとこう。なるほど。

豊津 今回の展覧会は、もう、非常に静的な空間なんで、動的な人間の感覚を出したいなと思ったんです。そのために音楽を入れようと。音をね。で、音を入れることによって、音ってのは振動だから、先ほど言った様に石が微妙に揺れるにも振動だから、その振動を音で表現しようと思って。

角田 分かりました!この垂線の線は弦になってるってこと?

豊津 そう。で、これが弦で、この白い箱が共鳴箱。

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角田 うわぁー!そういうことなんだ!!これですよ、皆さん。これ。あ、だから共鳴箱から弦が出てて。

豊津 そう。だからここをつまんで… ♪ベンッ(共鳴箱に一歩近づいて)♪ベンッ(共鳴箱にもう一歩近づいて)♪ベンッ この距離で音が違うじゃないですか。だからバイオリンって指で押さえるでしょ。

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角田 音が違う!!

豊津 これで音階ができるわけです。

角田 (笑)

豊津 この音階でもって11のいわゆる石を、11音ということで、音の種類を11で楽譜を作って作曲したわけです。

角田 ちょっと待ってください、話が早いぞ〜!待ってぇ!楽譜がどこにあるんだ…楽譜は、楽譜は…これですね。

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豊津 そうです。

角田 はぁぁ、この楽譜。これ、ここのこの展示自体が楽器になってるんだ。だからこれが弦で、箱は共鳴板で、音は弾くところで変わるわけだから、それを作曲したのが、これ?!(笑)

豊津 これが森円花さんっていう今26歳くらいの現代音楽の一柳慧賞の作曲賞を最年少で取った森円花さんが作曲した楽譜なんです。

角田 え?ってことは森円花さんはここで、この楽器で、ここで作曲したってことですか?

豊津 そう。ここでじゃないですよ。先生のコンセプトを聞いて、それで円花さんが作曲した音を、音楽を、この楽器を使って演奏したのがこのパフォーマンス。

角田 パフォーマンス??ちょっと待ってください…パフォーマンス?…これだ。

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豊津 これです。

角田 これ今、円花さんが…ちょっと聞いてみましょうか。

小清水垂直展森様演奏(画廊放送)/YouTube

角田 ギターというか、バイオリンというか。

豊津 そうです。そうです。で、あそこに、右手に棒を持ってるでしょ?あの棒で弦を押さえて、音の微妙な違いをだしてるんです。

角田 だからつまりバイオリンの指の方ですよね。

豊津 で、彼女は作曲家だから、演奏しないんですよね。ところが、この楽器考えちゃったから、この楽器は世の中に彼女しか知らないんで。

角田 (笑)

豊津 私がやる以外ないって、初めてやったんです。

角田 ボクね、この、さっきから皆さん見てる方も聞こえてると思いますけど、音が鳴ってるじゃないですか。これ音に合わせてこの女性が踊ってるのかと思ってました、最初。

豊津 違うの。彼女が演奏してるんです。

角田 あ、本当だ。音が違う。えぇ!?ちょっと待ってください、ちょっと待ってくださいね。これの楽譜が、これ。これ…楽譜…。

豊津 普通、作曲した譜面をみながら楽器を演奏する人はみんな座ってますよね。もしくは立って場所を動かないんで、譜面を見ながら弾けるんだけど、彼女自身が動き回ってるから。

角田 彼女自身が動き回ってるというか、つまり楽器がこんだけ大きいから、動き回らざるを得ない。

豊津 そうすると暗譜しないといけない。

角田 (笑) これを覚えてるんですね。

豊津 そう。

角田 ぇえ?だから彼女、これ全部…円花さんはこれ全部覚えてパフォーマンスしてるのがこれってことですね。

豊津 はい。だから東京画廊でリハーサルして、何回か自分でやって、それで16日でしたか、ここでパフォーマンスしたのをうちで収録したんです。

角田 それがこれですね。ああ、だから16日ということはまだ数日前ってことですね。面白い!これ、小清水さんはそこまで考えてこれを作られてるんですか?

豊津 いやいや、小清水さんが先です。で、小清水さんの作品を見て彼女がこれを、自分のヒントになって、この音楽を作曲したんです。

角田 すっごいなぁ!豊津さん、豊津さんって仕事、楽しいでしょ?(笑)

豊津 いやぁ、もう、最高ですよ。

角田 (笑) これ、楽しいよ〜。

豊津 去年ね、一柳慧さんていう現代音楽の作曲家、今87、88なんですけど、一柳先生と近藤悠三さんって京都の造形作家と組み合わせてやったのが最初なんですけど。その最初にやったのは消滅ってタイトルの展覧会をやったんですよ。その先生が作曲した音楽がビオラによって振動すると、彼が作った陶芸が崩れるんですよ。

角田 その共鳴音で、?

豊津 共鳴音で。7分の間に全部崩れるの。ここにあった5つの陶芸が。それを僕は作品としてシリコンで固めて、、、

角田 壊れたものを?

豊津 壊れたものを。そしたら先生の、一柳先生の楽譜とその壊れた陶芸をワンセットでスウェーデンのコレクターが買ってくれたんですよ。

角田 うん。買う。(笑)

豊津 それに味しめて、2回、、(笑)

角田 (笑) いや面白い!この楽譜ですよ、皆さん。これがこの、、豊津さん、これアートというかプレイというか。プレイ・ザ・アートですよ。プレイって遊ぶとも言うし、演奏するっていうか。

豊津 これはね、一般の人が見ても分かんないじゃないですか。エンターテイメントになってないんですよ。ね、一般の人が見て何やってるか分からないんだから。そうすると一般の人がやらないんだけど、ごく、美術や現代音楽を分かってる人たちにはこれが理解できるからアートなんですよ。で、僕もね、ここで彼女が演奏しているものとこの楽譜が合ってるかが僕は分かんないですよ。これが分かるのは一柳先生と当日ちょっと見に来られた池辺晋一郎さんっていう作曲家、その2人だったら分かるんですよ。

角田 そういうことなんだ。それってエンターテイメントとアートって、どうくっ付けられるかなーっていうのが、ある意味ボクはエンターテイメントやってた人間なんで、すごく思ってるんですけど、くっ付ける必要ないのかも知れないですね。

豊津 いや、いずれくっ付きます。今は離れてますけど。

角田 それ豊津さんやりたいんでしょ?

豊津 そう。今、今ね、共鳴してるのがエンターテイメントですよ。ね。でもいずれここにみんなが追い付いて来ると、何年後かにはこれがエンターテイメントになるんです。

角田 ああ、なりますね!

豊津 なりますでしょ。だから僕にとっては最初にこういうことを考えてエンターテイメントは後からくっ付いて来るというのが僕にとって仕事の大事なポイントなんです。だから最初っからエンターテイメント考えると、あとはだって伸びしろないじゃない。ね。だからそれが一番大事なんじゃないかなーと思うんですよね。

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角田 これ、なんて言うんだろう?ボク、だから、考えるな感じろって言葉あるじゃないですか。あの言葉嫌いで。考えて感じりゃいいじゃん、あるいは感じて考えればいいじゃんっていつも思ってるんですよ。

豊津 いや、感じて考えるのが一番いい。

角田 ですよね。考えるな感じろって言うのは、ブルース・リーならいいですけど。

豊津 考えると感じれなくなっちゃう。

角田 そっか!感じで、考えればいいんだ。

豊津 感じてから考える。

角田 それがこの…こういうことですもんね、つまり。ちょっと弾いてみてもいいですか?

豊津 うん。

角田 これはやってもいいんですよね、、、

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豊津 もっと思い切って弾いてみて。

角田 ああ、ホントだ。こっちで共鳴してんだ。あ!全然短いから音が違う!

豊津 違う。弦のあれが違うから。

角田 ああぁ、これ、だから、確かに、この楽譜になりますよね。

豊津 この共鳴箱が無いと音が鳴らないんですよ。この共鳴箱も彼女がデシベルを測ってきて、このサイズでこういう風に作ってくれって指示があったんです。だからこれもただ単に箱作ったんじゃなくて、ちゃんとデシベル測って、音の量を3つともちゃんと測ってやってますから、楽器なんですよ。

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角田 すーごいなぁ。

豊津 彼女が将来ストラディバリウスになるかも知れない。

角田 なるかも知れないですよね?!くわぁー…面白い。

豊津 だからやっぱり、なんかこう、本当は空調で揺れてるんだけど、僕のイメージでは音の振動で揺れてるともっと面白いと思うんですよね。

角田 つまりこの1個とか…一番近いこれとかって、今ちょっと揺れてるの分かりますかね?皆さん。これ。これ揺れてるのって、だからやっぱりボクとか豊津さんがこうやってこの辺で歩いたり喋ったりしてるからですもんね。

豊津 そうです。気配で。

角田 気配で動くんですよね。面白いなぁ。なるほどねぇ。これが「もの派」ってやつですよね?

豊津 そう。「もの派」っていうのは、モノの性質を加工しないでどうやって表現のような中に入れるか?ってことが「もの派」なんで。小清水さんの場合は垂直の重力という僕たちの性質、ね、この重力っていう性質をどう視覚化するか?ってことでこの作品を作ったわけ。常にモノ派の場合は関根さんが「位相—大地」で土を積み上げたでしょ?あれは土を積み上げて、僕たちは土を感じればいいわけですよ。だから土を感じてから「これは一体なんなのかな?」って考えればいい。

角田 「位相—大地」って「位相—大地」という作品のなんか凄さが「もの派」という定義を、ボクの中ではちょっと分かってなかったんですよ。もの派の定義が。「位相—大地」の考え方は分かるんですけど…、位相させることの。ところがこの作品を見て、弦を鳴らして、これがインストゥルメンタル、楽器になってるいう、楽譜もある、みたいな、そこまで聞くと…なんて言うんですかね、「もの派」の意味がやっと分かったというか。ものって石とかものというよりは、つまりさっきの位相させるとか、空間とか、垂直、引力とか、そういうモノも含めた「もの派」なんですね。

豊津 そうです。そうすると本来石って重いて概念があるんだけど、重力を感じなくなるわけですよね。吊るしてあるから。

角田 これ吊るしてあるから確かに、これ実は発泡スチロールで軽いんですよって言われても分かんないですよね。

豊津 で、毎日微妙〜に、床に向かって、降りてるんですよ。

角田 重さだから…

豊津 重さで。吊るしてるものが伸びる。

角田 うんうん、伸びますよね。

豊津 展覧会終了までに1個ぐらい床に着いて、、、

角田 実際、一番奥のこれ、ちょっともう…着いてません?一番大きいから。これ。

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豊津 そう。実はこれね、最初吊るした時に10cmくらいあったんですよ。で、このワイヤーは回って売ってるから、ねじれてるわけです。で、時間と共に回転してたんですよ、最初。全部ね。で、あるところで伸び切ったところで止まったわけですよ。

角田 そういうことなんだ…。着いてるか着いてないかギリギリ…ですよね。はい。はぁぁぁぁ面白いなぁ。

豊津 もう一つ大事なのは、これを僕たちの腰の辺りに浮かしたらつまらないんです。この地面すれすれに浮いてるっていうのがね、重力と重さと、なんかそういうような環境を僕たちに暗示させるのね。

角田 例えば今ほら、この一番大きい石が一番ちょっと着いてる感じするじゃないですか。で、この、ほら、浮きが激しいじゃないですか。これだからここにも差がありますよね?差があって、このさっきの楽器のこの感じも、この短いのと長いので差があるじゃないですか。だからここに楽器に差があるから音階ができるってことを、これは垂線で石が表現してるんだ。

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豊津 素晴らしい!

角田 そうでしょう!(笑) これすごいっすね!すごい!!

豊津 僕が嬉しいのは、今角田さんが言った様に角田さんがこれを見てものを考え始めることですよね。考え始めると、どんどん、どんどん、色んな考えが自分の中で生まれるから、それは僕と角田君で違うんですよ。

角田 うん、ちがう…。あの、ボク、この垂線、この垂線が隣にあるのと平行じゃないって言われたとき、最初意味が分からなかったです。でも確かにそうですよ。地球の中心に向かってんだもんな。だんだん細くなっていくんですよね。だからこれずーっと行けば、中心の線で交わるんですよね。そんなことを今日、2021年3月19日まで考えたことない!それを知るのが…、だからそれを知るのがアートなんだけど、知的好奇心を楽しむって意味ではエンターテイメントですよね。

豊津 そこで平行とか垂直とかという意味は、子供、何歳から習うのかなぁ?

角田 小学校2年とか3年くらいじゃないですか?

豊津 そうすると小学校2年と3年生に世の中に平行なんてないんだよって言うのには最適の教育。かもね(笑)

角田 ホントだ。皆さん、つまりこれは平行に見えますが、地球という中では平行じゃないんですよね。面白いです!豊津さんちょっと見てくださいこの画面。つまり今仰ってますけど、実際カメラで見ても遠近法だから平行に見えないじゃないですか。これって目の錯覚ですよみたいなこと言ってるけど、本当に平行じゃないんですよね。実はね。うわぁぁ面白い。「もの派」…そっか、印象派とか色々あると思うんですけど、なんて言うんですかね、「もの派」のちょっとこうモノに入っている文脈というか、考え方みたいなものを知った方が面白い”派”なんですね。

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豊津 ものの考え方を知らないと本当に面白くない。だから小学生がここに来るとね、揺らし始めるんですよ。それか乗るかも知れない。そういう子にこれは、小学校3年生ぐらいが遊ぶには最遊、最も楽しい。もうちょっと詳しく言うとね、これさ、ここだけでぶら下がってるでしょ?十字に掛けてないから重心の位置にこのワイヤーがないと傾くわけですよ。

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角田 そっか。だからこのワイヤー全部重心にあるんだ。

豊津 そう。ワイヤーの位置が重心にある。で、吊るすとこの平行に、こういう風にぶら下がらないでしょ?右へ落ちたりするじゃない。それは小清水さんがここでやると、あっという間にやっちゃうわけですよ。

角田 だからもう、石の重心が見えちゃうんですね。

豊津 だからほら今、石の上に石組み合わせる、あれがそうだよね。

角田 はい、あの、ありますよね。川とかの石をアートで並べちゃって、倒さないやつ。

豊津 で、なんとこの石はですね、小清水先生が自分が住んでた昔の家の山の上に行って拾ってきたの。

角田 え?京都ですか?

豊津 そう。リュックに入れて(笑)

角田 (笑) ぃゃぁすっごいな。面白い。

豊津 だから別に石になんの意味もあるわけじゃないし、石を加工してもいないし、先生がやったのは石を洗っただけです。それでワイヤーで吊っただけだから、ほとんど技法はないんですよ。で、この技法がないって言うのはコンセプチュアル・アートの一番大きなテーマです。

角田 今メッセージが来たんですけど。その石のやつって石工となんか似てますねって、考え方がというか。

豊津 日本のお城ってほぼ自然石みたいなものを積んでるわけ。でもピラミッドって自然石じゃないでしょ。

角田 ちゃんと、こう、正方形に。

豊津 そう。だから人工って意味で言うと、日本人は人工というのと自然とを上手く調和させてものを作るけど、西洋は人工は人工なんですよ。

角田 自然を、だから悪く言えば破壊してるわけですね。

豊津 そうそう。だから我々は SDG’s だとすれば、日本が率先して自然と人工を融和させるような国づくりすれば、世界の先頭に立てると思う。

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角田 ボクもそれ思ってて。SDG’s って極めて日本的なわけですよね。ボクね、今、東大通ってて、今日卒業式だったんですけど。あのガウン着たんですけど。あの、1回ですね、SDG’s の、サスティナブルの授業みたいなの受けたときにね、伊勢神宮って SDG’s だって言うんですよ。ところが、伊勢神宮って20年に1回壊してるじゃないですか。だから20年に1回壊してれば本当はサスティナブルじゃないって言うのがヨーロッパの考え方なんだけど、日本は20年に1回壊すっていうのを永遠に繰り返してるというサスティナブルだっていう。

豊津 っていうか、あれは誤解しちゃいけないんだけど、壊した後どうしてるか?

角田 あれ、なんか他の神社とかに使ってるんですよね?

豊津 あれは、あの御神木は大変な価値があるわけです。あそこで使われたものは。だからあれは壊してるけど、基本的には SDG’s なんですよ。それからその技術、ものを作る技術だけは廃れないで伝承していくでしょ?

角田 うん。その伝承してることが結局サスティナブルなわけですもんね。

豊津 それを一千年近く繰り返してる日本人とは一体なんなのか?というのが世界の脅威なわけですよ。

角田 うん。面白いですよね。いや、だからなんか、日本って最近なんか国力が落ちたとかね、中国に抜かれたとかね、色々い言いますけど、SDG’s ってのを国連が標榜してるって、次の日本の生き方って今までの日本の生き方をそのまま SDG’s すれば、まさにサルティナブルなゴールになっちゃうじゃんって思うんですよね。

豊津 でもそれを日本人が認識してないっていう悲劇があるわけよ。だからやっぱり原子力発電やろうとか、それから石炭やろうとかっていうはなかなか抑えられないじゃないですか。日本こそ今 SDG’s を本格的に広めて、例えば今農耕地っていうのは日本で自立できるだけの農耕地があるらしいんですよね。活用してない。

角田 みんなが休眠というか休耕地になっちゃってる。

豊津 休耕地になってる。だからこのコロナの問題は僕たちがそれをもう1回考えるにはすごいいい役割を果たしてる。

角田 あの、ソーシャルディスタンス取れって言うじゃないですか。あれディスタンス取れって要は地方とかをもっと活性化させろってことなんじゃないかと思うんですよね。

豊津 うん。そうだと思いますよ。

角田 東京の渋谷とかぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅっと詰まってる必要ないだっていう。

豊津 だって昔の農家ってさ、朝起きるでしょ、お父さんが野良に出るでしょ、お母さんも出ていくでしょ、お婆ちゃんがあぜ道にゴザ引くでしょ、孫がそこで遊んでるでしょ、ソーシャルディスタンスですよ。全員が集まるのは暮れるまでないんですよ。

角田 そうですよね。で、暮れて、もうご飯食べて、暗くなったら寝ちゃうんですもんね。

豊津 で、お父さんとお母さんはそこでまた作業を始めるわけ。藁でなんか作ったりとかね。

角田 そうだよなぁ。いや、だからそういう生活とかをちょっと思い起こさせる契機が今回のコロナなんじゃないかと思います。

豊津 そう思いますね。だから、まあ、一番コンセプチュアルなことをやればやるほどそういうシンプルに文化ってのが浮かび上がって来るから。

角田 「もの派」ってすごい日本的な考え方が表出されるんですね。

豊津 徒然草とかね。ああいう世界に通ずるものがある。で、その先生のコンセプトが一番最初に立ち上げたのがこちらの…。

角田 あ!この始まりがあるわけですね。

豊津 これが始まりです。

角田 ぅん?どれどれ?

豊津 真鍮の分銅が上からぶら下がってる。

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角田 これが(天井から下へ)こうなって、、、

豊津 下りて行くとそこに真鍮が。円錐の、赤銅っていう、赤い銅って書くんですけど、それの秤っていうかな、錘が。それも床面スレスレまで行ってるわけですよね。

角田 これ床面スレスレに行ってるし、影がまた、、、

豊津 綺麗でしょ。この接点ね、面と垂直な接点に非常に中心…、なんて言うのかな、注目したのが簡単に言うと生花の池坊なんかがその構造でできてる。

角田 あの、花の生け方がですか?

豊津 そう。だから僕は生け花の池坊の先生から聞いたことあるんですが、まず器の上に垂直に木を立てるんですよ。松とか竹とか。それでその間に花を脇とか添えとかをやっていって一つの造形ができる。で、みんなお花見てるんですけど、「山本君、際(きわ)見れ。」って言うんですよ。その水面の際と垂直の木の、この際が見事に生けてあるのが技術だって。そこを見出すとね、本当に上手い人はきちんとなってるんです。

角田 逆に言えば、池坊の花でなんか花が綺麗に飾ってあるなーとかっていうのは、全然違うんですね。考え方として。

豊津 根っこを見ろっていうんですよ。その、もっと底の方を見ないと意味がないって。

角田 じゃあ、ちょっと根っこを見ましょう。これ。豊津さんあちら側に行ってもらっていいですか?そうすると映るんで。

豊津 はいはい。ここね、接点ね。

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豊津 これは今度は石と違って円錐なんで、円錐の頂点が点ですよね。で、点というのは現実に存在しないでしょ。それから線も現実に存在しないでしょ。

角田 現実には存在しないですよね。厚さがないのが線だし。

豊津 だからそうすると点と線は僕たちが考えた世界を見る物差しではあるけど、芸術にはないんですよね。

角田 だからバーチャルなものですよね。そもそも点とか線とか。面だってそうだよな…、だってないんだから。

豊津 全部面しかないんです。裏見れないしね。だから立体っていうのも僕たちは分からないと思う。唯一立体が分かるのは触ったときだよね。

角田 (感心して小声で)(そうだよなー……、いやぁー……)

豊津 これを先生が考えたの。

角田 これは何年前くらいなんですか?

豊津 1969年。

角田 1969年。だから今から…って言うかボクの生まれる1年前だから51年前だ。わぁぁ。

豊津 これを51年前に考えたの。で、これの一番最初に考えた作品はピノさんっていうグッチグループの総席が買って、今ベネチアの彼の美術館に展示されてます。

角田 へぇ〜!ある意味これと同じ考え方のやつがですね。これが今銀座にあるということですね。

豊津 今、国立国際美術館も1点持ってますね。

角田 へぇぇ!これ、つまり、これって真鍮で作ってたってことは小清水さんもまだこの頃は石とかではなかったってことですね。

豊津 そうです。「もの派」のグループの中でただ一人、彫刻家は小清水さんしかいないです。あとはみんな絵画ですから。絵画というのは抽象的なものを作るには恰好じゃないですか。ね。彫刻ってのは現実のものだから、重さとか、作るとき大変でしょ。だから彫刻と絵画って似て非なんですよ。

角田 確かにそうですよね。言うても二次元にするのが絵画ですもんね。でも三次元というか3Dでないと彫刻できないですもんね。

豊津 例えば絵画があって、その上に石を描くでしょ。すると石は宙に浮いてるじゃない。これがマグリットでしょ。

角田 うん。浮いてますよね。マグリットの絵。

豊津 だから絵画上では石は浮くわけですよ。でも現実には吊るさないと石が浮かない。

角田 だからこれを、こういう風に吊ってるわけですね。

豊津 そういうことですね。で、これが今度木彫の作品で、レリーフなんですけど。

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豊津 これはもう完全に面を作って、それで面の間を顔料で塗って、という作品ですね。

角田 これちなみにタイトルとかあるんですか?

豊津 これは何だっけな?

角田 ああぁ、豊津さん行っちゃった。すーごいですよ皆さん。あのね、そうなんだよ、これ今、東京画廊から、今豊津さんいなくなっちゃったんであれですけど(笑)、いつもね、見に来る…東京画廊来るじゃないですか。来るとね、一人で見てても意味わかんないんですよ。なんだこれは?みたいな。それが豊津さんに解説されるとですね、途端に作品が生きて来るんですよね。

豊津 タイトルはね、先生のタイトルは一般的に「表面から表面へ」っていうタイトルなんです。

角田 「表面から表面へ」!

豊津 「表面から表面へ」で、「「空色」松とトリコロール」とかっていう。

角田 ああ!トリコロールだ。

豊津 そういう風になってます。で、これも油絵具ではなくて顔料、いわゆる岩絵具ですね。だからこれも物質ですよね、岩という。

角田 今コメントで解説ありがたいですって来ました。(笑) 皆さん、豊津さんの話ホントに聞いた方がいいですよ!これ、もうなんかアートとエンターテイメントって言いましたけど、豊津さんの解説がめっちゃくちゃエンターテイメントです(笑)

豊津 で、これもここまで切れ込み入れて。

角田 ちょっと待ってください。…どこですか?もう1回指差してもらっていいですか?

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0:40:00

豊津 これは切れ込みはここに入ってるから、絵画と違うのは絵画は線を引くってことですよね、鉛筆や…。彼は鋸で線入れてるから。これは彫刻家しかやらないでしょ。

角田 これだ…!つまりこれはノコギリで…おぉっ!線だ!

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豊津 ということは鋸でカットしたから線ができるんで、非常に物質的でしょ。

角田 これ、全部そうか…。

豊津 そう。全部線は鋸で引いてるんですよ。

角田 確かに、そうだ。面白い…。なるほどなぁ、面から面へ。これもだからかつての、過去の作品なんですか?

豊津 これは何年だったかな…2020年の作品。

角田 去年なんですね。へぇ!じゃあこれを作ったのはコロナとか意識されてるんですかね?先生は。

豊津 そうですね。それからこっちが色を塗らない木の肌だけなやつ。

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角田 だからこれ普通になんか工芸品みたく見えるんですけど。

豊津 見える。でもなるべく工芸性を避けるためにね、こういう削った跡を残してるよね。これを綺麗に…、工芸家だったらここを綺麗にするわけですよ。綺麗にしないから工芸ではなくなる。だから彼にとって綺麗に線引くより線を引いたということが大事だから。だからカットしたってことが大事なんで。

角田 この木という自然物をそうしてることに意味があるんですね。へぇぇぇ。…これ、ちなみに、これも面から面へなんですか?タイトル。

豊津 これも全部「 surface to surface 」です。

角田 これちなみに、ここで聞いてあれなんですけど…、値段もついてるんですもんね?これはおいくらなんですか?

豊津 90万円。消費税別(笑)

角田 (笑) はぁぁぁ。ちなみにこれ(石とワイヤー)も付いてるんですか?

豊津 これも付いてますよ。

角田 これタイトルなんでしたっけ?

豊津 これはね、「階の庭」。1階2階の階。

角田 階層の階だ。で、「階の庭」。…これも値段ついてるんですか?

豊津 これも付いてます。…いくらでしょう?(笑)

角田 …300万。

豊津 あぁー!

角田 惜しい?

豊津 10,000,000。

角田 うぅーっ!!(笑) でもこれ、だってこれ、設置するところまで含めてですよね?きっとね。だってこれ先生が設置しないと出来ないですもんね。

豊津 そう。これ僕には設置できないの。だからこれ設置したときにそこに穴を…、設置してますから。先生には仕様書っていうの?ああしなさい、こうしないさいとかって僕たちが写真撮って置いとくわけですよね。それで今度お客さんのところに設置に行くわけですよ。

角田 でもこういうのが、例えば、分かんないですけど、アラブのすごいホテルとかにありそうですもんね。

豊津 ち ょ っ と ね …、今 や っ て ま す (笑)

角田 (笑) 今、ちょっと、あの、悪代官の顔に!いや、そんなことないですけど。…やっぱりそうですよね。だってこれを飾っておきたいっていうお金持ちの方がいらっしゃいますよね。

豊津 これがさっき言ったスウェーデンのコレクターが。オンラインで買ってくれたんです。こういうのやってるんですよって言ったら、じゃあこれ買うわって。まあ、強いて先生がこの中で表現として考えてるのは、こういう形で削ることも大事だけど、一番大きいのはこの木の面。この木の面の自然性みたいなものをどうやって見せるかっていうのは結構考えて。

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角田 確かにこれ、じゃあこれ普通に作れるじゃんっていうより、自然なのに人工物の絶妙な感覚が確かにありますね。だって形はめちゃくちゃ人工じゃないですか。なのにすごい寄ると自然なんですよね。

豊津 だから多分ね、日本のいわゆる木造家屋って、塗らないでしょ?

角田 はい。白木のままですよね。

豊津 で、中国だと清朝になると塗っちゃうんですよ。だからこの白木のままで…障子戸とかね、紙と木だけでしょう?やっぱそれはなんか日本の大きな伝統でもあるんじゃないかと思いますよね。

角田 確かに。これも90万円とかですよね?きっとね。

豊津 90万円でございます。

角田 はぁーー…、頑張って、このYouTubeがすごいアクセス増えたら、私も買いたいと思います(笑)

豊津 今回ちょっと苦労したのはこの白い楽器とね、このレリーフがどういう風に邪魔しないで展示するか?っていうのはちょっと先生、色々考えてましたよね。まあ、あの白い楽器があった方が面白いでしょう?片付けるのかどうかって考えたんだけど…。で、面白いのはね、ここで弦の緩みを調整するんですよ、これ。

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角田 あー!ホントだ!ギターの先のとこのやつ!

豊津 そうそう。よく考えてるでしょ。

角田 考えてますね!ああー、だからここで調律できるんですね。

豊津 そうそう。

角田 あ、音が確かにちょっと面白いな。

豊津 ここ距離があるから。

角田 距離があるし、あっち(部屋の奥)よりちょっと緩くなってるから、ちょっと音が低いっすよね。はぁぁ、面白いな。…全部見ました?あとあの作品ですね。面とトリコロール。

豊津 あれもさっきの「 surface to surface 」

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角田 あのですね、ボク最初に東京画廊…ほら、豊津さんの話って自由大学で聞いたじゃないですか。で、聞いて、ぜひ東京画廊に遊びに行きたいと思って勝手に来ちゃったんですよね。それが豊津さんとちゃんと話した機会だと思うんですけど、あの…イメージより画廊が小っちゃかった。

豊津 ああ、そうかも知れないね。

角田 そう!だから、「え?」って思ったのに、ところがこういう感じで作品を何回解説されると、…広いっすね!この空間の大きさってそういうことだと…。だから逆に言うとある意味これくらいの大きさなんだけど、豊津さんの解説を聞くと途端に…なんて言うんですか、ディズニーランドのアトラクションくらいのアトラクションが1個ずつ全部あるっていう。

豊津 まあだからやっぱりそれが歴史だと思うんだけど。小清水さんの作品とうちが出会ってから約50年経ってるわけですよ。すると小清水先生はこの東京画廊の空間っていうのが彼の体内に入ってるから、彼の体内に入ってる空間と作品というものが共鳴しあって空間ができて来るから、その深さが広さを感じさせるんじゃ無いかと思うんですよね。

角田 その共鳴させてるので、この共鳴するね、この共鳴するインストゥルメンタルな、「もの派」の…、だってインストゥルメンタルってモノって意味ですもんね?だからまさにモノを、この建物と共鳴してるから小清水さんは作られてるってことですよね。

豊津 そうですよね。

角田 うわぁ面白い。

豊津 でもやっぱりこの水平な弦があった方が面白いでしょ。

角田 面白いです!ただこう、なんて言うんですか、展示されてるより面白いし、やっぱりこの、さっきからこの石がね、やっぱりちょっと…ちょっと揺れてるんですよ。僕らが歩いたりするから。だから作品がすごい生きてる感じしますよね。うん。いやぁ面白いっすね!これ、展覧会いつまでやってるんでしたっけ?

豊津 17日まで。

角田 4月の?あとまだ1ヶ月。

豊津 ひと月弱くらいかな。ぜひ、あの…三密にならないから。

角田 うん。予約制ですもんね。

豊津 普通の人来ないから。この展示見ても(笑)

角田 (笑) そうですよね。だから逆にこの YouTube 見てる方も普通じゃないかも知れないですからね。

豊津 だからね、画廊って面白いんだけど、自分たちがこういう作品を展覧会をやっておくと、作品がお客を選んでるんですよ。

角田 なるほどっっ?!来てくださいねってことじゃないってことですね。別に来てくれなくてもいいんですね、逆に。

豊津 いいの。僕のここの画廊に来るのはこの空間に興味ある人以外来てもらっても意味ないから。

角田 来なくていいんだ。

豊津 そうそう。だからやっぱり風景の描いてあるようなところに行きたい人、それからこういう、角田君みたいに見ながら色んな想像ができて、色んなことが考えられて、そっちの方が面白いと思う人、そういう風に色んな人が美術にいますから、その中で僕たちはこれだけ拾うのはいいんですよ。

角田 美術もそうだけど…ボクで言うとバラエティというか、ダイバーシティというか、多様性なんですね。

豊津 だからこれからね、このコロナで僕は思ったんだけど。お店が人を選ぶ時代だと思うんですよ。今までお店は選ばれる側。

0:50:00

角田 つまりお客様は神様ですっていうか、極論すれば来てもしくない人にも来てもらわなきゃいけない。で、まずいって言われても出さなきゃいけないしと言うか。だってお前用に作ってんじゃねぇんだもんね!ってのありますもんね。

豊津 ただ自分のとこの、拒否してるわけじゃなくて、自分のところがこういうものを提供してるから、その提供してるものが分かる人だけ来てくれれば十分だと。すると三密にならないじゃない。ね。

角田 まさに美術館なんてそうですよね。だから観客動員○百万人とか言ってるけど、本当はそういうこと、どうでもいいんですよね。

豊津 大体、観客動員○百万人なんて言ってるのはさ、ほとんど絵を見てないってことでしょ。

角田 だって、そんなに○百万人じゃ見れないですもんね。うん。

豊津 モナリザの微笑みの前に5分もいないですから。それはモナリザの微笑みを見てるとは言えないでしょ。

角田 ああ、ボクね昔、興福寺仏像展に行った時に、仏像が興福寺…ちょうど上野の東博だったと思うんですけど、すごい人だかりになってて、あそこちょっと高いところから見れたんですよ。仏像がなんかデモ隊に囲まれてるように見えてですね、仏像…かわいそうに思ったことがあって。やっぱお寺で見た方がいいなーって、ちょっと思っちゃったんですよね。

豊津 やっぱり僕たちのこれからの時代はね、やっぱりそういうようなものが僕たちが選別してるように見えるけど、相手から選別されてんだってことをよく考えてやらないと駄目だと思うんですよね。

角田 だからボク、ほら、豊津さんとね、これを去年の夏くらいから始めましたけど。最初のコロナの時って画廊とかって緊急事態宣言で全然出来ないから大丈夫かなとちょっと思ってたら、むしろ調子良いって仰ってたじゃ無いですか(笑) うん、だからそれってそもそもこういう美術に興味ある人は、そもそもディスタンス取ってるってことですもんね。

豊津 だってこれ、一般化しないでしょう?ね。

角田 うん…、一千万、、、買えないですね(笑) まあ値段じゃないとはいえ。でもめちゃくちゃ面白い。はい。みなさん是非これ来てくれるとね、だって、最後来た時にはこの石がねm、地面に全部着いてる可能性だってありますもんね。

豊津 あります。だから4月の15、16日くらいにくると、ちょっと見ものかもしれない(笑)

角田 なるかもしれないですね!はい。まぁ、こんな感じですかね、今日はね。豊津さん今後これ、展覧会があるときはこういう豊津解説。

豊津 ああ、いいですよ。仰るようにうちでやってる展覧会はいくつかは僕が説明しないと分からないかも知れない。

角田 でね、ボクほらこれ、豊津さんとこのYouTubeやってるのってね、その豊津さんの話は面白いからアーカイブしときたいと思ったんですよ。と言う意味で言うとこの展覧会もアーティストがやってて、それを豊津さんがギャラリーのオーナーとしてまさにプロデュースしてる、どういうのでプロデュースしてるのか?みたいなところって絶対これ残しておいた方がいいなと思って、このYouTubeやってるので。

豊津 だって一種のツアーガイドみたいなもんだもんね。遺跡をさ、ツアーガイドが説明してるのと似てるじゃない。

角田 ですし、この感じで色んな全国の美術館行っても面白いですね。

豊津 美術館だけじゃなくてもね。

角田 なんか遺跡とかでもいいし。

豊津 僕がこれは面白いなと思うところへね、出かけて行っても面白いですね。

角田 面白いですよね。ムービング豊津徳できますね。

豊津 僕ね、韓国と中国はね、ツアーを僕が企画したことがあるんですよ。大体小型のバス1台借りるくらいにして、20人くらいでツアー行ったんだけど。僕が食事場所も選ぶし、それから何を見せればいいのかってのを選ぶツアーやったんですけど、あの…、こんなところ何が面白いんだってところへ連れて行くわけ(笑)

角田 ああー!それが面白いんですね!

豊津 それを僕が解説することによって、ああ!面白いね!って最後に思うようなツアーをやってるの。

角田 それ、やりましょう。あの、本当にツアーやっても良いですし、この動画でね、解説するね…、はい。面白いですねぇ。はい、と言うことで、じゃあ今あの音楽がね、ずーっとBGMのように流れておりますが、そんな感じで東京画廊から。今日の豊津徳を終わりにしたいと思います。

豊津 どーもー!また来月!

角田 はい、では皆さんまた来月よろしくお願いしまーす。

豊津 はい、よろしくお願いしまーす!

角田 じゃあ配信止めさせていただきます。

教養としてのお金とアート 誰でもわかる「新たな価値のつくり方」 田中靖浩・山本豊津 著
コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる (角川新書) 水野和夫・山本豊津 著
アートは資本主義の行方を予言する (PHP新書) 山本豊津 著

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文字起こし後の文字寝かし

 豊津さんが「このワイヤーとこのワイヤーは平行じゃないんですよ。重力は中心に向かうから。」ということ。perpendicular と vertical の違いを検索して、Perpendicular Line の意味がちょっとだけ分かった(気がする)。
 水平=horizontal の反対語としての vertical は地面や水平線に対して90度というニュアンスで、perpendicular は意味合いは広く、水平線のように交わる対象がなくてもよく、交わってなくてもよく、何かに対して90度というニュアンスらしい。ちなみに垂直、直角、直交は、perpendicular と vertical のニュアンスともちょっと違った。

垂直:線と線が直角をなす ┻ ━┃ ←交わってなくてもいい
直角:線と線のなす角度が90度 ┗ ←角度のこと
直交:線と線が交わってなす角度が90度 ┻ 交わった線の角度

 重力の制限の中で生きる。私が考えてるのは「垂直って何に対して90度?もちろん水平とか地面に対して」なんだと気づいた。垂線では逆なんだ。地球の真ん中に向かう直線があって、それに対して90度なのが水平なんだ。水だって地球の表面に丸く沿ってるから、実は緩い緩い曲線なんだけど。重力の制限が当たり前にあると、もしかしたら地面や水面、水平ってすごく基本にして物事を考えてるのかも知れないって気がする。そもそも自分が垂直に立つわけだから、垂直って近すぎて見てないことなのかも。目に見える垂直、目に見える重力が、あのピンと張ったワイヤーなんだ。

ここから先は主に豊津さんのお話の抜粋。私用のメモ。
 ↓ ↓ ↓

美術っていうのは非常に観念的に思うけど、現実に作品を作ると現実と観念がずれてることが分かるのが面白い。
垂直であるってことが、日本の文化の構造でものすごく大事。垂直に下りてきた水が水平面に当たって、そこに神が宿るっていうのが日本の文化。本地垂迹の中にも垂線、垂直の概念がある。最初14個で考えてたんだけど、途中で忘れちゃった。本地垂迹とか神様みたいな話をしてるけどこれを作ってるのは人間。
世界の庭で石が動くのはこれだけ。浮いてるということはものすごく現代的。影の意味があるのはうちの床がPタイルだから。コンクリート打ちっぱなしか四角い絨毯が現代だとすると近代はPタイル。東京画廊は近代で始まったんでPタイルを置いてある。
キューブと言う空間の中に現代美術が展開してるからホワイトキューブと言い、世界中の美術館やギャラリーはキューブと言う。キューブを見やすくするためにPタイルを残した。キューブの連続。Pタイルの平行線、床の水平と小清水さんの垂直が成立してこの作品の意味になる。
僕たちはアーティストに空間を提供する。東京画廊の空間というのは画廊のコンテクストにとって大事。
非常に静的な空間に動的な人間の感覚を出したいと思った。音は振動。石が微妙に揺れるのも振動。振動を音で表現、11の音階と11の石。この展示自体が楽器。
一般の人が見ても分からないからエンターテイメントになってない。美術や現代音楽を分かってる人たちにはこれが理解できるからアート。エンターテイメントとアートをどうくっ付けられるか?今は離れてるけど、いずれくっ付く。いずれここにみんなが追い付いて来ると、何年後かにはこれがエンターテイメントになる。エンターテイメントは後からくっ付いて来るというのが僕にとって仕事の大事なポイント。最初っからエンターテイメント考えると、あとは伸びしろがない。
感じて考えるのが一番いい。考えると感じれなくなる。
モノの性質を加工しないでどうやって表現のような中に入れるか?が「もの派」。
これを僕たちの腰の辺りに浮かしたらつまらない。地面すれすれに浮いてるというのが、重力と重さと、そういうような環境を僕たちに暗示させる。石の高さにも差がありますよね?ワイヤーの短いと長いで差がある。差があるから音階ができることを、これは垂線で石が表現してる。僕が嬉しいのは角田さんがこれを見てものを考え始めること。色んな考えが自分の中で生まれ、それは僕と角田君で違う。それを知るのがアートだけど、知的好奇心を楽しむ意味ではエンターテイメント。「もの派」のモノに入っている文脈、考え方を知った方が面白い”派”なんだ。ものの考え方を知らないと本当に面白くない。
なんとこの石は小清水先生が自分が住んでた昔の家の山の上に行って拾ってきた。だから別に石になんの意味もあるわけじゃないし、石を加工してもいない。石を洗ってワイヤーで吊っただけ。ほとんど技法はない。この技法がないって言うのはコンセプチュアル・アートの一番大きなテーマ。
日本人は人工と自然とを上手く調和させてものを作るけど、西洋は人工は人工、SDG’s は極めて日本的。伊勢神宮って SDG’s。20年に1回壊すのはサスティナブルじゃないと言うのがヨーロッパの考え方だけど、日本は20年に1回壊すを永遠に繰り返してるというサスティナブル。あそこで使われた御神木は大変な価値がから、壊してるけど基本的には SDG’s 。それからものを作る技術も廃れないで伝承していく。それを一千年近く繰り返してる日本人とは一体なんなのか?それを日本人が認識してないっていう悲劇。
ディスタンス取れ、要は地方をもっと活性化させろってことなんじゃないかと思う。
一番コンセプチュアルなことをやればやるほど、シンプルに文化が浮かび上がって来る。
生け花はまず器の上に垂直に松とか竹とか木を立て、その間に花を添えて一つの造形ができる。その水面の際(きわ)と垂直の木の、この際が見事に生けてあるのが技術。
点と線は僕たちが考えた世界を見る物差しではあるけど、芸術にはない。例えば絵画があって、その上に石を描く。すると石は宙に浮いている。でも現実には吊るさないと石が浮かない。絵画と違うのは絵画は線を引く。彼は鋸で線入れる。これは彫刻家しかやらない。
なるべく工芸性を避けるため削った跡を残してる。工芸家だったら綺麗にするわけです。綺麗にしないから工芸ではなくなる。だから彼にとって綺麗に線引くより線を引いた、カットしたということが大事。
中国だと清朝になると塗る。日本は白木のまま。障子戸となんか紙と木だけ。それは日本の大きな伝統でもあるんじゃないか?
小清水さんの作品と東京画廊が出会って約50年。すると小清水先生はこの東京画廊の空間が体内に入ってる。彼の体内に入ってる空間と作品というものが共鳴しあって空間ができて来るから、その深さが広さを感じさせるんじゃ無いかと思う。
作品がお客を選ぶ。僕はコロナでお店が人を選ぶ時代だと思う。拒否してるわけじゃなくて、こういうものを提供してる、その提供してるものが分かる人だけ来てくれれば十分。僕たちが選別してるように見えるけど、相手から選別されてんだってことをよく考えてやらないと駄目だと思う。


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