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四半世紀恋愛珍道中①

他人の恋愛遍歴を詳しく訊いたことがない。そもそもあんまり興味がない。
自分の色恋沙汰も、敢えて訊かれなければまず話すことはない。

そんな私がわざわざ自分の過去の色恋沙汰をnoteの題材にするのもどうなんだろうなと思ったが、まぁまぁ長く生きてきてそれなりにおもろい経験をしてきたので、記憶の棚卸しを兼ねて覚えている限りをひたすら時系列で書き出してみようと思う。

例によって記憶力が死んでおり、ヨボヨボの脳細胞を叩き起こして引っ張り出そうとするも、遡ること四半世紀前からの話なので結構忘れている(お前は一体何歳なんだ…)
思い出せない部分は端折ったり適当に面白おかしく脚色することにした。また、恐らくそれなりに生々しい記述も出てきそうだがなるべくすっとこどっこいな感じにデフォルメしてファンシーにキメ込むことを心掛ける。

何記事かに分けて書き流していくので、長い長い自分語りになりますが誰かの暇潰しになれば幸いです。

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ビター過ぎる初恋

奥手な少女だった私の初恋は大変に遅かった。
当時、中学校にうまく馴染めなかった私の居場所はどこだったかというと、小5から通っていたとある学習塾(スパルタ&アットホーム)だった。
けろけろけろっぴのリュックにケミカルウォッシュのデニムという、今思うと目を覆いたくなるクソダサスタイルで通っていた。オシャレとは無縁で、国語と英語の勉強が楽しかった時期だ。

塾の同じクラスに綺麗な顔をした秀才男子がいて、「どうやらnyaのことが好きらしいで」という噂が流れたことがあった。
クラスで一番の眉目秀麗の男子が私を…?ケミカルウォッシュにしめ縄三つ編み眼鏡の私を…?
にわかには信じ難かったが、なにぶん思春期真っ只中の多感な年頃なので急激に意識しまくり、彼をチラチラ見ては「なんつう綺麗な顔しとんねん…」と思いながらすっかりミイラ取りがミイラになり好きになってしまったのだが、一言も話し掛けられないまま中学校を卒業してしまった。

彼は関西随一の進学校へ、私はそこそこの中堅校へ進学し、離れ離れになった。もうきっと出会うことは無く、何の進展も無いまま私の淡い初恋は終わったのだ。

そしたらある日、陽キャ達が「塾の同窓会やろうぜ」と言い出したのだ。お前ら…たまにはええこと言うやんけ!(輝く笑顔)

高校生になって少し垢抜けたつもりだった私は、けろけろけろっぴのリュックとケミカルウォッシュを脱ぎ捨て親が買ってくれたD&Gのスカートを履く女になっていた(ただし相変わらず見た目は陰キャのブスのままだった)

同窓会で再会した彼はより一層美貌に磨きがかかっており、どうやら高校では剣道をやっているらしい。偏差値70超えで剣道やってるブルベ冬の美形is何…そんな生き物おるん…目の前におるわ…はーかっこよ…

舞い上がった私はまたロクに会話も出来ず、一言二言ぎこちない挨拶をかわしただけで解散した。まるで駄目である。
そこからはもう寝ても覚めても彼のことしか考えられない日々が続き勉強は当然手に付かず、国語は学年2位なのに数学は9点という結果を叩き出して職員室に呼び出されるなどしていた。

ここら辺はあまり記憶に無いが、同じ塾に通っていた男の子に「告白したいねん…」と相談したように覚えている。彼の家の電話番号を教えてもらった。

そう、当時はスマホはおろかPHSや携帯電話なんてものはなく、連絡を取ろうとすると家にかけるしかなかったのだ。
当然家に電話をかけると親御さんが出る。確かお母さんが出て、名乗った時に値踏みされるような気まずい沈黙を感じてドキドキした記憶がある。凄く怖かった。

私は好きが高じて夜な夜な彼のマンションの前を自転車でうろつくという不審者ムーブをかましており、自宅の場所は既に押さえていた。カーテンから滲む光を見て「あそこに彼が…」と涙を滲ませたりもしていた。

迎えた告白の日。マンションの前の公園に来てもらい、「あの…好きなので良かったら付き合ってください…」と震える声で告白する。
人生初めての恋、初めての告白である。まさか奥手な自分がここまで思い詰めてこんなにアグレッシブに行動できるなんて思ってもみなかった。

結果としては、あっさりOKを貰えた。まぁそうでしょう、先に好きやったんは君の方やからなガハハ!
というとそんな余裕はまるでなく、あくまで噂は噂であり真偽は分からぬままだったのだ。2%の自信と98%の不安で私はガチガチに緊張しており、じゃあこれからよろしくねと解散した後も酔っぱらいのように足がガクガクになりながら自転車を漕いで家に帰った。

いよいよ初めての男女交際がスタートしたはいいものの、前述の通りとにかく連絡手段がない。当時ポケベルを親に買ってもらったばかりだったが、彼は持っていなかった。そのため何をするにも家に電話しないといけないが、そんなもんかけづらいことこの上ない。

結局カップルらしいことをしようと夏祭りに行ったり映画を観に行ったりしたが、そこから数ヶ月音信不通になってしまった。

そしてクリスマス。私は彼の家のすぐ近くのシャトレーゼでバイトをしていた。店内の有線では狂ったようにSPEEDが流れており、何故かそれが今でも耳から離れない。

何とか連絡がついて、バイトが終わってからいつもの公園で落ち合う。
「久しぶりだねクリスマスだねぇ」などと和やかに話をしていたら彼が突然理性を放棄して襲いかかってきたので、「えっこわ無理!すみません帰ります!!」と怯えた私は彼を拒否して自転車で走り去ってしまった。最悪である。

今思えばそりゃ思春期の男子なんだからアレコレしたくて当然だろうが、私はりぼんなかよしちゃおを読んで育ち、少コミはエッチだから敵!という乙女だったのでとにかく何か知らんが怖かったのだ。

そこからまた音信不通になってしまい、彼のことを気にしながらも気まずくて連絡が取れないまま数ヶ月経ち、元塾生の男の子に「彼、どうしてるかな」とたずねたところ「nyaと多分別れた、よく分からないけど」と言っていたそうだ。
そりゃそうだな、あんな拒否の仕方をしてそのまま音信不通やったらそうなるわな。

大人になった私なら「あんなもん、外でもどこでも気軽に一発かましといたら良かったんやガハハ!」と言うところだが、16歳の乙女には無理な話だよ。
何とも歯切れの悪い幕引きだが、無力な私はもう何も出来ず、かくして初恋は呆気なく終わった。

その後、高2の時に隣のクラスの男子に惚れて勇気を振り絞って告白したが、散々返事を待たせたあげく「俺広末涼子がタイプだから…」と振られた。おのれ伊藤め~~~!!!(名前を出すな)

そこですっかり恋愛に希望が持てなくなった私は二次元の世界に傾倒していき完全なる喪女になり、そのまま大学生になる。

何だかんだ言いながらずっと初恋の彼のことは頭のかなりのスペースを占めており、(あの日こうしていれば)(あの時一発かましていれば)と思い続けていた。
でもまぁ、そこで終わると思うやん。終わらんのよ何と。

大学が決まった私は梅田駅の構内のコンビニ(今は亡きアズナス)で短期バイトを始めた。
そこでは酔っぱらいのおっちゃんに「俺の息子とよぉ結婚してくれんかぁぁ」と絡まれたり若いお客さんにナンパされたりとなかなか賑やかな出来事もあり、更に喪女なのにバイトの先輩からデートに誘われたりもした。

先輩は音楽が趣味でいつもゆるっとチルい雰囲気を漂わせており、かといって過剰にチャラついてもおらず、非常に落ち着いた年上のお兄さんだった。

明らかに好意を示してくれているのは鈍感な私でも分かり、異性として好きになれるかどうかは分からないけどとりあえず付き合ってみるのも良いのかもしれないなぁと思っていた。

そんな折、また元塾生の陽キャ男子が同窓会の話を持ちかけてきたのだ。君ら同窓会好きやな!?でもありがとうございます~~~!!!(満開の笑顔)

彼が来てくれるのかどうか分からず、方々に手を回して何とか来てもらえるように根回しした。そしたら、ほんまに来てくれた。

何と彼は京大生になっていた。聞けば、東大と京大どちちも受かったらしい。漫画か?
何故京大を選んだのか?と訊いたら「家から近かったから」と流川楓みたいなセリフを吐いてきた。マジで漫画じゃん…

楓はまたえげつないほどカッコよくなっており、剣道の次は空手をやっているらしい。文武両道で眉目秀麗のブルベ冬男、少女漫画でもなかなか見んぞ…?

高校を卒業する頃には流石に携帯電話を持っていたので、連絡先を交換した。なんとまた時を超えて繋がることが出来たのだ。
嬉しくて嬉しくて、本当に申し訳ないがバイト先のお兄さんのことは完全に忘れてしまった。というか、実は告白されたが断ってしまった。

それから楓の下宿する京都まで一度だけ会いに行った。もう付き合ってはいないが、丸一日最高に楽しかった。
私の家は門限が厳しかったため帰りの時間もシビアで、そろそろ帰らなあかんなぁ…と時計を気にしていたら、楓がいきなり「この後…ホテルでも行く?」とか言い出した。

いやいやいや楓さん何ゆうてますのん、私ら付き合ってないじゃないですかまだ。キスすっ飛ばしていきなりホテルでっか?いやキスくらいはさっきやりましたけど?(やったんかい)
ホテル?そりゃちょっと無茶ですぜ???

まだまだ純粋だった私はテンパりすぎて、「あ、ごめ、門限、あの門限が」とうろたえてそのまま逃げるように帰ってしまった。もう。本当に。最悪である。
何度も言うが、大人になった私なら「門限なんて破るためにあるねん、一発かましたれええ思い出になるでガハハ!」と言うところだが、当時はもう駄目だった…だってこえぇもん…服とか脱ぐんでしょ…?無理やて…

結局相手にとっては煮え切らない寸止めを何度も食らってもうどうでも良くなったんだろう。それきりメールをしても返ってこなくなった。
そもそも最初から私のことはそこまで好きでもなかったように思う。舞い上がっていたのは恐らく私だけだったのだ。

折悪しく、大学入学と同時に私がちょっとした病気になって半年ほど療養することになり、顔面に症状が現れる病気だったため尚更会えなくなり、ここで完全に繋がりが絶たれた。

私は重たい女なので楓のことをずっと引きずっており、他の人と付き合いながらもなんと足掛け7年、不毛な片思いを続けた。彼女がいるという話を耳にしてやっと諦めがついたが、それまでずっと苦しかった。だから諦めがついた時は初恋の呪縛からやっと解放されたような気持ちだった。

10年以上前になるが、何となく名前を検索してみたら東大と京大の院両方に籍を置き私には及びもつかない高度な研究をしている偉い人になっていた。凄いな私、こんな人とちょっとだけ付き合ってたのか。

初恋は全然甘くなく、とびきり粘着質で心にまとわりつくようなしつこさで私の心を長く苛んだ。若く純粋で、恋愛のお作法なんてものは知らなかったし、今思えば幼すぎる振舞いに反省点しかない。

人を好きになることって、楽しいだけじゃない。しんどいし見苦しいし滑稽だ。
多くの学びを得て、私は次に進んでいく。めちゃくちゃ明後日の方向に。

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