米国市況レポート – 2024年8月5日:急落する米国株式市場:恐怖指数急上昇とその背景
はじめに:
昨日(8/5)の米国市場は、嵐のような一日となりました。株式市場は大幅に下落し、投資家の心は不安で揺れ動いています。恐怖指数の急上昇が市場の動揺を象徴し、安全資産への逃避が顕著に見られました。一方、原油価格は急落し、金市場も動揺を隠せません。市場の不安定さが続く中、各市場で何が起きているのか、そしてその背景にはどのような要因があるのかを詳しく解説します。
2024年8月5日の米国市況レポート
株式市場
昨日の米国株式市場は急落し、投資家にとって厳しい一日となりました。S&P500種株価指数は約2年ぶりの大幅安で終わり、投資家のリスク回避姿勢が鮮明となりました。特に、ナスダック100指数は月初のパフォーマンスとして2008年以来最悪の結果を記録しました。これは、弱い経済指標や期待外れの企業業績、季節的なトレンドの悪さが重なったことが原因です。さらに、恐怖指数として知られるVIXは一時、1990年までさかのぼるデータで最大の上昇を見せ、市場の不安が一層高まりました。
国債市場
米国債市場では、米10年債利回りが3.7%に低下しました。これは景気減速懸念が高まる中で、投資家が安全資産にシフトした結果です。米2年債利回りが2022年7月以来初めて10年債利回りを下回り、逆イールドが解消されたことも注目されます。スワップ市場では、9月のFOMC会合前に緊急利下げが実施される確率が15%まで低下しました。これは、米金融当局がリセッション回避に向けて積極的な金融緩和を行うとの見方が強まっていることを反映しています。
外為市場
外為市場では、円が対ドルで一時141円70銭まで上昇しましたが、その後は144円台で伸び悩む展開となりました。これは世界的なキャリー取引の巻き戻しが進む中での動きです。また、ISM非製造業指数の発表を受けてドルが主要通貨に対して下落し、ドル指数は0.29%下落の1245.65となりました。これにより、ドルは円やユーロなどに対して弱含みとなりました。
原油市場
原油先物相場は3営業日続落し、7カ月ぶりの安値を記録しました。世界経済減速の兆候が示される中、金融市場の混乱が続いており、原油価格にも影響が及んでいます。ただし、リビア最大の油田での生産停止が一時的に原油価格を支える要因となりましたが、全体的な下落傾向は変わりませんでした。
金市場
金市場も続落し、6月上旬以来の大幅安を記録しました。世界的な株安を受けて換金売りが膨らみ、一時3.2%の下げを見せました。米利下げ観測が高まり、金のポジション解消が進んだ一方で、中東情勢の緊張が金の安全資産としての需要を支えています。年初来で約15%上昇している金スポットは、今後も中央銀行の買いとアジアの消費者に支えられると見られています。
関連コラム:キャリー取引と市場の動揺
キャリー取引とは、低金利通貨で資金を調達し、高金利通貨に投資する戦略です。これが市場の動揺を引き起こすのは、投資家が一斉にリスク資産を手放し、安全資産に移行する「巻き戻し」が起きる時です。今回の円相場の動きも、世界的なキャリー取引の巻き戻しが原因とされています。このような動きは、一時的に市場に大きな変動をもたらすため、投資家は慎重に対応する必要があります。
今回のレポートでは、各市場の動向とその背景を詳細に分析しました。今後の展開を見極めるためにも、引き続き経済指標や市場の動きを注視していく必要があります。
昨日の経済指標とイベントの分析
1. 米ISM非製造業総合景況指数(2024年7月)
結果: 51.4(前月の48.8から上昇)
市場予想: 51
内容分析:
概要: 7月のISM非製造業総合景況指数は、前月の縮小を示唆する48.8から上昇し、51.4となり、活動拡大を示した。これにより、景気減速に対する懸念が多少和らぐ可能性がある。
詳細:
雇用指数: 1月以来初めて拡大を示唆し、昨年9月以来の高水準。
業況指数: 約5ポイント上昇し、拡大圏に戻る。
新規受注指標: 拡大圏に戻る。
10業種が活動拡大: 娯楽・レクリエーション、宿泊・食品サービス、鉱業、建設などが含まれる。
8業種が活動縮小。
仕入れ価格指数: 0.7ポイント上昇の57で、過去1年の平均と同水準。
受注残の指数: わずかな拡大を示し、輸出受注はより速いペースで増加。
2. 米10年債利回りの動向
結果: 3.7%に低下
内容分析:
米10年債利回りは3.7%に低下。債券市場では、米金融当局がリセッション回避に向けて積極的な金融緩和を行うとの見方が強まっている。
短期金融市場の反応: トレーダーは1週間以内に0.25ポイントの緊急利下げが実施される可能性を60%程度と見ている。この観測は、銀行危機への不安が高まった2023年3月以降で最大級の債券相場上昇を促した。
3. 米国債の逆イールド解消
結果: 米2年債利回りが2022年7月以降初めて10年債利回りを下回る。
内容分析:
景気減速への懸念から、米金融政策当局が積極的な緩和に踏み切るとの見方が強まっている。
エコノミストの見解: キャンベル・ハーベイ氏は、米金融当局が政策金利を20年ぶりの高水準に据え置いたのは間違いだと指摘。過去4回の景気後退が始まる直前には長短金利の逆転が解消した点に触れ、利下げの根拠を強めている。
これらの結果は、米経済の現状や今後の見通しに対する市場の懸念を反映しており、米金融政策の方向性に対する期待や不安を高めています。特にISM非製造業総合景況指数の上昇は、サービス業の回復を示唆する一方で、国債市場の動向はリセッション回避に向けた金融緩和の可能性を強く示しています。
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